2023.02.20
【連載】専門家がずばり解説!健康情報Q&A第28回 太りにくい身体づくりについてのアドバイスVer.2
「気になるけど結局どうなの?」という健康に関するソボクな疑問を、筑波大学体育系 准教授の中田由夫先生に答えてもらう連載の第28回目!
<これまでの質問>
☆第3回「糖質コントロールとカロリーコントロール、結局どっちが痩せるの?」
☆第4回「有酸素運動は20分以上続けないと痩せないってホント?」
☆第7回「“座り過ぎ”の健康リスクを運動で帳消しにできますか?」
☆第8回「“床に座る vs 椅子に座る”どっちが体に悪い?」
☆第10回 外出自粛のなか、運動するにはどうしたら良いですか?
☆第12回 BMIは標準値なのにお腹がぽっこり…解消するには?
☆第15回 35歳を過ぎ痩せにくく…健康に食べながら痩せられる方法は?
☆第16回 「お酒を飲む」or「お酒を我慢してストレスをためる」体に悪いのはどっち?
☆第17回 “食前” vs. “食後” 運動するにはどっちが効率的?
☆第18回 一定の体重から1年近く減りません。どうしたらよい?
☆第19回 体脂肪率が減りません。どうしたら順調に減らしていけますか?
☆第20回 糖質制限中、カロリーオーバーした場合、 やせる? 太る?
☆第21回 1日の内、夕食にエネルギー摂取量が偏るのはあり?
☆第23回 脂質を控えているのに 体脂肪が減らないのはなぜ?
☆第25回 筋肉をつけて体脂肪を減らす効果的な筋トレ教えて!?
第26回 食事制限と運動で一日のエネルギー収支がマイナスでも体重が減りません⁈
今回は、ユーザーさんからいただいた質問で前回、第27回に引き続き、太りにくい身体づくりについて、さらに詳しいアドバイスをお伺いしました。
この連載について――――
「専門家がずばり解説!健康情報Q&A」では、健康に関するソボクな疑問を、食事と運動が健康に及ぼす影響について研究されている、筑波大学体育系 准教授の中田由夫先生に解説していただきます。ダイエットや運動など幅広く質問していくので、楽しみにしていてください☆
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中田先生の回答
ジョギングでも筋トレでも、基礎代謝を高めることは、簡単ではありません。
前回、第27回で「太りにくい身体にするためには、体力を高めることが大切である」ことをお伝えしました。一方で、「ジョギングよりも筋トレして基礎代謝を高めれば太りにくくなるんじゃない?」というご意見について解説します。
確かによく聞く話として、「たんぱく質を摂取しながら筋トレすれば、筋肉量が増えて、基礎代謝が上がる」という話があります。間違いではないのですが、ジョギングでも筋トレでも、皆さんが思っているほど、筋肉量を増やすことや基礎代謝を高めることは簡単ではありません。
基礎代謝とは、肺で呼吸をし、心臓が全身に血液を送り、脳が神経を通じて全身に指令を送り、体温を維持し、排泄するなど、日常生活を営むために必要な最小限のエネルギー量を意味します。一般的には、1日の総エネルギー消費量の約50~80%を基礎代謝が占めます。
表 体重70 kgの男性の身体組成と安静時の臓器別エネルギー消費量
表では、体重70 kgの男性を想定した場合の、安静時における臓器別のエネルギー消費量を示しています。安静時に筋肉で消費されるエネルギー量は、基礎代謝量の22%です。一方、肝臓や脳、心臓、腎臓といった臓器で基礎代謝量の60%近くが消費されています。
28 kgもの筋肉(骨格筋)と僅か1.8 kg の肝臓で消費されるエネルギー量が、約360 kcalと同程度です。骨格筋1 kg あたりにすると、エネルギー消費量は僅か13 kcalです。筋トレで筋肉量を1 kg増やすのは大変なことですが、仮にそれが実現できたとしても、それによって増える基礎代謝量は13 kcalに過ぎないのです。
筋トレによって筋肉量が増え基礎代謝が増えたとしても、それは僅かな量であり、そのおかげでたくさん食べても太らない、といった効果は期待しにくい、ということが理解いただけたでしょうか。
ただし、筋トレそのものによってもエネルギーが消費されますし、筋肉量がそれほど増えなくても筋力は高まります。これは、神経系が改善することで、より効率よく筋力を発揮できるようになるからです。そして、このような筋力を維持するための運動そのものに、健康増進効果があるので、太りにくい身体になったとは言えなくても、健康に良いことに間違いはありません。
著者:中田由夫(筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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