2025.03.09
「頑張ってるのに」ダイエット失敗する人の超盲点|医師が推奨「減量」がラクになる"肝臓ケア"3選
ダイエットは、脂肪肝を撃退すればグッと成功しやすくなります(写真:takuuu/PIXTA)
近年、肝臓の健康に注目が集まっています。医学が進歩して、肝臓こそ健康長寿を実現するカギになる臓器だということがわかってきたのです。
たとえば、「脂肪肝」は、これまで「誰でもかかるたいしたことない病気」のように扱われてきましたが、じつは「動脈硬化や糖尿病などを招く重大な病気」であることが判明しています。脂肪肝を甘く見て放っていたら、老化や病気が加速して、先々の人生を狂わせることにもなりかねません。
ただ、肝臓は、ポイントを押さえたケアを行えば復活する臓器です。肥満やアルコールなどの問題で長年健診の肝機能の数値が悪かった人も、やるべきことをやりさえすれば短期間で回復させることができます。
では、どんなケアを行えばいいのか。肝臓専門医として46年間、患者を診察し続けてきた栗原毅医師は、新著『肝臓大復活』の中で、すぐに役立つ肝臓ケアのノウハウを惜しみなく紹介しています。
以下では、その栗原医師が「ダイエットにおける脂肪肝治療の重要性」について解説します。
「ダイエット失敗」の原因は脂肪肝!
「そろそろ、冬の間にたっぷりついた脂肪を落とさなきゃ」――日差しがやわらかくなって春の訪れが近づいてくると、「ダイエット心」が芽を出す人も多いのではないでしょうか。
ただ、これまで何度もダイエットにチャレンジしては、挫折をしてきた方もいらっしゃるかもしれません。
いったい、これまでの自分のダイエットの何が悪かったのか――食事が間違っていたのか、運動が足りないせいなのか、意志が弱いせいなのか。
いいえ、もしかしたら、いちばんの原因は「脂肪肝を放っていたせい」なのかもしれません。じつは、「ダイエット失敗」の背景に脂肪肝が横たわっているケースは非常に多いのです。
では、脂肪肝があると、どうしてダイエット失敗につながりやすくなるのでしょう。
やせるかやせないかに代謝が大きく影響していることをご存じの方も多いと思います。肝臓に脂肪がたまっていると、この代謝機能が大きく落ち込んでしまうのです。
もともと、肝臓は人間の代謝機能において中心的役割を果たしているのですが、肝臓に脂肪が蓄積すると、栄養素を分解したり合成したりする力が落ち、エネルギーを生み出す代謝力がガクンと低下してしまいます。すると、脂肪や糖などを燃やして消費する勢いも落ちて、結果、「エネルギーを消費しにくい、やせにくい体」になってしまうのです。
しかも、脂肪肝が進んで肝細胞が破壊されると、肝細胞内にたまっていた脂肪が血液中にあふれ出して、体のあちこちに流出してしまうようになります。この状態が続くと、皮下脂肪や内臓脂肪が着実に増えて、結果、肥満がいっそう進んでしまうということにもなります。
つまり、脂肪肝があると「やせにくく、太りやすい体」になってしまうわけで、脂肪肝という原因を解消しない限り、ダイエットをがんばっていても、やせるのが難しくなってしまうのです。
脂肪肝を治して「失敗の歴史」に終止符を
このため、私はダイエットを成功させるには、まず肝臓の脂肪を減らして脂肪肝を改善するのがマストだと考えています。
肝臓に脂肪がたくさん蓄積している状態では、内臓脂肪も皮下脂肪もそう簡単には落ちてくれません。脂肪肝を治さずして、ダイエットの成功はありえないと言ってもいいでしょう。
たぶん、このことを知らないまま減量しようとして、いくらがんばっても効果が現われず、「なかなか結果が出ないストレス」に負けて挫折してしまった人は、これまで数えきれないほどいるのではないかと思います。
しかし、いい加減、その「失敗の歴史」に終止符を打ちましょう。ダイエットは、脂肪肝を撃退すればグッと成功しやすくなります。肝臓から脂肪を追い出すと、代謝も上がり、エネルギーも消費しやすくなって、「やせやすく、太りにくい体」に戻すことが可能なのです。
なお、脂肪肝を治してダイエットを成功へ導いていくには、ひとつ重要なポイントがあります。
それは、「カロリーではなく、糖質量を基準にしてやせる」という食の意識を徹底することです。
そもそも、カロリーの高い・低いで食品を選ぼうとするのは無意味です。カロリーの高い食品には、肉、卵、乳製品などがありますが、これらはたんぱく質や脂質が豊富であり、カロリーを抑えようとして摂取を減らしてしまうと、体に必要な栄養素まで不足する事態になりかねません。
やせるために控えるべきは「カロリー」ではなく「糖質」です。ごはんやパン、麺類、甘い飲み物、果物、スナック菓子などの糖質を多く摂っていると、血糖値が急上昇します。
すると、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値が下げられるわけですが、このインスリンには体内の余分な糖質を中性脂肪に変えてため込もうとする働きがあるのです。
すなわち、体に脂肪を蓄えて太ってしまうのは、血糖値を急上昇させるような糖質の多い食べ物を摂りすぎているのが原因。だから、ダイエットで脂肪を落としたいのなら、(カロリーの高い・低いではなく)糖質量が多いか少ないかを基準にメニューを選び、なるべく血糖値が急上昇しないようにコントロールしていくのがセオリーとなるわけです。
「そば」を食べ続けていると逆に太る
「カロリー」と「糖質」の比較で、よく例に挙げられるのは「ステーキ」と「そば」です。
高カロリーのステーキ(単品)を食べても血糖値に変化がないのに対し、低カロリーのそばを食べると血糖値が急激に上昇します。ステーキはほとんど糖質が含まれないのに対し、そばは糖質が多いため、てきめんに血糖値が上がってインスリンが分泌されるのです。ですから、やせようと思って低カロリーのそばを食べ続けていたりすると、逆に脂肪を蓄えて太ってしまうわけです。
要するに、ダイエットの際、食品のカロリー量を細かく気にしたり、いちいちカロリー計算をしたりする必要はないということ。みなさんも、やせたいならば、いますぐカロリー計算をやめて、その代わりに糖質摂取量を気にかけるようにしてください。
ところで、「脂肪肝を治せばスムーズにやせられる」と言っても、いったいどうやって治せばいいのでしょう。医療機関を受診して、長期間にわたって特別な治療を受けなくてはならないのでしょうか。
いや、そんなことをする必要はありません。
じつは、脂肪肝という病気は、ポイントを押さえたケアを行えば、驚くほど簡単に治すことができるのです。医療機関を頼らずともセルフケアで十分回復しますし、かなり短期間で治すことが可能です。症状の程度にもよりますが、軽い脂肪肝なら数週間、ちょっと重い状態でも数カ月もあれば、脂肪を追い出して、肝機能の数値を問題ないレベルに回復させることができるでしょう。
もともと、肝臓は非常に回復力に優れた臓器です。ポイントを押さえたケアを習慣にしてしまえば、あとは自動的に修復すると言ってもいいくらいの驚異的な回復力を発揮するのです。
簡単にできる肝臓ケア3選
では肝臓のために何をすればいいのでしょうか?誰でもできる簡単なケアの仕方を3つ紹介します。
1.「甘い飲み物をやめる」
甘い飲み物に含まれる「果糖ブドウ糖液糖」は、脂肪肝の進行を促進し、肝臓へのダメージを大きくする原因になります。
特に、ジュースやスポーツドリンクのような液体の糖分は、果物を食べるよりもはるかに速く体内に吸収され、血糖値を急激に上昇させるため、脂肪の蓄積が加速します。
その結果、脂肪肝や肥満、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まります。健康な肝臓を維持するためには、日常的に甘い飲み物を控え、糖質を含まない飲み物を選ぶことが重要です。
2.「ごはんを1~2割減らす」
糖質の摂取量を適度に抑えることは、血糖値の急上昇を防ぎ、脂肪の蓄積を抑えるのに役立ちます。特に、主食であるごはんやパンを1~2割減らすだけで、インスリンの過剰分泌を防ぎ、余分なブドウ糖が脂肪に変わるのを抑制できます。糖質をゼロにするのではなく、適度に減らすことがポイントです。
3.「緑茶や高カカオチョコを摂る」
緑茶に含まれるカテキンは、脂肪の燃焼を促進し、血糖値の急上昇を抑える効果があります。
また、抗酸化作用によって肝臓の負担を軽減し、脂肪肝や肥満のリスクを低減します。
さらに、高カカオチョコレート(カカオ70%以上)には、インスリン抵抗性を改善するカカオポリフェノールが含まれており、脂肪肝の予防・改善に効果的です。
1日3~5回に分けて、1回5g程度を食べることで、血糖値の安定にも貢献します。
ダイエットと健康への近道を切り開こう
脂肪肝という問題を取り除けば、ダイエットもスムーズに進むようになります。もともと脂肪肝のセルフケアのハウツーは、効率よくやせたい人にとってうってつけのプログラム。
脂肪肝が完治するだけでなく、目指していた体重への減量を達成して、ふたつの目標を同時にかなえることができる人も少なくありません。
さらに、脂肪肝を撃退すると、肥満だけでなく、糖尿病や動脈硬化、動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞)、認知症など、非常に多くの生活習慣病の「芽を摘む」ことにもつながります。
私は、脂肪肝を治すことは、肝機能回復、ダイエット成功だけでなく、活力のある健康な体を取り戻すいちばんの近道だと考えています。
ぜひみなさんも、この春、脂肪肝を治し、ダイエットや健康への近道を切り開いて、新しいスタートを切ってみてはいかがでしょうか。
『肝臓大復活』
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提供元:「頑張ってるのに」ダイエット失敗する人の超盲点|東洋経済オンライン