2021.07.15
【連載】専門家がずばり解説!健康情報Q&A 第7回 “座り過ぎ”の健康リスクを運動で帳消しにできますか?
「気になるけど結局どうなの?」という健康に関するソボクな疑問を、筑波大学体育系 准教授の中田由夫先生に答えてもらう連載の第7回目!
<これまでの質問>
☆第3回「糖質コントロールとカロリーコントロール、結局どっちが痩せるの?」
☆第4回「有酸素運動は20分以上続けないと痩せないってホント?」
今回は、座り過ぎの健康リスクについてお伺いしました。
この連載について――――
「専門家がずばり解説!健康情報Q&A」では、健康に関するソボクな疑問を、食事と運動が健康に及ぼす影響について研究されている、筑波大学体育系 准教授の中田由夫先生に解説していただきます。ダイエットや運動など幅広く質問していくので、楽しみにしていてください☆
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中田先生の回答
座っている時間が長いと、健康に対して悪影響を及ぼすことが、最近かなり認知されるようになってきました。2020年に発表された世界保健機関(WHO)の新しいガイドライン[1]でも、「座りっぱなしの時間を減らそう!」というメッセージを出していますし、カナダが同年に発表したガイドライン[2]では、一歩踏み込んで、座っている時間を1日8時間以内にすることを推奨しています。
さて、この座っている時間が長い場合、運動することでその悪影響を帳消しにできるかどうか?という質問です。
正確なメカニズムはまだわかっていませんが、運動していても、座っている時間が長いことの悪影響は“帳消しにできない”と考えられています。
一つ、代表的な研究[3]を紹介します。下図は、活動的に過ごす時間が週7時間以上ある群から、ほとんど活動的に過ごす時間がない群まで、5つの群に分けたうえで、各群のテレビ視聴時間が1日1時間未満の群から1日7時間以上の群まで、5つの群に分けて、それぞれの将来の死亡率を比較しています。
この図からわかることは、活動的に過ごす時間が短いほど死亡率は高まり、テレビ視聴時間が長いほど(座っている時間が長いほど)死亡率が高まるということです。また、活動的に過ごす時間が長い群であっても、テレビ視聴時間が長いと死亡率は高まっています。
このような研究から、運動していてもしていなくても、座っている時間を短くすることは、将来の健康のために重要なことと考えられています。
座り過ぎの健康リスクについては、以前の連載記事でも解説していますので、参考にしてください。
☆【連載】手軽にできる運動のススメ 第5回 日常のちょっとした活動で健康に
文献
[1]WHO. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. ※外部サイトに遷移します
[2]CSEP. Canadian 24-hour movement guidelines for adults ages 18-64 years. ※外部サイトに遷移します
[3]Matthews CE et al.: Am J Clin Nutr 2012; 95(2): 437-45. ※外部サイトに遷移します
☆中田先生の連載
【連載】手軽にできる運動のススメ(全7回)
【第1回】1日何歩あるきますか?たった「+10分」でも効果的!
【連載】専門家が教える 絶対役立つダイエット基本のき(全12回)
【第5回】1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
著者:中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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