2020.12.14
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき 第11回 リバウンドを予防するコツ
前回の記事、連載第10回「停滞期を乗り切るコツ<運動編:その2>」では、“停滞期”を乗り越えるために、運動強度を高めることの重要性について、お話ししました。この連載記事もそろそろ終わりに近づいてきましたので、今回は、今後のリバウンドを予防するコツについて、お話しします。
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき
第5回 1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
リバウンドはなぜ起きる?
減量後のリバウンドはなぜ起きるのでしょうか?いくつかの要因が考えられますので、順に説明していきます。まず、下の図を見てください。こちらは、連載第1回で紹介した、わたしが過去に報告した研究論文の結果です[1]。研究参加者の、減量を開始してから6、18、30ヵ月後の体重変化を示しています。
Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387より作成
6ヵ月間、減量するにあたり、1回の講義に加えて教材を提供した群(青色)と、1回の講義と教材提供に加えて月1回程度の集団型減量支援を提供した群(オレンジ色)を比較しています。両群の差は、減量開始時から6ヵ月後は3.0 kgあったものの、18ヵ月後には半減し(1.5 kg)、30ヵ月後には完全に無くなりました(0.0 kg)。両群とも、減量開始時と比較して30ヵ月後に3.3 kg少ない体重を維持していましたので、完全にリバウンドしたわけではありません。しかし、集団型減量支援を受けた群(オレンジ色)の方が、大きくリバウンドする結果になりました。
連載第1回でもお伝えしたように、集団型減量支援を受けた群でリバウンドが大きかったのは、6ヵ月間の集団型減量支援のなかで、指導者と参加者の間に信頼関係が生まれたことが理由として考えられます。集団型減量支援が終わると、「先生がいないから継続できない」という感覚が生まれ、リバウンドが大きくなったと考えられます。一方、1回の講義と教材のみで、自己管理型で減量に取り組んだ群では、「先生のおかげ」という感覚は生まれにくいので、追跡期間中のリバウンドが小さくなったと考えられます。
この連載を通じて、減量に成功した読者のみなさんは、“自分の力”で減量を達成できたわけです。やせることができたのであれば、リバウンドしないように気をつけることもできるはずですよね!
減量後のリバウンドと食事量
次に、上記の研究で、リバウンドした人とそうでない人の食事量を比較した結果を示します。ここでは、参加者を減量開始時から30ヵ月間の体重減少率の順番に並べて、4つのグループに分けました。一番左は最もリバウンドした群、一番右は最もリバウンドしなかった群を表しています。縦軸は減量開始前と比べた食事によるエネルギー摂取量の変化を示しています。
Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387.より作成
食事によるエネルギー摂取量は、リバウンドした群であっても、減量開始前よりも200 kcal以上少ない状態を維持していることがわかります。つまり、食事量は完全に元に戻っているわけではなく、そこそこ元の食事よりも少なく気を付けているにもかかわらず、リバウンドしてしまったことになります。
減量開始前より食事量が少ないにもかかわらず、リバウンドすることは、ちょっと意外に思われるかもしれません。このことについて、直接的なデータをお示しすることはできませんが、ダイエットを通じて、少ないエネルギー摂取量で生活できるようになる(エネルギー効率が良くなる)身体の適応が生じた可能性があります。そうすると、減量開始前までは戻っていなくても、ちょっとした食事量の増加が、体重増加につながることになってしまうのです。
一方で、リバウンドしなかった群の食事量は減量開始前より約350 kcal少ない状態でした。6ヵ月間の減量期間中は、集団支援を受けた群では平均で600 kcal少ない状態でしたので、それと比べれば食事量は増えていることになります。それにもかかわらず、リバウンドしていないということは、食事量の差だけでは、リバウンドの有無を説明できないことになります。
減量後のリバウンドと身体活動量
次に、リバウンドした人とそうでない人の身体活動量を比較した結果を示します。縦軸は減量開始前と比べた歩数の変化を示しています。リバウンドした群では、30ヵ月間の歩数変化量が0に近く、減量期間中に増やした歩数が、元の状態に戻っていることがわかります。一方で、リバウンドしなかった群では減量開始前よりも2500歩以上増えていて、体を動かす習慣がしっかりと身についていることがわかります。
減量期間中の食事をずっと続けることは大変です。リバウンドしなかった群では、食事量が少し増えた分、体をしっかりと動かして、エネルギー消費量を高めることで、リバウンドを予防していると考えられます。
Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387.より作成
今回のまとめ
減量後のリバウンドを予防することは、非常に難しいことです。減量達成後、ついつい以前の“甘い蜜”を思い出してしまうのかもしれません。しかしながら、食事が元に戻ってしまっては、体重も元に戻るのは当たり前です。新しい活動的な生活習慣、流行りのNew Normalを継続することが重要なのです。
【文献】
[1]Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387.
https://www.karger.com/Article/PDF/369913
(2020年11月20日閲覧)
☆痩せたい方は必見!これまでのおさらい↓
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【第5回】1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
【連載】手軽にできる運動のススメ(全7回)
【第1回】1日何歩あるきますか?たった「+10分」でも効果的!
著者:中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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