2020.02.28
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき 第1回 「正しいダイエット」の減量効果
2月も終盤になり、正月太りが落ち着いた頃でしょうか?「もう少し体重を落としたいなぁ」と思っている方はかなり多いはず。今回からは、ダイエットの基本を身に付けるために、“正しいダイエット”をテーマにした記事をお届けします。
正しく痩せるためには正しい知識が必要
初回となる今回は、わたしが過去に報告した研究論文の内容を紹介します[1]。この研究は、茨城県で実施された減量介入研究で、40~64歳の肥満男女188人を対象にしました。この研究では、以下の3つのグループを設定し、研究対象者をそれぞれのグループにランダムに分けて、6ヵ月後の体重の変化を比較しました。
(1)1回の講義を提供する群(対照群)
(2)1回の講義に加えて、教材(テキスト、ノート、歩数計)を提供する群(弱介入群)
(3)1回の講義と教材提供に加えて、月1回程度の集団型減量支援を提供する群(強介入群)
研究参加者を3つのグループにランダムに分けて比較するため、ランダム化比較試験と呼ばれます。この手法は、因果関係に言及できる最も優れた研究手法だと言われています。
図1に6ヵ月間の介入結果を示します。対照群(講義のみ)で2.9 kg、弱介入群(講義+教材)で4.7 kg、強介入群(講義+教材+集団支援)で7.7 kg、体重が減少しました。このことから、講義に教材を提供する効果が約1.8 kg、さらに集団型減量支援を加える効果が約3 kgあることが証明されました。
Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2011;4(3):222-228.より作成
手厚く指導すればするほど、減量効果が高まるという、考えてみれば当たり前の結果ですが、ランダム化比較試験という検証レベルの高い方法で実施したことに意義があると思います。
リバウンドしにくいダイエットのポイントは“自己管理”
この研究には続きがあって、その後2年間、リバウンド調査を実施しています[2]。1回の講義しか聞けなかった対照群には、倫理的配慮として、6ヵ月間の介入期間終了後に、サービスで減量支援を実施したため、弱介入群(講義+教材)と強介入群(講義+教材+集団支援)を調査対象としています。
図2に30ヵ月間の観察結果を示します。6ヵ月目で3.0 kgあった強介入群の有効性は、18ヵ月目で半減し(1.5 kg)、30ヵ月目で完全に消失しました(0.0 kg)。両群とも、減量開始時と比較して3.3 kg少ない体重を維持していましたので、完全にリバウンドしたわけではありませんが、集団型減量支援を受けた強介入群の方が、大きくリバウンドする結果になりました。
Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387.より作成
強介入群でリバウンドが大きかったのは、6ヵ月間の集団型減量支援の中で、指導者と参加者の間に信頼関係が生まれたことが理由として考えられます。この期間において、参加者は、「先生のおかげで痩せられた」という感覚が生まれやすくなります。逆に、その後の追跡期間では、「先生がいないから継続できない」という感覚が生まれ、リバウンドが大きくなったと考えられます。
一方、弱介入群はもともと自己管理型で減量に取り組んでいますので、「先生のおかげ」という感覚は生まれにくいです。その分、追跡期間中のリバウンドが小さくなったと考えられます。
というわけで、正しい知識に基づき、しっかり取り組めば、直接指導を受けなくても、5 kg程度のダイエットには成功し、その後も大きなリバウンドは生じません。では、講義で何を話し、教材をどのように活用し、ダイエットに取り組んだのか、その実際の内容について、次回からさらに詳しく紹介していきます。
【文献】
[1]Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2011;4(3):222-228.
https://www.karger.com/Article/Pdf/329619 (2020年2月7日閲覧)
[2]Nakata Y. et al.:Obesity Facts. 2014;7(6):376-387.
https://www.karger.com/Article/PDF/369913 (2020年2月7日閲覧)
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著者:中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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