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2024.12.12

ふだんの「歩く」を関節痛対策に変える2つの方法|「痛くない、よく動く、長持ちする」関節を目指す


関節の痛みを抑えるために大切なのは「毎日の習慣」だという(写真:buritora/PIXTA)

関節の痛みを抑えるために大切なのは「毎日の習慣」だという(写真:buritora/PIXTA)

関節の痛みを軽減するためには筋力の向上が欠かせませんが、日本整形外科学会認定スポーツ医である歌島大輔氏によれば、その鍵を握るのは「毎日の習慣」だそうです。
そんな習慣の中でできることの1つとして歌島氏が挙げる「歩き方の矯正」について、同氏の著書『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

"ながら歩き"が最高のソリューションになる

家の中でも外でも、どうせ歩くなら、その機会を利用して関節の痛みを治しましょう。そうすれば、歩きながら問題の解決ができます。

アスリートと違って、一般の人の筋肉はすぐには変わりません。少しずつゆっくり変わっていきます。だからこそ「毎日の習慣」が鍵を握るのです。

毎日の習慣の中でできることの1つが「歩き方の矯正」です。体のあらゆる関節に働きかけようとすると、最終的には「歩き方」に集約できるでしょう。

「関節に負担がかかる歩き方」は避けないといけません。関節に負担がかかる歩き方の典型は、「姿勢が悪い」の一言で表せます。猫背になっても、反ってもいけません。上から吊り下げられている感じの姿勢で歩けば、自然に踵から着地してリズムよく歩けます。

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

それに加えて、「痛くない、よく動く、長持ちする」関節になるように、筋肉に刺激を加えましょう。その刺激に対応して、関節が最適な状態になっていきます。

家の近くのスーパーまで行くとか、犬の散歩とか、ふだん歩いているときの歩き方にちょっとした「プラスα」をするだけです。とても簡単なものばかりですから、やらないのはもったいない!

絶対にやってほしい"ながら歩き"は、この2つ

あなたの痛む場所がどこであれ、必ずやってほしいのは、

・おなか凹ませ歩き
・腰下げ歩き

関節の痛みを抑えるには、一生筋肉が衰えないように気をつけておく必要があります。そのために、この2つの歩き方を一生の習慣にしてください。この2つを続けていれば、誰でも体幹のインナーマッスルと下半身のアウターマッスルが鍛えられて、体のバランス能力が高まり、健康寿命を延ばすことにもなります。自信がなければ、最初は家で練習してもいいでしょう。やり方がわかったら、外に出て、実践してください。

では、必ずやってほしい2つの"ながら歩き"を紹介しましょう。

【ひざ関節・股関節に効く「腰下げ歩き」】

「ランジ」または「フロントランジ」という、下半身に効果的な筋トレがあります。①真っすぐ立つ、②片足を大きく一歩前に出して、腰を落とす、③最初の位置に戻る、という、単純ですがけっこうハードな動きです。本来のランジは下半身にとても効果的な運動ですが、かなりハードな動きなので、運動不足の方には大変です。
ですから、弱い負荷でランジに似た効果を得られる歩き方を考案しました。それが「腰下げ歩き」です。

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

やり方は簡単。軽くひざを曲げて、腰を落として歩くだけです。ひざを全然伸ばさない状態で歩きます。どのくらい腰を下げるか(5〜15センチ)で、運動強度を調節できます。あなたにちょうどいい負荷を探りながら歩いてください。

「外で腰を落とすと人目を引きそうで恥ずかしい」と思う方がいるかもしれません。ですが、5センチぐらいでは周囲にはわからないものです。イラストではわかりやすさを重視して少し大げさに描いています。実際には、5センチ下げたとき、他人からはほとんどわからないでしょう。

さすがに15センチも落とすとわかってしまうので、人目がある所では5センチ、そうでない所に来たら15センチ落とす、などと切り替えるのもいいでしょう。

1日の中で、トータルで10分歩けばいいのです。細切れでもいいのですから、飽きたら1回やめて、少したったらまたやる、という具合でかまいません。

ひざを曲げて体重を支え続ければ、つらい思いをせずに階段の上りに近い負荷をかけることができます。軽く腰を落とすだけでも「ゆっくり階段上り」をしたのと近い負荷がかかり、深く落とせば「速い階段上り」をしたのと似た効果が得られます。

「腰下げ歩き」が、ひざの痛みに効く理由

「大腿四頭筋」は太ももの前面にあって、主にひざ関節を伸ばす4つの筋肉群です。歩いているときにひざが伸びる瞬間が全然なければ、体重を支えるために常に大腿四頭筋が頑張っている状態になっているので、腰下げ歩きで大腿四頭筋が鍛えられるのです。

歩くたびに大腿四頭筋に負荷がかかり、ランジと似た効果があるので、腰下げ歩きをするだけでランジを毎歩するのと同じことになるでしょう。ランジは「わざわざする運動」ですが、歩くときにプラスαするだけで同じ効果があるのはお得だと思いませんか?

もしかすると、ひざに負担がかかり過ぎるのでは、と心配になるかもしれません。たしかに深くひざを曲げて体重を支える動きを繰り返すのは心配です。昔、学校の部活などでやっていた「ウサギ跳び」は間違いなくひざに悪い動きです。

けれども、腰下げ歩きはそれほど極端な角度にひざを曲げるわけではありません。また、体重にプラスした負荷をかけるわけでもありません。ですから痛みさえなければ、ひざの負担を気にする必要はありません。

大腿四頭筋のうちの1つ「内側広筋」は、太ももの前面にある筋肉の内側に付いている筋肉です。この内側広筋を太くすることができれば、内側広筋に守られたひざ関節の軟骨のすり減りが抑えられると考えられます。ひざの痛みが減り、人工関節になるリスクが減るでしょう。

内側広筋が太くなれば、ひざの痛みの減少効果、軟骨のすり減り防止効果、人工関節になるリスクの低下が期待できると示した研究もあります。

また、太ももの筋肉は股関節にも関連があります。太ももの筋力が落ちると、体を支える安定性も落ちて、股関節に負担がかかる可能性が高まります。その結果、股関節の軟骨のすり減りである「変形性股関節症」という病気を発症することがあります。

股関節と大腿四頭筋の関係は、ひざ関節ほどにはエビデンスが集まっていませんが、整形外科医の間では以前から重要視されています。つまり、腰下げ歩きは変形性股関節症の発症や悪化を抑えることも期待できるのです。

ひざの痛みを放置してはいけません。ひざの痛みと軟骨のすり減りがある人の死亡危険度は、そうでない人の1.97倍だという研究報告があります。

股関節やひざなど、下半身の関節は構造的に安定していて、めったに脱臼(関節が外れること)しません。けれども体重を支える必要があるので、ある程度は大きな力が必要になります。ですから下半身ではアウターマッスルが衰えないことが大事です。この腰下げ歩きは、下半身のアウターマッスルを鍛えることになります。

【腰などに効く「おなか凹ませ歩き」】

「ドローイン」という言葉があります。これは、スポーツトレーナーやリハビリの療法士などのプロが使っている言葉です。ドローインというのは、体幹(腰・おなかの周囲)のインナーマッスルを使って、姿勢を変えずにおなかをしぼませるような動きです。

ドローインをすると、体の深い部分で積み木のように積み上がっている背骨1つひとつを連結させる「椎間関節」などを安定させるインナーマッスルが鍛えられます。下半身と上半身をつなぐ腰の痛みには、このインナーマッスルが鍵になります。

この方法を覚えると、ギックリ腰の予防にもなります。重い物を持ち上げるときなどにはギックリ腰になりやすいので、必ずドローインしてください。また、「ちょっと腰がしんどい」と思うのは、腰に負担がかかっているときなので、しんどさを自覚したときに特にドローインを意識するといいでしょう。

ドローインは「体幹の安定」にも良い影響が

おまけにドローインをすると、腰の痛みだけでなく、体幹が安定することで下半身も安定して、ひざ、股関節にも良い影響が出ると考えられます。「おなか凹ませ歩き」は、ドローインをしながら歩くだけです。おなかを強く凹ませれば負荷が強くなり、軽く凹ませれば負荷は弱くなります。

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

(出所:『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』より)

もしも歩きながらおなかを凹ませるのが難しいように感じたら、歩かずに立ったまま、おなかを凹ませた状態で普通に呼吸してみてください。

これができたら、その状態を維持しながら歩きます。全力でおなかをぎゅっと凹ませたままで50歩歩き、その後は軽くおなかを凹ませたまま歩きましょう。

苦しくない程度におなかを凹ませること。健康診断で腹囲を測るときに、ちょっと見栄を張っておなかを凹ませる感じです。息を吐くときも吸うときも凹ませっぱなしです。

強くドローインしているときは腹圧を安定してかけ続けるために、呼吸は必然的に胸式呼吸(吸う息に重点を置き、肋骨を広げて胸に空気を取り入れる呼吸)になりますが、胸式か腹式かは気にしなくてかまいません。呼吸が止まらないように、しっかり呼吸することが最も大切です。

呼吸が浅くなりがちなので、いつもの呼吸を意識してください。腰は丸めず、反らさず、真っすぐに。ちょうどいい負荷を探りながら歩いてみてください。

『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』(アスコム)

『ひざ痛と股関節痛 自力でできるリセット法』(アスコム)

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