2020.08.13
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき 第7回 無理なく続けるダイエットのコツ<その2>
前回の記事、連載第6回「無理なく続けるダイエットのコツ<その1>」では、“1ヵ月で
2 kg減”を、無理なく継続するための食事のコツについてお話ししました。
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき
第5回 1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
“1ヵ月で2 kg減”ですから、1週間で0.5 kg減です。毎日、体重計に乗って、体重変化を確認してください。今回は、“1ヵ月で2 kg減”を、無理なく継続するためのコツPart 2です。
減量ペース:でこぼこでも右肩下がりを目指す
減量ペースについては個人差がありますが、BMI 25以上で“やせしろ”のある人が、「今日から始めます!」と決意して、正しく取り組んだ場合、最初の1週間で1 kg、最初の1ヵ月間で3~4 kg減ったとしても不思議ではありません。
ただし、減量初期の体重減少量の正体は、水分量です。これは、たくさん食べた後の体重増加が水分量なのと同じです。「水を飲んで太る」と言う人がいますが、そんなことはありません。水を飲んだら数字としての体重は増えますが、体脂肪はつきません。減量初期も、いままで気にせず食べていた食事を減らすことで、入ってくる水分量が減少し、結果として“簡単に”体重が減るのです。このとき体脂肪は減っていませんので、あまり一喜一憂しないでください。
この減量初期の、やや急激な体重減少の後は、1週間で0.5 kg減くらいのペースに落ち着くことが一般的です。このようなフェーズに入れば、着実に体脂肪が減少していると考えて良いでしょう。
もちろん、日々の体重増減はあって、でこぼこしながら、体重は減っていきます(図1)。毎日、決まった時間に体重を計っていると、うまく食事をコントロールできたときは体重が減ることがわかりますし、外食をしたりすると体重がどれくらい増えるのか、それが元に戻るのにどれくらいかかるのかも自分で把握することができます。月経のある女性であれば、月経周期の影響を強く受ける人がいますので、多少のでこぼこは許容しながら、“正しいダイエット”を継続していくことが大切です。
水分摂取がダイエット成功のカギ
前述の通り、ダイエットのために食事を制限すると、水分の摂取量が少なくなりがちです。そこで、水分不足を補うために、ダイエット中は積極的に水分を摂取することをオススメしています。目安量としては、1日1.5~2リットル。食事でとるスープやお茶などを含めていただいて構いません。がぶ飲みではなく、こまめに水分摂取するようにしてください。
水分摂取の効果として、便秘の解消が挙げられます。ダイエットのために食事を制限し始めると、食事量が減った結果として、便の量が減り、便秘気味になる傾向があります。水分を摂取することで、便がやわらかくなり、かさも増えますので、便通が良くなります。野菜の摂取と合わせて、実践してください。
「水を飲むと太る」と感じる人は、塩分を摂取し過ぎていないか、確認してみてください。塩分摂取量が多いと、体の塩分濃度を一定に保つため、体内の水分量が多くなります。いわゆる、“むくみ”と呼ばれる状態です。塩分摂取量が適正であれば、水を飲んで太ることはなく、水分はしっかりと代謝されます。
水分摂取のもう1つの効果として、体重減少を促進することがわかっています。米国において、肥満者48人を積極的に水分摂取する群としない群の2つに分けて、12週間の体重減少量を比較した研究結果があります[1]。積極的に水分摂取をしない群は、通常の低エネルギー食を指導され、積極的に水分摂取する群は同様の低エネルギー食とともに、毎食の食事前に500 mLの水を摂取するように指導されました。結果として、積極的に水分摂取をした群の方が2 kgほど、減量効果が高まることがわかりました。このような研究結果も踏まえ、ダイエット中の水分摂取を推奨しているのです。
エネルギー密度を下げる
上記の研究が示すように、水分を摂取することで減量効果は高まります。これは、水分を摂取することで、満腹中枢が刺激され、その後の食事摂取量が減少するためです。ダイエットを継続するうえで、空腹感を軽減することはとても重要です。水分摂取はその1つの対策になるのです。
水分摂取の代わりに、水分を多く含む野菜を先に食べるのも良いでしょう。“水分摂取”プラス“咀嚼”によって、満腹中枢が刺激されるので、満腹感を早く感じることができます。
これらは、エネルギー密度を下げることにもつながっています。連載「第4回:とっても簡単!ダイエットのキソ理論」で説明したように、摂取エネルギー量は三大栄養素と呼ばれる、炭水化物、たんぱく質、脂質のエネルギー量でほぼ決まります。それぞれ、1 gあたり4 kcal、4 kcal、9 kcalと、同じ重さであっても脂質の方がたくさんのエネルギーを含有しています。そのため、連載「第5回:1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり」で説明したように、エネルギー密度の高い脂質のコントロールが重要になります。
水分は0 kcalですので、水分をたくさんとることによって、1日全体で考えたときのエネルギー密度が下がってきます。結果として、ダイエット前と比べて同じくらいの量を摂取しているのに、摂取エネルギー量は少ない、という状態になります。こうすることで、満腹中枢をうまくだますことができ、無理なくダイエットを継続することができるのです。
ちなみに、アルコールは純アルコール量(アルコール飲料に含まれるアルコールの量)1 gあたり7 kcalです。純アルコール量(g)は、お酒の量(mL)×アルコール度数÷100×0.8で計算できます。ダイエット中にお酒を飲む人はいないでしょうが(いそうな気がしますが、あえて…笑)、飲み過ぎると当然のことなら、エネルギーをたくさんとることになりますので注意してください。
今回のまとめ
今回は減量ペースと水分摂取の重要性について解説しました。あまり水分を摂らない人が、特に働いている女性で多い印象があります。トイレに行く回数が多くなることを嫌がることが影響しているのかもしれません。トイレに頻繁に行けば、身体活動量もアップしますので、積極的に水分を摂って、水分の代謝サイクルをしっかりと回しましょう。水分代謝を回す上では運動も大切です。次回は効果的な運動方法について、詳しくお話しします。
[1]Dennis EA et al.: Obesity. 2010; 18: 300-307.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1038/oby.2009.235
☆痩せたい方は必見!これまでのおさらい↓
【連載】専門家が教える 絶対役立つダイエット基本のき
【第5回】1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
【連載】手軽にできる運動のススメ(全7回)
【第1回】1日何歩あるきますか?たった「+10分」でも効果的!
著者:中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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