2020.09.18
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき 第8回 停滞期を乗り切るコツ<食事編>
前回の記事、連載第7回「無理なく続けるダイエットのコツ<その2>」では、“1ヵ月で2 kg減”を、無理なく継続するためのコツとして、減量ペースと水分摂取の重要性についてお話ししました。今回は運動方法についてお話しする予定でしたが、先に停滞期についてお話ししたいと思います。
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき
第5回 1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
この連載がスタートしたのは2月ですので、もう十分に目標体重を達成した方もいらっしゃるかもしれませんし、具体的な基礎理論をお伝えしたのが5月でしたので、まだ道半ばという方もいらっしゃるかもしれません。
前回、減量ペースのお話で、でこぼこしながらも右肩下がりになっていれば良いことをお伝えしました。では、なかなか右肩下がりにならないときはどうすれば良いでしょうか?
停滞期の乗り越え方
前回もお伝えしたように、減量初期は、体内の水分量が減少することもあり、割と順調に体重が減ります。その後、減量ペースは落ち着いてくるのですが、1~2ヵ月すると、まったく体重が減らない時期がやってきます。これを停滞期と呼びます。
停滞期の原因はいくつか考えられますが、あまり科学的に導かれた確かな証拠はありません。わたしが数千人を対象に減量指導をしてきた経験からの話になってしまいますが、対象者の生活習慣に原因がある場合とない場合があるようです。
生活習慣に原因がある場合
減量開始前と比べて、減量中の食事量は明らかに少なくなります。減量初期は、一念発起、減量に取り組んでいますので、モチベーションも高いですし、初期の体重減少に喜びを覚えて、容易に継続することができます。
ところが、1~2ヵ月すると、減量ペースが鈍ってきて、モチベーションも下がってきます。我慢していた食事会の誘いなどにも心が揺れ、時には食べ過ぎてしまう日も出てきたりします。食習慣の乱れがなくても、体重変化はでこぼこするものです。そこに、一時的な食習慣の乱れがあると、より一層、一時的な体重再増加が顕著になります。
このような食習慣の乱れは、普通に生活をしていれば必ずあります。大切なことは、体重が一時的に再増加したときに、がっかりし過ぎないことです。仮に1食、食べ過ぎてしまったとしても、3日あれば、元の状態に戻すことができます。裏を返すと、「3日は体重が減らなくなるぞ」という覚悟のもとで、食べ過ぎてください。
停滞期といえども、エネルギー収支バランスの原則に変わりはありません。身体活動・運動によるエネルギー消費量よりも、食事によるエネルギー摂取量が少なければ良いのです。しっかりとした食事管理を継続すれば、必ず体重は減少する方向に向かいます。
生活習慣に原因がない場合
それほど食習慣が乱れていないにも関わらず、まったく体重が減らない、というケースもあります。同じような食習慣をしっかりと継続しているにも関わらず、減ってきた体重がピタっと減らなくなってしまうのです。
“生活習慣に原因がない”と書きましたが、往々にして、やはり生活習慣に原因があります。経験的に多いのは、栄養バランスが崩れているケースです。栄養バランスの重要性については、連載第6回「無理なく続けるダイエットのコツ<その1>」でお話ししました。とはいえ、エネルギー摂取量が少なければ、体重は減るはずです。ただ、栄養バランスが崩れていると、体重を落とすことに対する体の抵抗が強くなってしまうのだと思います。
概念的な話になってしまいますが、ヒトを含む動物にとって怖いものは“餓死”です。そのため、エネルギーを過剰にとれた場合、そのエネルギーを飢えに備えて保存しようとします。逆に、エネルギーを制限して体脂肪を減らしていくことは、“餓死”に近づいていくことであり、体にとっては脅威です。その脅威に対する体の抵抗を減らすために、体に「安全ですよ」と知らせることが必要で、栄養バランスが整っていることはその要素の1つだと考えています。
あまり栄養バランスが整っていなくても、減量初期であれば体重は減ります。しかし、停滞期が訪れた際には、下図を参考に栄養バランスを見直して、しっかりと体に必要な栄養を与えつつ、エネルギー摂取量は制限する、という一段階レベルアップした食事管理を徹底してみてください。
☆ダイエット中の栄養バランスについては、連載第6回でおさらいしましょう。
今回のまとめ
今回は、停滞期を乗り越える方法として、食習慣を見直すことの重要性をお話ししました。ダイエットをある程度継続していると、モチベーションの低下や一時的な気の緩みが出ることもあるでしょう。しかし、一時的な食習慣の乱れによる体重増加は、栄養バランスの整った食事管理を徹底することで、必ず元に戻すことができます。停滞期に入ったと思ったら、食事内容を今一度見直し、新たな気持ちでダイエットを続けていきましょう。
次回は、停滞期を乗り越えるために効果的な運動方法についてお話しします。
☆痩せたい方は必見!これまでのおさらい↓
【連載】専門家が教える 絶対役立つダイエット基本のき
【第5回】1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
【連載】手軽にできる運動のススメ(全7回)
【第1回】1日何歩あるきますか?たった「+10分」でも効果的!
著者:中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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提供元:リンクアンドコミュニケーション