2021.05.26
アンケート企画:あなたの悩みに専門家が答えます(3)閉経後、10kg以上太りました。どうしたら痩せますか?
私たちは、インターネットなどの多種多様なメディアからさまざまな健康情報を入手することができますが、それって確かな情報でしょうか?専門家に聞いてみたいお悩み、ありませんか?
本企画では、リンククロスシル編集部が、アンケートで募集した健康に関するお悩みについて、専門家に聞いてみました。
第3回目は、50歳代女性より、閉経後のダイエットに関するお悩みです。筑波大学体育系 准教授の中田由夫先生に回答していただきました。
Q. 閉経後、10kg以上太りました。どうしたら痩せますか?
A. 中田先生からの回答
加齢や閉経に伴いさまざまな要因で太りやすくなります
まず、加齢に伴う体型の変化についてですが、一般的には加齢に伴い体脂肪がつきやすくなると考えて良いでしょう。令和元年国民健康・栄養調査によれば、BMI 25以上の肥満者の割合は、男性では40代(39.7%)、50代(39.2%)で最も高くなり、女性では60代(28.1%)で最も高くなります。女性については、40代で16.6%、50代で20.7%ですので、閉経に伴い肥満になった、という方は少なからずいらっしゃると思います。
加齢や閉経に伴う肥満がなぜ生じるのか、いくつかの可能性が考えられます。よく言われているように、加齢に伴い筋肉量が徐々に減少し、基礎代謝量が減ってきます。女性は閉経に伴い、ホルモンバランスが大きく変わりますので、体調を崩しがちです。そのタイミングで体重が増えてしまう方もいるでしょう。また、50代、60代となれば、家庭では子育てが終わって落ち着いて過ごす時間が増えてくるでしょうし、職場では指示を受けて動く側から指示して動かす側に立場が変わってくるでしょう。経済的な余裕が生まれ、会食の機会も増え、食事の内容も美食化(高脂質化?)が進んでいるかもしれません。このような条件が合わさることによって、肥満になりやすくなると考えられます。
とにかく、毎日体重計にのりましょう
さて、質問をいただいた方は、閉経後10 kg以上、増えてしまったとのこと。1 kgの体脂肪は約7,000 kcalですので、理論上70,000 kcal以上、余計に食べてしまったことになります。もし、1年で10 kg増えたと仮定すれば、1日当たり、70,000÷365=192 kcalを食べ過ぎたことになります。1年で10 kg増えるというのは、かなり極端な例ですが、それでも1日あたりのエネルギー量にすると、わずか200 kcal足らずです。200 kcalと言えば、コンビニのおにぎり1個分、アイス1個分くらいです。毎晩、アイスを1個食べてから寝てみてください。1年で10 kg、体重を増やせますよ。冗談はさておき、1年で1 kg増えるという例で考えると、1日あたりのエネルギー量はたったの20 kcal(いちご5個分くらい)です。ほんのちょっとの積み重ねで、簡単に体重は増えていきます。体重が増えないようにするには、とにかく、毎日体重計に乗ること!日々の微妙なエネルギーバランスの崩れに気づくのは難しいですが、体重はその結果を教えてくれます。大きく増える前に気づく!ことが大切です。
意識を変えてエネルギーバランスを負に傾けましょう
では、増えてしまった体重をどうすれば減らせるか。まず、若い時は食べても太らなかった、という過去を忘れましょう。そして、いま食べている量と、いま動いている量を考えてください。この1ヵ月で体重の増減がないならば、その食べている量と動いている量がつりあっていることになります。間食せずに、雑穀米で、温野菜多めで食べている量と、ほぼ毎日30分歩いている運動量とでつりあっているのです。そこから体重を減らすためには、そのつりあっているバランスを崩すしかありません。少ないと思っている食事量が、まったく少なくないのです。多いと思っている運動量が、まったく多くないのです。食事量を減らすか、運動量を増やすか、両方を取り入れるかは、ご自身で決めてください。大切なことは、「いま」を変化させることです。「ちゃんとやることをやっている」という意識を変えてみてください。習慣化されている一つひとつのことを変えていくことで、必ず体重は減ってきます。あきらめずに前向きに取り組みましょう。
☆こちらの連載では、ダイエットの基本的な考え方、食事や運動のこと、リバウンド予防のこつなどをまとめています。お役に立てると思うので是非読んでみてください。
【連載】専門家が教える!絶対役立つダイエット基本のき(全12回)
第5回 1ヵ月で2kg減!ポイントは食事と運動の“負”のバランスにあり
【回答者プロフィール】中田由夫 (筑波大学体育系 准教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(理事・編集委員長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(評議員・編集委員)、日本疫学会(代議員)など。
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