2018.12.05
フェイスブックの働き方がこうも自由なワケ|イノベーションを起こす組織作りのカギは?
フェイスブックの本社入り口には「いいね!」の看板が大きく掲げられている(2016年、編集部撮影)
激動の2018年に起こった出来事の中から、ニッポンの未来を大きく左右する“危機”が潜むニュースを、池上彰が7つピックアップ。
その1つとして、TBSテレビ『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』(12月5日夜7時から放送)の取材班が、アメリカのフェイスブック本社を取材。日本のメディアとして初めて、オフィス内部にも潜入した。フェイスブック社のイノベーションを生む組織づくり、そして働き方とは何か? 日本企業や日本経済の未来を考えるうえで、押さえておきたいポイントがあった。
『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』(12月5日夜7時から放送) ※外部サイトへ遷移します
フェイスブックの社内は「街」のようだった
今年の流行語大賞にノミネートされたGAFA。
Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字で、IT市場を席巻し、動向を見逃せない有名企業たちだ。GAFAの1つであるフェイスブック社を取材した。
アメリカ西部、カリフォルニア州。ここには、世界初となる商品やアイデアを次々と世に送り出すシリコンバレーがある。世界の名だたる企業がここに集結する、まさにIT産業の一大聖地だ。
そこでひときわ巨大なオフィスを持つのが、フェイスブック社である。
フェイスブックは、2004年、当時ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグ氏が創業。人と人とをつなげる新しいビジネスで、ネット上で家族や友人はもちろん、知らない人ともつながることができる場を提供している。いまや月間アクティブユーザー数は22億人を超え、世界で3人に1人が利用しているサービスになった。
フェイスブック社の敷地内に一歩足を踏み入れると……。そこに広がっていたのは、まるでひとつの街のような光景だった。気持ちのよい木漏れ日が降り注ぐ並木道。屋外のそこかしこにベンチがあり、コーヒー片手に社員同士がおしゃべりしている。ここで、世界中から集まった頭脳、1万7000人が働いているのだ。
フェイスブックの本社内はまるで「街」のようだった(写真:TBSテレビ『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』取材班提供)
『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』 ※外部サイトへ遷移します
驚くことに、フェイスブックには、日本でいう「就業時間」は存在しない。仕事をこなしていれば、好きなスケジュールで働くことができるのだ。フェイスブックを訪問した午後3時、日本でいえば就業時間の真っただ中に、なんともリラックスした雰囲気がフェイスブックの「街」を覆っていた。
広報担当のクレア・マシアスさんは言う。
「フェイスブックは社員の働き方にとても柔軟な考え方を持っていて、たとえば朝の9時半か10時に出社して午後3時に一度切り上げて子どもを迎えに行き、寝かしつけた後、午後10時から家で仕事をするという人もいます」
一人ひとりのライフスタイルにあわせた働き方ができる反面、たとえ朝9時から夕方6時まで出社していても、それだけでは評価されない。仕事の「質」が問われる働き方だ。
革新的なアイデアが生まれるカギは職場環境にある
広々としたオフィスに足を踏み入れる。ここで目を引くのが、ダクトがむき出しになった天井だ。未完成のままなのは、自分たちもまだ未完成だという気持ちを忘れず、スタートアップとしての志を持ち続けようという、社員へのメッセージだという。
ダクトがむき出しになった天井とともにオフィス内部を紹介してくれた広報担当のクレア・マシアスさん(写真:TBSテレビ『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』取材班提供)
『緊急!池上彰と考えるニュース総決算!2018ニッポンが“危ない”』 ※外部サイトへ遷移します
日本の場合、部署ごとに“島”があり、決められた席に座るのが一般的だが、フェイスブックでは仕切りのない巨大なテーブルで、思い思いに好きな席に座って仕事をする。オフィスを出て外にあるソファーや、テラスで日光を浴びながら仕事をする人もいる。
入社2年目のアシュリーさんによれば、「敷地内のどこに行って仕事をしても大丈夫です。さまざまな部署の人たちと密接に働きながら経験をお互いに伝え合い学ぶことができ、アイデアが広がっていきます。マーク(CEO)やシェリル(COO)が歩き回っていることもあるわ」という。
実は、これが革新的なアイデアを生み出すためのフェイスブックの環境づくりなのだ。
フェイスブックには、仕事の大きな指針が3つある。
(1)インパクトのあるアイデアを生み出したか
(2)自分のアイデアにいかに人を巻き込んだか
(3)他人のアイデアをいかに助けたか
フェイスブックは、売り上げよりも、いかに世の中にインパクトを与えるアイデアを生み出すかを重視。そして、より多くの社員同士が交流できる環境こそが、革新的なアイデアを生むと考え、注力してきた。
たとえばフェイスブックでは、いろんな国の料理を食べることができる。
社員食堂では、数十種類のインド料理が食べ放題。社員なら無料だ。ランチだけでなく朝食、夕食、カフェ、デザートも無料。食事の場は、人が集まる場所。無料で提供することにより、より多くの社員同士が交流できる。そして新たな交流が、新たなアイデアを生み出すというのだ。
スピーディーな意思決定が成果を高める
人と人とがつながりやすい環境の中で生み出されたアイデアを、どう実現していくのか。
フェイスブックは、プロジェクトの進め方も独特だ。日本の企業では上司が選んだチームで仕事を進めることが多いが、フェイスブックでは食堂やカフェなどでアイデアを出し合い、意気投合すれば、勝手にチームを組み、自発的に仕事を進めていく。
さらに、アイデアをスピーディーに実現させる仕組みもある。3カ月に1度、全社員が参加可能なアイデアコンテストを開催。誰でもアイデアを経営陣に直接プレゼンできるチャンスがあるという。
プレゼンには、若手と同じソファに座るマーク・ザッカーバーグ氏の姿もあった。
そんなフェイスブックの環境づくりでカギとなるのが「コーチ」と呼ばれる人たちだ。彼らは決して上司ではなく、社員同士の話し合いが行き詰まったときに助言をしたり、時にはプライベートな相談にものったりする。働きやすい環境づくりのためのアドバイザーだという。
コーチの1人、オスカーさんは言う。「僕たちは世界の誰も見たことがないようなものを作ろうとしているんです。その途中でたくさんのミスもします。だからこそ職場の環境づくりが大切なんです」。
先進的に見えるフェイスブックの働き方も、彼らにとっては、まだ改善の余地のある未完成なもの。革新的なアイデアを生み出す環境から、これからも、新たな働き方のアイデアが生まれてくるかもしれない。
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提供元:フェイスブックの働き方がこうも自由なワケ|東洋経済オンライン