2023.04.19
科学者に聞く、脳の成長が止まる「3つのNGワード」|「仕事ができる人」「そうでない人」の違いとは?
うまくいく人には使わない言葉があります(写真:EKAKI/PIXTA)
「あの人みたいになりたい」。まわりに、そんな憧れの対象が一人や二人はいるはずです。しかし、私たちは一朝一夕にそれは叶わないとも思っています。たしかに、「憧れのあの人」は努力の末、現在の姿になったのかもしれません。
「でも、実は、彼らが無意識に使っている言葉に脳が大きく影響され、行動が変わっていった結果でもあるのです。最も手軽に自分を変える方法は、言葉の力を使うことです」そう語るのは、脳科学者・西剛志氏。
「しかし、そのためには、脳の成長をストップさせてしまう言葉を使わないことが重要です」と西氏は続けます。
本稿では、『世界一やさしい 自分を変える方法』より、一部抜粋・再構成してお届けします。
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人生は使った言葉の集大成でできている
朝起きてから眠りにつくまで、私たちが最も会話している相手は、誰だと思いますか。実は、それは他の誰でもない「自分自身」です。
人は、1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。米国の研究では頭の中で話す言葉は、声に出す言葉よりも10倍以上速いという結果も出ています。それだけの回数の「脳内トーク」によって、脳は多大な影響を受けていることになります。
“うまくいく人”は効果的な「脳内トーク」を生活に取り入れています。
たとえば、スティーブ・ジョブズは、毎朝、自分に対して
「もし今日が人生最後の日だったら、僕は今からすることを『したい』と思うだろうか?」
と問いかけていたのは有名な話です。
Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグは、
「今、僕は自分にできるいちばん大切なことをやっているだろうか?」
と毎日のように問いかけている、と語っています。
これらの事実は、日々行う自分との対話がいかに大切かを教えてくれています。
なりたい自分になるために、強い意志は必要ありません。「言葉が変われば」あなたは変われます。
最新の研究データからも、「脳は大人になっても、いくらでも変化できる」とわかってきました。
しかし、大前提として注意してほしいことがあります。
それは、脳の変化を止めてしまう「脳内トーク」を使わないことです。
今回は、特にうまくいかない人ほどよく使う3つの言葉を紹介します。
言ってはいけないNG脳内トーク1「わからない」
この言葉を発した瞬間に、脳は思考停止します。かなり危険な言葉です。
たとえば、会議で議題になっている課題への解決策を聞かれたとき。
「Aさんは、この課題に対して、どんな解決策があると思いますか?」
「わからないです」
そう回答したら、どうでしょうか。会議に参加しているメンバーからは「仕事ができない人」という烙印を押されてしまう可能性があります。それもリスクではありますが、もう1つの大きなリスクは、この言葉を発した瞬間に、脳が思考を停止してしまうことです。
実際に、課題解決ができない人にインタビューすると、心の中で「わからない」という言葉を頻繁に言っている傾向があります。「わからない」と言った瞬間に、もう脳は「考えなくてもよい」と認知してしまうため、それ以上考えなくなってしまうのです。
「わからない」は使わない。
もし、実際にわからないときは「そうですね」や「それは大切な課題です。解決する方法としては、いくつかの可能性があるかもしれません」と回答し、思考を止めない習慣を身につけることが大切です。
また、もし仕事を一緒にしているチームメンバーが「わからない」を使ったときは、あなたの質問の仕方を変えてみることも有効です。こんなふうに。
「そうなんですね。でも、どんな小さなことでもいいので、もしわかるとしたら、どんな方法があると思いますか?」
「もしわかるとしたら?」という「仮定型の脳内トーク」を使うと、脳はわかることを前提に考えようとするため、解決策が出てくることがあります。
以前、仕事を一緒にしている人から、こんなことを聞かれました。
「どうやって新規客を探せばいいのかわからないのですが、どうしたらいいでしょうか?」
そのとき、私は彼にこう質問してみました。
「そうなんですね。でも、もしわかるとしたら、どんな小さなことでもいいので、どんな方法があると思いますか?」
少し考えて出てきた答えは、本人も意外だったそうですが、「自分の知り合いの名前を、すべて紙に書き出してみます」というものでした。
実際に、これまでもらった名刺、メール履歴、SNSの友達リストを調べてみると、1000名以上の人の名前が出てきて、本人も驚いたそうです。書き出すまでは気づかなかったことが、目に見える形になると、Aさんには紹介を頼もう、Bさんなどがいるグループは意外と定期的に商品を買ってくれていた、Cさん、Dさん、Eさんは同じ情報を求めていたなど、いろいろなことに気づき、それぞれに効果的なアプローチを考えて試してみたそうです。
その結果、その月の売り上げがなんと55%も上がったという事例がありました。
「脳内トーク」を変えただけで、意外な解決策や方法が見えてくることを、私も現場で日々体験しています。
言ってはいけないNG脳内トーク2「できない」
これも、言った途端に思考が停止してしまう「フリーズワード」です。
特にうまくいかない分野(仕事もプライベートも含めて)の多くで「できない」という言葉をよく使っている傾向があります。
もちろん、人はなんでもすべてできるわけではありません。うまくいく分野と、うまくいかない分野がありますよね。仕事ではすごくうまくいっている人が、恋愛ではまったくうまくいかなかったり、その逆だったり。うまくいかない分野であればあるほど、つい「できない」という言葉を使いがちです。
でも、「できない」と言った瞬間に、脳はできない状態をイメージするため、そこで思考がフリーズしてしまうのです。
一方で、うまくいく人の多くは、「できない」という言葉をほとんど使わない傾向があります。たとえ「できていないこと」に対してもそうです。
たとえば、スティーブ・ジョブズは、無理難題を言うことで有名な人だったそうです。まだ従来の携帯電話が全盛の時代に、「ボタン1つで操作できる電話を再発明するんだ」と開発者を集めて宣言したとき、ほぼ全員が「そんなことできるはずない」と思ったそうです。何度チャレンジしてもできないので、「こんなことは無理です。できません!」と伝えたそうですが、ジョブズはまったく聞く耳を持ちませんでした。
ジョブズの熱意であきらめずに開発を行った結果、2007年、世界初のスマートフォン「iPhone」が誕生しました。ジョブズは「できない」という言葉を持っていませんでした。「吾輩の辞書に不可能という文字はない」という格言をナポレオンが残していますが、まさに、世界的偉人は「できない」という言葉を持っていないのかもしれません。
1995年の研究でも「自分はできない」と言うグループは、「自分はできる」と言うグループよりもパフォーマンスが下がることが報告されています。
できないではなく、できる理由を探していくことが、うまくいく鍵になります。
言ってはいけないNG脳内トーク3「知っている」
この言葉を使ってはいけないというのは、少し意外かもしれません。
でも、これもうまくいかない人ほど使っているNG「脳内トーク」です。
「ああ、それはもう知っている」と思った瞬間に、脳はこれ以上学習する必要はないと判断して、思考を停止してしまうのです。
うまくいく人たちが総じて謙虚なのは、「知っている」という言葉が自分にとってマイナスであることを、意識しているか無意識かはわかりませんが、わかっているのです。知っていると思った話も、最後まで聞いてみる姿勢を持っています。
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私が以前、大学院で研究していた時代、偉大な発見をしてきた科学者の方々と会う機会に恵まれました。そういった人たちと会話して感じたことは、一流の人ほど、当時学生だった私の言葉にも耳を傾けてくれることでした。
理由を聞いたことがあるのですが、「偉大な発見は、意外と当たり前から発見される。だから僕は、子どもにも意見を聞くこともあるんだよ」と言われたことが、今でも心に深く残っています。
かつて、経営の神様と呼ばれた松下幸之助(現・パナソニック創業者)は、全国の店長が集まる会議のときに、知っているはずのことも初めて聞くように聞いていたそうです。そうすることで、知っていると思って聞くと見過ごしてしまう問題点にも気づくことができ、学びになると考えていたと言います。
突き抜けた成果を出している人ほど、「自分は知らない」という謙虚な態度を持っていることに気づきます。
うまくいく人たちは、こうした「脳の変化を止めてしまう言葉」を意識的に口にしない習慣を持っているのです。
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提供元:科学者に聞く、脳の成長が止まる「3つのNGワード」|東洋経済オンライン