2020.01.23
「腸活=ヨーグルト」だけじゃない!|正しい腸活のススメ
「腸活」とは、腸内環境を整えることで健康で美しくなる活動のことを指します。
身体本来のデトックス機能を高められ、便秘や肌荒れを改善できるほか、免疫力の向上や肥満予防にもつながるなど、さまざまなメリットがあります。今回は、腸活の正しい方法や注意点についてまとめました。
目次
-腸の働き
-腸活をする5つのメリット
-腸活の正しい方法(腸内環境の整え方)
-腸活をするときに意識したいこと
腸の働き
腸内環境の劣化を防ぎ、腸本来の機能を活性化させる「腸活」を行うためには腸の機能について理解することが重要です。腸は“第二の脳”と呼ばれるほど重要な臓器。その機能は栄養の消化・吸収や老廃物の排泄、免疫作用の活性化など多岐にわたり、人が健康に生活していくうえで欠かせません。ここでは、腸が持つさまざまな機能について解説します。
栄養の消化・吸収
腸が持つ最も代表的な機能の一つが栄養の消化と吸収です。私たちが食べたものは主に小腸と大腸で消化・吸収され、24時間ほどで排泄される仕組みになっています。
小腸はおもに消化・吸収の働きを担っており、胆汁や膵液などの消化酵素を使って、たんぱく質をアミノ酸に、糖質をブドウ糖に、脂質を脂肪酸などに分解します。そうして分解された栄養素の約90%は、小腸で吸収されます。
小腸で消化・吸収しきれなかった食べ物のカスは大腸に運ばれ、水分の一部が吸収されたあと、分解され、エネルギー源となります。このように、栄養素のほとんどは腸で吸収されているため、腸内環境がヒトの健康に大きく関わっていることが分かります。
老廃物や毒素の排泄
「便を介して老廃物を排泄する」という重要な役割を担っているのが大腸です。食べ物が消化・吸収される過程では、たくさんの老廃物が発生します。消化管の一番下に位置する大腸には、消化しきれなかった食べ物のカスとともに腐敗菌なども集まってきます。大腸は、それら老廃物の処理を行っています。
腸が正常に働かないと食べ物の残りカスや老廃物が大腸内に留まり、便秘になります。体内に不要な老廃物や毒素を抱え込むことになってしまうため、肥満や肌荒れなどを誘発する恐れもあります。腸活を行うことで、腸の働きがよくなるため、排泄機能を高める効果が期待できます。
免疫機能の調整
腸には全免疫細胞の6割以上が存在し、“人体最大の免疫器官”とも言われています。
腸は「内なる外」とも呼ばれ、口から食べ物や飲み物と混じって病原菌やウイルスが頻繁に入り込んできます。このため、腸には外界から侵入する異物や病原体を排除できるよう免疫細胞が集中していると考えられています。腸内環境の悪化は腸の免疫機能の低下に直結するため、有害物質に立ち向かえず、風邪やインフルエンザ、アレルギーの発症などさまざまな病気を誘発してしまいます。
「幸福ホルモン」を作る
「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンや、快感を増幅するドーパミンなど、人の感情を左右する上で欠かせない神経伝達物質は、腸で合成されています。また、それらの元となる物質「前駆体(物質を生成する前の物質)」を作るのに必要な葉酸やビタミンB3、ビタミンB6などのビタミン類の合成も腸内細菌が担っているため、腸内環境の改善は精神の安定に直結します。特にセロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンの原料にもなるため、睡眠の質の向上やうつ症状の改善に役立つといえるでしょう。
腸活をする5つのメリット
腸活に取り組むと、腸内環境が整うため、便秘などの不調改善だけではなく、病気にかかりにくくなる、髪や肌が若々しくなる、痩せやすい体質になるなど、さまざまなメリットが得られます。ここでは、なぜそのような良いことが起きるのか、腸内環境の状態とともに紹介します。
【1】便秘が解消される
腸内には大きく分けて善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3タイプの腸内細菌がバランスを保ちながら存在しています。
便秘になると、腸内の悪玉菌の割合が多くなってしまい、腸のぜん動運動を促す成分を作り出す善玉菌の割合が減少し、さらなる便秘につながる悪循環になってしまいます。腸活によって腸内環境を整えることで、善玉菌が活発に働くようになり、うんちとしてすみやかに体外に排出できるようになるため、便秘解消に有効です。
腸内環境について詳しく知りたい方は下記記事もチェックしてみてください。
【2】免疫が整う
腸活によって腸内環境が善玉菌優勢の状態になると、免疫が整って病気の予防にもなるといわています。
善玉菌はオリゴ糖や食物繊維の一部をエサとして、短鎖脂肪酸(特に酪酸)という物質を生み出します。この短鎖脂肪酸は、腸内環境を善玉菌がすみやすい酸性に保つはたらきがあるほか、腸管の粘膜を保護して外部から侵入した病原菌が、腸内で増えるのを防ぎ、感染を防御する役割を果たしています。また短鎖脂肪酸が作られると過剰な免疫反応を防ぐことにもつながります。つまり、腸活により腸内環境が整うことで、腸が持つ免疫機能を整えることができ、病気予防に役立つことになります。
【3】髪や肌が若々しくなる
シミやシワ、髪のパサつきの原因は、細胞を傷つける活性酸素の攻撃によるものです。活性酸素はストレスや激しい運動などで発生し、酸化力が強いため、老化促進にもつながってしまいますが、腸の内部に生息する腸内細菌には、「活性酸素」に対抗する力があります。腸内環境が良好であれば、腸内細菌が活発に働いて活性酸素を退治してくれるので、その被害を受けることは少なくなります。
代謝を促すビタミンB群や、コラーゲンの生成を助け、抗酸化作用のあるビタミンCなどは、体内で作り出すことができず、食べ物から摂取するか、腸内細菌が合成したものを摂りこむ必要があります。腸活により腸内環境を整えると、この腸内細菌がビタミンを合成する働きがスムーズになり、アンチエイジングに役立ちます。
【4】肥満予防
オリゴ糖や食物繊維の一部は、腸内細菌に分解されることで、酪酸やプロピオン酸といった、腸内の悪玉菌の繁殖を抑えて善玉菌が住みやすい環境を作る短鎖脂肪酸になります。同時に腸が「短鎖脂肪酸がたくさんあるぞ」と身体に信号を発して、エネルギー消費量を増やしたり脂肪の分解を進めたりと、肥満にならないように調節を促してくれます。逆に腸の働きが乱れると短鎖脂肪酸を生み出す力が弱まって代謝が低下してしまうので、食事に含まれるエネルギー量だけでなく、腸内環境を良好に保つことも肥満予防には不可欠です。
【5】ストレスに強くなる
腸活を行うと、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質のセロトニンの分泌が活発になり、ストレスの緩和につながります。
セロトニンのもとになる前駆体は、90%以上が腸内細菌で作られて脳に送られています。そのため、腸内環境が良くなるとセロトニンの生産量が増え、幸福感が増して精神が落ち着き、ストレス耐性も自然と強まっていきます。
腸活の正しい方法(腸内環境の整え方)
腸活をするにあたり、「ヨーグルトだけを食べる」「野菜だけを食べる」など、偏った食生活を送ってしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、これはあまりオススメできない腸活法です。「腸活はバランスのよい食生活」が大前提です。そのうえで、腸によいものを積極的に食べたり生活習慣を見直したりすることが大切です。腸活を行うときは、次のポイントを意識してみましょう。
「プロバイオティクス」を含む食材を食べる
腸活を効率よく進めるためには、腸内の善玉菌を増やす必要があります。そこでオススメなのが、「プロバイオティクス」と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌などの身体によい影響を与える微生物を含む食材を摂取する方法です。これらは主にヨーグルトや乳酸菌飲料に多く含まれています。
摂取したプロバイオティクスは、腸内にいるあいだに短鎖脂肪酸(乳酸や酢酸)を次々と作り、善玉菌が増えやすいように腸内の環境を酸性にしやすくしてくれます。ただし、口から食べた菌は身体にとって部外者とみなされ、免疫機能によって排除されてしまうため、腸内にずっと棲みついてくれるわけではありません。通常は3〜7日ほどで便と一緒に排出されてしまうので、毎日摂取するのが理想的。ヨーグルトであれば、1日100〜300gを目安に摂取するとよいでしょう。
善玉菌にエサを与え、善玉菌を増やす
せっかく腸活で生きた乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を摂取しても、それらのエサとなるオリゴ糖や食物繊維などが不足してしまうと増殖することができません。そのため、食べ合わせも肝心です。
オリゴ糖は豆類やゴボウ、たまねぎに多く含まれており、食物繊維は穀物やイモ、海藻に多く含まれています。ただし、穀類のなかでも炭水化物を含む食品(白米・小麦など)の摂りすぎはエネルギーの過剰摂取につながり肥満につながる可能性もあるため、海藻類や熟した果実などの水溶性食物繊維を多く含む食材を一緒に食べるようにしましょう。水溶性食物繊維は腸内でも水分を取り込み、消化過程でできた老廃物や毒素を吸着して便として排出してくれるほか、血糖値の上昇を防いでコレステロールの吸収も抑制してくれます。
便を出す力をつける
腸活は善玉菌を育ててよい便を作るだけでなく、毎日きちんと出す力をつけることも大切です。便を出す力をつけるためには、食物繊維を摂るほか、適度な運動、腸を刺激してぜん動を促すことが大切です。
不溶性食物繊維を摂る
食物繊維の中でも、水に溶けにくい不溶性食物繊維と水に溶けやすい水溶性食物繊維があります。どちらも腸活には不可欠な成分で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を1:2のバランスで食べるのが理想的です。
不溶性食物繊維は噛みごたえのあるものが多く、腸内で水分を吸収してふくらむことで腸壁を刺激し、腸のぜん動運動を促進してくれます。不溶性食物繊維を多く含む食べ物には、玄米やレタス、サツマイモ、豆類などがあり、便のカサを増やしてくれる効果もあるので、特に便の量が少ない人は積極的に摂ることをオススメします。
運動をする
運動不足は便秘の原因になるため、日頃から運動を意識することが大切です。
腸の後ろには腸腰筋(ちょうようきん)という身体の奥深くにあるインナーマッスルがあります。この筋肉を動かすと、腸が刺激されてぜん動運動を促すことができるほか、腹圧を高めて便を押し出しやすくすることができます。腸腰筋を鍛えるためには、できるだけ階段を使う、速歩で大股で歩くなど、特別な運動でなくてもよいので、毎日こまめに身体を動かすように意識してみてください。
寝起きにコップ1杯の水&朝食を摂る
腸の働きは体内時計に左右されており、脳の活動スイッチをつかさどる脳幹網様体(のうかんもうようたい)という部位が刺激されることで、腸の活動も活発になります。この脳幹網様体を刺激する手軽な方法が、寝起きにコップ一杯の水を飲むことです。
脳幹網様体は光や音、味覚や皮膚の刺激などによって覚醒スイッチが入ります。目覚めてすぐに冷たい水を飲むと、空っぽの胃が刺激されて、脳から「ぜん動運動を開始しなさい」と信号が送られます。また、摂取した水の一部は大腸に到達して便に吸収されるため、便を柔らかくするためにも有効です。
また、朝食も排便にとって重要な“大ぜん動”のスイッチになります。
“大ぜん動”とは、胃に食べ物が入ることで胃から腸へと信号が送られて起こる強い収縮運動のこと。朝食を食べると胃や腸が直接刺激されて大ぜん動が起こり、さらに直腸反射によって排便もスムーズに促されます。
少し早起きしてトイレ時間を設ける
腸活をスムーズに進めるためには、排便のタイミングを逃さないことが肝心です。
朝食を食べると反射的に大腸が収縮する「胃・結腸反射」が起き、それと合わせて大ぜん動が促されて排便に至ります。この大ぜん動が起こるのは10〜30分くらいで、日に数回しか起きません。中でも最も強く起こるのが朝なので、このチャンスを逃すと次は半日から1日以上待つことになってしまいます。そのため、朝はなるべくトイレの時間をゆったり設け、便意を見過ごしたり、我慢したりしないようにしましょう。
質のよい睡眠をとる
腸活を成功させるためには睡眠にも意識を向けることが大切です。消化管は、休息をつかさどる副交感神経が優位になると活発に動きます。そのため、ゆったりとリラックスして眠ると腸は活発になり、夜のあいだに便を運んでくれて次の日には朝食を食べるとスルッと排便できるようになります。逆にストレスを抱えたまま寝たり夜更かしをしたりすると緊張状態が続いて交感神経が優位になり、消化管の動きも鈍くなって、ウサギの糞のような丸くて細かい便になってしまいます。寝る前にはリラックスタイムを設けて、睡眠の質を高めるように意識してみましょう。
腸活をするときに意識したいこと
腸活は間違った方法で行うと成功しません。そこで、腸活を行う際の注意点とやってはいけないことを解説します。
うんちの状態から生活習慣を見直す
腸は身体にとってよくないものが送り込まれても、毒素を排出しようと一生懸命対処します。そのため、うんちをチェックすれば、腸内環境の様子を知ることができます。よい便にはいくつかのポイントがあるので、自分の便を確認しながら生活習慣を見直すきっかけにしてみてください。
過度なダイエットや断食は避ける
腸のぜん動運動は食べ物が胃に入ると起こるため、過度なダイエットや断食で食事を抜いているとぜん運動が起きる回数が減り、腸の老化につながります。特に近年注目を集めている糖質制限ダイエット(炭水化物抜きダイエット)は、糖質だけでなく食物繊維の摂取量も減ってしまうため、便秘のリスクが高まります。
とにかく続けてみる
腸活は、特別なものを食べたりジムに通って運動をしたりする必要はありません。不規則だった睡眠や食生活を見直すだけでも、腸内環境は十分変わります。また、神経質になりすぎると面倒になって諦めてしまいかねないので、ストレスをためないようにリラックスできるものを探しておくことも大切です。
腸活はダイエットや美容に役立つだけでなく、健康を維持するうえでも重要です。まずは自分の腸内環境がどんな状態なのか、便をチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか。
監修:松生恒夫(松生クリニック院長)
<参照>
『朝の腸内リセットがカラダを変える』松生恒夫(主婦の友社)
『寿命の9割は腸で決まる』松生恒夫(幻冬舎新書)
『「排便力」をつけて便秘を治す本』松生恒夫(光文社知恵の森文庫)
『腸を整えれば病気にならない』辨野義己(廣済堂健康人新書)
『免疫力は腸で決まる!』辨野義己(角川新書)
『「腸スッキリ!」健康法』藤田紘一郎(PHP文庫)
『病気にならない乳酸菌生活』藤田紘一郎(PHP文庫)
photo:Getty Images
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提供元:「腸活=ヨーグルト」だけじゃない!|正しい腸活のススメ│フミナーズ