2024.07.22
国がすすめる健康づくり対策とは?~健康日本21(第三次)を優しく解説
第5回 健康づくりのための休養と睡眠
健康状態を改善するための個人の行動目標として、これまでに、栄養・食生活、身体活動・運動について説明しました。今回は、休養・睡眠について説明します。
この連載について――――――――――――
2024年から始まる「健康日本21(第三次)」について、身体活動ガイドラインの策定にも関わられていらっしゃる筑波大学体育系 教授の中田由夫先生に解説していただきます。
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睡眠で休養を取りましょう
休養・睡眠の目標として第一に挙げられているのは、「睡眠で休養がとれている者の増加」です。この「睡眠で休養がとれているかどうか」を「睡眠休養感」と呼びます。
睡眠休養感が高いと、心筋梗塞や狭心症などの発症率が低いことが示されています。一方、睡眠休養感の低下は、肥満や糖尿病、高血圧や精神疾患と関連することが報告されています。
睡眠休養感を低下させる要因としては、睡眠不足、仕事などによる日中のストレス、就寝直前の夕食や夜食、朝食抜きなどの食習慣の乱れ、運動不足、歩行速度の遅さなどの運動習慣の不良、糖尿病、高血圧、がん、うつ病などの慢性疾患を有することなどが報告されています。
適正な睡眠時間を目標に
休養・睡眠の第二の目標は、「睡眠時間が十分に確保できている者の増加」です。これまでの研究で、極端な短時間睡眠・長時間睡眠のいずれも寿命短縮に寄与することが明らかになっています。
適正な睡眠時間は、20歳以上60歳未満は6~9時間、60歳以上は6~8時間です。数値が異なる理由は、高齢世代において長時間睡眠による健康リスクがより強く表れるためです。
労働者にとっては、労働時間が増えるほど、睡眠時間が短くなります。そのため、休養・睡眠の第三の目標として、「週労働時間60時間以上の雇用者の減少」が挙げられています。個人の生活習慣の改善に加えて、労働者が健康で充実した働き方ができる環境整備を進めることが大切です。
睡眠ガイドも参考に
睡眠環境、生活習慣、嗜好品の摂り方などを見直すことでも、睡眠休養感は高まります。詳しくは、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を参照してください。
健康づくりのための睡眠ガイド2023【睡眠対策】 ※外部サイトに遷移します
健康づくりのための睡眠ガイド2023 ※外部サイトに遷移します
著者:中田由夫(筑波大学体育系 教授 博士 体育科学)
2004年3月筑波大学大学院博士課程体育科学専攻修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科助手、助教、筑波大学医学医療系助教、准教授を経て現職。食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにする研究を進めている。
【主な論文】
Nakata Y et al. Web-based intervention to promote weight-loss maintenance using anactivity monitor: A randomized controlled trial. Preventive Medicine Reports 14:100839, 2019.
【主な書籍】
江口泰正, 中田由夫(編著). 産業保健スタッフ必携 職場における身体活動・運動指導の進め方. 大修館書店, 東京, 2018.
【主な所属学会】
日本運動疫学会(副理事長)、日本健康支援学会(理事長)、日本体力医学会(常務理事)、日本疫学会(理事)など。
記事提供:株式会社Wellmira
『世界中の誰もが、自然に健康になれる社会を創る』をミッションとし、「テクノロジー・エビデンス・専門家ネットワークを活用し毎日の健康を自然にサポートできる社会システムの構築」を目指しています。
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