2022.09.06
【特集】今からできる!知って備える認知症対策
"認知症”という病気があることは知っているけれど、なんとなく他人事だと思っている方は多いのではないでしょうか?
しかし、厚生労働省によると、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されており、認知症は年を取ると誰でもかかる可能性のある病気といえます。
この記事では、認知症グレーゾーンの特徴や認知症を疑うべき症状、予防のために今すぐできることなどをご紹介します。
「自分には関係ない」と思わず、将来のために認知症の理解を深めましょう。
医学博士が解説!「性格が変わった?」認知症グレーゾーンの特徴3つ
「めんどうくさい」と「認知症」の関係
なぜ認知症グレーゾーンの人は、「めんどうくさい」と感じるようになるのでしょうか。認知症になると、脳の側頭葉で記憶を司っている“海馬”と呼ばれる部分が萎縮することは一般に広く知られています。
加えて、実は海馬の萎縮が始まるより先に、前頭葉の機能が落ちてくるケースがよくあります。前頭葉はちょうどおでこのあたりに位置し、言ってみれば「脳の司令部」。やる気を生み出す中枢でもあります。本来は旗振り役のこの部分の機能が衰えることにより、「うーん、めんどうくさいな、まだやらなくてもいいかな」「行かなくてもいいかな、今度でいいかな」となってしまうと考えられます。
さらに言えば、認知症グレーゾーンの初期の頃に見られる「人の名前を思い出せない」などの記憶力の低下も、前頭葉の働きが落ちていることに由来するのではないかと、考えられます。
司令部の前頭葉は、脳内の情報を出し入れする役割も担っているため、その働きの低下により、脳内の情報が段取りよく引き出せていないことで、「人の名前をなかなか思い出せない」といった症状が出ている可能性があるからです。
だとすれば、認知症グレーゾーンの初期に「めんどうくさい」という行動の変化が見られた段階ですぐに対策を打てれば、海馬の萎縮を事前に防ぎ、元に戻る可能性が高まるとも推測されます。
年を取ると「怒りっぽく」なる理由
前頭葉は、感情をコントロールする役割も担っています。そのため、前頭葉の機能が低下すると、感情面にも大きな変化が表れてきます。イライラして怒りっぽくなるのは、その代表です。
もともと加齢に伴い、前頭葉の機能はある程度低下します。ですから、年を取ると誰でも怒りを自制しにくくなります。堪え性がなくなるのですね。
新聞やネットで、高齢者がキレて事件を起こした記事を目にする機会がしばしばありますが、実は認知症でない高齢者やグレーゾーンの高齢者のほうが、認知症の人よりもキレやすいことがわかっています。
とくに定年後の男性の場合、将来への不安や、社会の第一線から離れてしまった劣等感などの裏返しとして、自分に対する周囲のリスペクト(尊重)が足りないと感じ、怒りが爆発する大きな引き金となります。
仕事を辞めると、過去の肩書や業績はリセットされ、十把一からげに「ただのおじさん」扱いされる場合があります。本人としては、特別ちやほやされたいわけではなくても、年を取っているからといって“ぞんざい”な扱いをされると、自尊心を傷つけられて過敏に反応してしまうわけです。
現役で仕事をバリバリしていた頃は、心の中で怒りを覚えても、口に出すのはぐっと我慢し、皮肉の一つを言うくらいでとどめておけた人でも、加齢による脳の衰えで自制が利かなくなっていますから、怒りを覚えると我慢できずにすぐ暴言を吐いたり、大声で怒鳴ったりしやすくなりがちなのです。
さらに、認知症グレーゾーンになると、よりいっそうブレーキが利かなくなります。今まで物静かだった人が急に怒りんぼうになったり、もともと怒りんぼうの人が、さらに怒りんぼうになったりする。ほんのささいなことでも腹を立てるようになります。周囲の人が実際にどう思っているのかは関係なく、よかれと思って声をかけてくれた人にまで怒りをぶつけるようになるのです。
親子だと、とくに感情がストレートに出やすくなります。娘さんが「お父さん、それ、間違っているよ!」と強めのトーンで言ったりすると、本人は否定されたという負の印象だけが残ります。言われた内容の良し悪しは関係なく、とにかく娘が自分をバカにして言い負かそうとしている、という思いが爆発し、暴力・暴言につながったりします。
あるいは、難聴気味の認知症グレーゾーンの人に大きな声で話しかけると、「大声で罵倒された」と怒りだすことがよくあります。「大声=怒られている」と勘違いし、そこから会話が成り立たなくなってしまうのです。
認知症になるとどんな症状が出るの?認知症と食事との関係は?
次の症状がある場合、認知症の恐れも…
認知症とは、脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症の症状の例として以下のようなものがあります。
認知症のリスクを高める食事とは?
低栄養状態になると認知症の発症にも影響を及ぼすことがわかってきました。低栄養状態とは、栄養不足になり、だんだん痩せていくことです。低栄養になると老化のスピードを早めてしまうので、食事の偏りなく、いろいろなものを“しっかり食べる”ことが大切です[3]。
また、高血圧も認知症のリスクを高めるといわれています。高血圧の状態が長く続くと、動脈の血管が硬くなり脳の血管が詰まって脳梗塞になるリスクが高まります。高血圧の程度が強い場合、脳の血管が破れて脳出血になったり、脳の血管の一部分に動脈瘤ができ、破裂してくも膜下出血になったりすることも。これらの病気を脳血管障害(脳卒中)といい、その結果、認知機能の低下などの症状が現れるのです[4]。
認知症予防のための食事の4つのポイント
認知症予防につながる食事とは、認知症を引き起こす原因となる、種々の脳の病気を予防する食事を習慣化することです。以下は脳の病気を予防する食事のポイントです。
(1)減塩
日本人の食生活は食塩が多くなりやすい特徴があるので、全体的に薄味にすることを心がけましょう。調味料(しょうゆ・ソースなど)を食材に直接かける習慣がある方は、小皿に調味料を入れてから、食材につけて食べる方法や、スプレーボトルに調味料を入れ替えて使用する方法に変えるだけでも、食塩摂取量を少なくすることが可能です。また漬物を良く食べる習慣がある方は量を減らす、ラーメンなどの汁物を全部飲まずに残すなどの対処が減塩につながります。また、インスタント食品などの加工食品などには“目に見えない食塩”がたくさん含まれているので、よく利用する方は頻度を減らしましょう[5]。
(2)カリウムをとる
野菜や果物、大豆製品に豊富に含まれるカリウムには腎臓から食塩を排泄しやすくする働きがあります(腎臓の病気がある人はカリウム摂取の制限が必要な場合があるので、主治医と相談する必要があります)。日々の食事で野菜が不足しないよう気を付けましょう。具沢山のお味噌は減塩にもなり、野菜を加熱することでカサが減り、たっぷりと野菜を食べられるのでおすすめです。また豆腐、納豆などの大豆製品も取り入れましょう[5]。
認知症予防のための食事の4つのポイント、残りの2つはコチラから
遊びながらできる!「認知機能」を高める脳トレ3選
「展望記憶」課題で忘れない工夫をトレーニング
日常生活では、ものの置き場所や人の名前などを覚えておくのに、自分なりに忘れないための工夫をされると思います。でもあとになって思い出せないのは、工夫の仕方があまりよくなかったということになります。自分の記憶の特性を知り、うまい工夫の仕方を練習しようというのが、「展望記憶」の一番の目的です。「展望記憶」とは未来への記憶を意味します。
覚え方は、基本的にみなさんにお任せですが、やはり語呂合わせで覚えたり、関連したイメージを思い浮かべたりすると記憶に残りやすいでしょう。
「さがし算」課題でワーキングメモリを鍛える
こちらは「数える」系の問題です。
『医者が考案した 記憶力をぐんぐん鍛えるパズル コグトレ』(SBクリエイティブ)
ワーキングメモリは、別名「心のメモ帳」と呼ばれ、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを指します。
「さがし算」は、頭の中で暗算した数字を覚えておかないと解けない問題です。注意力・集中力と処理速度を上げる効果と、ワーキングメモリを広げるという効果が期待できます。
なお、簡単な課題を何回も繰り返し行うことを、教育学用語で「過剰学習」といいます。できる課題でも、何回も何回も繰り返し過剰に行うと、さらに次のステップにポンと上がれたりするものです。「数える」問題を徹底的にやるというのも十分価値があることなのです。
いかがでしたでしょうか?
誰にでも訪れる“老後”を元気に過ごすために、ぜひ、試してみてください。
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