2022.06.17
【よくわかる!糖尿病講座(6)】糖尿病の食事、糖質以外にも意識すべきことってあるの?
血糖値が高いと指摘され糖尿病と診断されると、日々の食生活で“糖質量”を意識するようになるかもしれません。しかし本当に“糖質量だけ”で良いのでしょうか?今日は糖尿病の方はもちろん、血糖値を意識する人に知ってもらいたい“糖質以外”で意識すべき食事のポイントと具体的な実践法をお伝えします。
糖尿病の食事で気をつけるべきことは、糖質以外にもある!という事実
糖尿病治療において血糖値を管理する目的は、血管を傷つけないようにすること。専門的な用語で表すと“動脈硬化を防ぎ合併症を予防すること”を目指します。動脈硬化のリスクとなるものは血糖値だけでなくさまざまな要因があるのです。どんな要因があり、どう対策すれば良いのか、特に大切になるポイントを2つご紹介いたします[1]。
各々順にお話しいたします。
(1)食塩の摂取量~食塩と動脈硬化の関係
個人差はありますが、食塩の摂取が血圧の上昇をもたらすことは明らかであり、この血圧の上昇が動脈硬化の要因となり得ます。また、食塩の摂取が多くなるにつれて胃がんのリスクが高まることも報告されています。こうした背景を踏まえて、高血圧や慢性腎臓病の方は重症化予防のため1日6g未満に減塩をすることが推奨されています。一方、病気のない人が目標とすべき摂取量は男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされていますが、近年の国民健康・栄養調査の結果では、どちらも目標値より平均2g程度上回っているのです。2gは濃口醤油で例えると小さじ2杯強程度。たった2g差がそんなに重要?と思うかもしれませんが、病気の治療及び予防の観点では非常に大きな意味をもつのです。
ここまで日本の現状についてお話ししましたが、せっかくなので世界の基準も見てみましょう。WHO(世界保健機構)の定める基準では、病気のない人でも1日に5g未満とすることが推奨されています。食塩の諸外国と比べて日本の目標値が高い理由は、実現可能であることを考慮したため。あくまで当面の目標として定められており、諸外国と同様に、更に厳格な目標値が定められる日が、来るかもしれません[2, 3]。
どの食材にどれくらいの食塩が含まれているの?
食品にどれくらいの塩分が含まれているのか?まずは目安量を見てみましょう。
味付けに塩および醤油などの食塩を含む調味料を多く使用すること、近年では外食や加工食品の増加が、主な塩分増加の要因となり得ます。そうは言っても、減塩すると美味しくないのでは…?そう考えるあなたへ、日々の生活のなかで、美味しさを保ちながらも無理なく減塩を行う方法をご紹介いたします。
減塩のためにできること
ハムやソーセージ、ベーコンや漬物など“しょっぱい味付け”の食品を食べる際は、薄切りにして量を調整することがおすすめです。麺類を食べる際は、残ったスープを飲まないだけでも、食塩量を大きく減らすことができます。日頃から野菜を食べる方は、ドレッシングを半量にすることも良いでしょう。減塩に加えて、野菜本来の旨味を楽しむことができます。
また、食事を手作りする場合は、食塩を含まない調味料を組み合わせることで、美味しく風味豊かな食事を作ることができます。たとえば、以下のような工夫ができます。
(2)脂質の質と量~脂質と動脈硬化の関係
脂質を構成する要素に“脂肪酸”というものがあり、分子構造の違いにより飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別できます。今回のキーワードとなる動脈硬化を防ぐために、特に着目したいのは飽和脂肪酸です。肉の脂身や乳製品などの動物性の食品や、インスタント食品に使用されるパーム油に多く含まれます。この飽和脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールを上昇させ動脈硬化を招くことが知られています。一方不飽和脂肪酸は、植物性の食品や魚に多く含まれており、分子構造の違いにより更に細かく分類することができます。飽和脂肪酸と異なり、動脈硬化を防ぐこと、血圧を下げるほか、悪玉コレステロールを減らす作用のあるものもあります。このように、同じ脂質であっても“どの脂肪酸を含んでいるか”により作用が異なるのです。脂質の量に加えて“質”も一緒に考えていくことが大切ですね[4, 5]。
飽和脂肪酸の摂取量を減らすためには
日々の生活でどんな工夫ができるのか、具体的な例をご紹介します。
ポイントは、ただお肉や乳製品を“断つ”のではなく、“置き換える”や“控える”を意識すること。無理なく実施できることから、取り組むことが大切です。
血糖値を管理する目的、 “動脈硬化”という視点も忘れずに
糖尿病の食事において糖質以外で意識したい、食塩及び飽和脂肪酸についてお話ししました。“糖尿病の食事”と題しているものの、“糖尿病のない方にとっても非常に大切な内容”です。健康を叶えるためには、短期的な努力でなく、毎日少しの工夫を取り入れ“継続”することが大切です。こうした日々の積み重ねこそが、今後のあなたの体を変えていくことでしょう。できることから一歩ずつ。身体も心も喜ぶ食習慣を、焦らず形にしていきましょう。
【参考文献】(すべて2022年4月23日閲覧)※外部サイトに遷移します
[2] 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)1―7 ミネラル
【プロフィール】料理教室Health Table 代表 土岡由季
13歳で発症した“1型糖尿病”を機に、幼い頃から食や健康についての学びを深め大学では生命科学を、大学院では食品化学を専攻。大学院修了後は製薬会社開発職に4年半勤務。糖尿病や肥満症をはじめ、数々の新薬開発に携わる。現在は [糖尿病でも大丈夫、大切な人と笑顔溢れる食卓を]をモットーに、血糖値管理のための正しい知識や実践法を“料理”を通じて伝えている。
血糖値や料理を題材にしたお役立ち記事が並ぶInstagramも人気。
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記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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