2022.06.06
アンケート企画:あなたの悩みに専門家が答えます(12):下の血圧だけが高い場合、食事・運動で気を付けることは?
私たちは、インターネットなどの多種多様なメディアからさまざまな健康情報を入手することができますが、それって確かな情報でしょうか?専門家に聞いてみたいお悩み、ありませんか?
本企画では、リンククロスシル編集部が、アンケートで募集した健康に関するお悩みについて、専門家に聞いてみました。
第12回目は、50歳代女性より下の血圧を改善する方法について、管理栄養士・ひらまつたまきさんに回答していただきました。
Q. 下の血圧だけが高い場合、食事・運動で気を付けることは?
回答
下の血圧だけが高いことが気がかりなのですね。まず、血圧について知っておきたい基礎知識から確認していきましょう。
血圧には上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)があります。上の血圧は心臓から全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力を示し、下の血圧は血液が心臓に戻ってくるときに血管にかかる圧力を示しています。よって、上の血圧が高いと動脈の柔軟性が、下の血圧が高いと心臓から遠い位置にある血管の柔軟性が低下している状態といえます。
下の血圧が高くなるのはどんな人?
下の血圧が高くなるのは、別の病気が原因になる場合もありますが、多くは動脈硬化によるものだと考えられています。また、肥満・運動不足・飲酒・喫煙などの生活習慣などの要因も疑われていますが、下の血圧だけが高くなる原因として確かなものは明らかにされていません。下の血圧だけが高い場合、心臓の遠くにある血管で柔軟性が低下しているといえます。今の状態を放っておくと、心臓に近い大きな動脈の柔軟性も徐々に損なわれていき、上の血圧も高くなる恐れがあるのです。
特に若年から中年の男性において、下の血圧だけが高い人が増えているとの報告があり、その年代層で内臓肥満の人が増えていることが関連しているのではないかと考えられています [1, 2]。
質問者様が内臓肥満を伴うかは判断できませんが、今回は下の血圧を上げる要因となる、内臓肥満を伴う場合にフォーカスし、食事と運動についてお話ししていきます。
食事で気を付けることは?
内臓肥満を伴う高血圧がある場合、食事で気を付けることにはさまざまなことがありますが、特に意識をしていただきたいのは次の3点です。
(1)減塩をする
血圧を上昇する因子としてまず思い浮かぶのは、食塩の摂りすぎではないでしょうか。事実多くの研究で食塩の過剰摂取と血圧上昇の関連性が報告されています。具体的な減塩方法についてはこちらの記事を参考にして下さいね[3]。
(減塩の方法についてはコチラ「あなたの悩みに専門家が答えます(9) 血圧の下の数字を下げるにはどうしたら良い?」
(2)肥満(特に内臓肥満)に気を付ける
内臓脂肪の蓄積を伴う場合、その改善も必要です。まず、食事では食べ過ぎ(カロリーオーバー)に注意しましょう。次に、内臓脂肪を貯めやすい食習慣をリストアップしましたので、ご自身の食習慣と照し合せてみて下さい[3]。
いずれも肥満と関連があると言われる食事のとり方です。上記のリストに当てはまるところから改善を図りましょう。
(3)アルコールの摂りすぎに注意する
「飲酒直後に血圧を測定すると下がっているから」と安心して飲まれる方もいらっしゃるのですが、飲酒によって血圧が低下するのは一時的な反応で、長期的なアルコール摂取は血圧を上昇する要因と言われていますので、飲みすぎには要注意です。日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2019』では男性で1日1合以下、女性で0.5合以下に制限することが勧められています[3, 4]。
運動はどれくらいするのが効果的?
運動、特にウォーキング・ジョギング・スイミング・サイクリングなどの有酸素運動は、血圧降下作用や、内臓脂肪減量の効果が期待できます。運動で気を付けるポイントは次の通りです。
強度は強すぎないようにすることが大切です。息が弾む程度、おしゃべりできる程度を目安にしてください。一度に長い時間できなくても、10分間のウォーキングを1日に複数回実施するなどでも同様の効果がありますよ[3,5]。
まずは第一歩、今より10分多く歩くことから
有酸素運動が有効だとわかっても、すぐに1日30分の運動を取り入れるのは難しい方も多いのではないでしょうか。まずは今より10分でも多く歩くことを心掛け、徐々に時間を増やしていけると良いですね。
【参考文献】(すべて2022年4月19日閲覧)※外部サイトに遷移します
[1] 厚生労働省: 令和元年国民健康・栄養調査報告|身体状況調査(P119~P123、P127)
[3] 日本高血圧学会: 高血圧治療ガイドライン2019|生活習慣の修正
[4] 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2020年版)|高血圧
[5] 厚生労働省: e-ヘルスネット /内臓脂肪減少のための運動
【プロフィール】管理栄養士 ひらまつたまき
大学卒業後管理栄養士を取得、スポーツチーム寮での食事管理を経験したことを機にスポーツ分野での知識を深める為スポーツトレーナーを志す。実業団チームへの帯同、整形外科クリニックでの指導経験を持ちながら、給食会社にて管理栄養士としてのスキルを身に付け、現在はその経験を活かし、労働者世代の健康を守る保健指導と、成長期のスポーツ選手に特化した個人サポートに尽力する。毎日の食卓でこっそり差をつける!きたえるごはん。の語り人として、きたえるごはん。講座を主宰している。
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