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2022.05.23

アンケート企画:あなたの悩みに専門家が答えます(10)食事や運動で血糖値が下がりません。どうしたら良い?


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私たちは、インターネットなどの多種多様なメディアからさまざまな健康情報を入手することができますが、それって確かな情報でしょうか?専門家に聞いてみたいお悩み、ありませんか?
本企画では、リンククロスシル編集部が、アンケートで募集した健康に関するお悩みについて、専門家に聞いてみました。
今回は、50歳代男性より血糖値を改善する生活習慣について、管理栄養士・金澤りなさんに回答していただきました。

Q. 基準値より高い血糖値を下げるには?

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回答

血糖値は健康な人でも食事をすると一時的に上がる数値です。しかし、HbA1cは日々の血糖値の平均を示しているため、血糖値とHbA1cのどちらも高いということは糖尿病と診断される可能性が高くなります。糖尿病は、遺伝的な要因に加えて、食生活や運動不足、喫煙・飲酒などの生活習慣そのものや、その結果として引き起こる肥満が原因になって発症してしまう病気のため、生活習慣の改善は治療の重要な鍵です[1]。

今回は、血糖値を改善するために生活習慣のなかでも特に意識してほしいポイントについて解説していきます。

なぜ高い血糖値を放置してはダメなの?

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糖尿病は軽度であれば自覚症状がほとんどないため、長い間放置されがちです。しかし、進行してしまうと動脈硬化が悪化し、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まります。さらに、網膜症、腎症、神経障害などの3大合併症を引き起こし、失明や透析、手や足の切断など、生活に多大な影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。自覚症状がないからと放置せず、症状がないうちにしっかり血糖値を改善していくことが大切です[2, 3]。

まずは体重を確認しよう

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ご質問のなかに「食事の改善やウォーキングをしたけれどあまり効果がなかった」とありますが、体重の変化はどうでしたでしょうか?もし、現状に肥満や過体重がある場合、血糖値の改善には肥満の解消がとても重要になります。しかし、体重を落とそうと無理なダイエットは禁物です。今の体重から1年間で5%減量することにより、血糖値が改善するとされる報告があります。1ヵ月に1〜2kg程度の減量を目標に無理のないダイエットをしましょう[4]。

ダイエットを成功させるコツとして、まずは体重を定期的に計測してみましょう。たとえ体重が増えてしまっても落ち込む必要はありません。それまでの生活を振り返り、増えてしまった原因を考えて、数日で体重が戻るように生活に意識を向けてみましょう。

しかし、せっかく体重を測るなら減っていた方がもちろん嬉しいですよね?体重を減らすには、やはり食事や運動は欠かせません。主食の量は大盛りにしないようにする、間食やアルコールを控えるなど食べ過ぎに注意しましょう。特に盲点になるのが飲み物です。ジュースやスポーツドリンクなどの甘い飲み物は体重増加につながるだけでなく、血糖のコントロールの悪化を招きますので水やお茶に変えることをおすすめします[4, 5]。

極度な糖質制限はNG!

糖質を抜くと痩せるという認識から、無理な糖質制限をしてしまう人が多くみられます。血糖値を気にされている人は特に、糖質は悪者という思いから制限している方が多いのではないでしょうか? しかし、極度な糖質制限は続かない人が多く、結果的にリバウンドしてしまう人も少なくありません。さらに、LDLコレステロールを増加させるという報告もされています。糖尿病は血糖値やHbA1cを指標に治療をしますが、最終的な目標は合併症や動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞を予防し健康に過ごすことにあるので、血糖値ばかりを気にして糖質を制限しすぎてしまうと本末転倒な結果になることもあるようです。

極端な糖質制限はせず、ご飯はお茶碗1杯程度(150g)を目安に主菜や副菜を取り入れた食事を意識しましょう[6, 7]。

食物繊維を意識して摂りましょう

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日本糖尿病学会が策定した「糖尿病診療ガイドライン2019」において、1日20g以上の食物繊維を摂取すると血糖値の改善が期待できると報告がされています。しかし、日本人の平均の食物繊維摂取量はそれに比べて少ない傾向があるため、今より積極的に摂るようにしましょう。食物繊維と言われると、野菜の摂取量を増やすことを考える方が多いと思いますが、実は主食の穀類からも多く摂ることができます。1日の主食を玄米や麦ご飯、全粒粉パンなどに変えるだけでも効率的に食物繊維が摂れるのでおすすめです。もちろん、豆類や野菜類、きのこ類、海藻類などにも多く含まれるので、これらの食材も積極的に取り入れるようにしましょう[8, 9]。

これからの人生を楽しく過ごすためにも

糖尿病の治療は食事や運動などの生活習慣の改善がもちろん大切ですが、体や病気の状態によっては、飲み薬やインスリン注射を使用して血糖をコントロールすることで、これからの人生をより充実させることができます。そのためにも、自己判断はせず、医師や管理栄養士と相談し、早いうちから的確な治療を行うことが重要です。将来を元気に過ごせるよう、自身にピッタリ合った改善方法が見つかることを願っています。

【参考文献】(すべて2022年5月4日閲覧)※外部サイトに遷移します

[1] 一般社団法人日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019|糖尿病治療診断の指針

[2]一般社団法人日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019|糖尿病治療の目標と方針

[3]厚生労働省:e-ヘルスネット|糖尿病

[4]一般社団法人日本糖尿病学会: 糖尿病診療ガイドライン2019 |食事療法

[5] 厚生労働省:e-ヘルスネット|嗜好飲料(アルコール飲料を除く)

[6] Nordamman AJ, et al: Effects of low-carbohydrate vs low-fat diets on weight loss randomized controlled trials. Arch Intern Med 2006; 166: 285-293

[7] 一般社団法人日本糖尿病学会:糖尿病食事療法のための食品交換表

[8] 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)

[9] 厚生労働省:e-ヘルスネット|食物繊維

【プロフィール】管理栄養士 金澤りな

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大学卒業後、保育園施設で調理、給食管理、食育活動などの栄養士業務の経験を経て、管理栄養士の資格を取得。現在は糖尿病のクリニック、栄養士養成学校、特定保健指導業務など管理栄養士としてパラレルに活動中。

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