2021.07.02
やめたくてもやめられない?たばこの健康被害と禁煙のコツ
平成29年国民健康・栄養調査によると、現在習慣的に喫煙している人の割合は17.7%で、そのうち約3割の人が禁煙したいと考えているそうです。
ここでは、たばこの健康被害と禁煙のコツについてご紹介します。喫煙が体に悪いことはすでにご存じのこととは思いますが、禁煙に関心がない方は、改めて喫煙について考える機会に、すぐにでも禁煙にチャレンジしたい方は、是非、禁煙方法の参考にしてください。
さまざまな病気の原因に!?
喫煙は高血圧、糖尿病、脂質異常と並び、動脈硬化のリスク因子です。また、糖や脂質の代謝異常を引き起こし、糖尿病やメタボリックシンドロームの発症リスクを高めることがわかっています[1]。
喫煙と高血圧
喫煙と高血圧は日本人の主要な死亡のリスク因子です。2007年の調査では、日本人の非感染性疾患と傷害による死亡のそれぞれ1位、2位にあげられています。
また、高血圧でたばこを吸う人は、いずれも該当しない人と比べて、脳卒中や心臓病による死亡リスクが約 4 倍高まることがわかっています[2]。
喫煙と糖尿病
喫煙は、交感神経を刺激して血糖値を上昇させるだけでなく、血糖値を下げる働きをもつインスリンというホルモンの作用が低下します。そのため、たばこを吸う人は糖尿病に約 1.4 倍かかりやすくなることがわかっています。
また、糖尿病でたばこを吸う人は、吸わない人と比べて、脳梗塞や心筋梗塞による死亡リスクが約1.5~3倍、高まることもわかっています[2]。
喫煙と脂質異常
喫煙は、血液中の善玉(HDL)コレステロールの減少、中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールの増加をもたらします。
また、たばこを吸う人で脂質異常があると、いずれも該当しない人と比べて、心筋梗塞で死亡する確率が約 4 倍、高くなることがわかっています[2]。
喫煙とメタボリックシンドローム
喫煙は、血液中の善玉(HDL)コレステロールの減少、中性脂肪や血糖値の増加をもたらすことから、メタボリックシンドロームになりやすいことがわかっています。
また、たばこを吸う人でメタボリックシンドロームの場合、いずれも該当しない人と比べて、脳梗塞や心筋梗塞に約 4~5 倍、かかりやすくなります[2]。
なお、これらの病気がない人でも、喫煙を続けていると肺がんなどのがん、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった、さまざまな病気にかかりやすくなることがわかっています[2]。
たばこでストレス解消?
日頃のイライラをたばこが解消してくれていると思っている方、いませんか?
ストレスを作っている犯人
たばこにはさまざまな有害物質が含まれますが、その代表格のひとつが「ニコチン」。日常的にたばこを吸っている方は、体内にニコチンがある状態を普通の状態であると脳が錯覚し、ニコチンが切れるとイライラしたり落ち着きがなくなったりします。
「たばこでストレス解消」と感じていても、実は、そのストレスは喫煙によって作り出されているのです。
ニコチンだけではない
日常的にたばこを吸っていると、吸える場所を探したり、残りの本数が気になったりと、たばこのことでいつも頭が一杯になりがちです。
そんな日常に慣れてしまっているかもしれませんが、たばこの心配をせずに1日を過ごすことを想像してみましょう。それだけでストレス解消になるような気がしませんか?
まずはやってみよう!
たばこをやめたいと思っていても、なかなか実行に移せない方は多いのではないでしょうか?
実際に、何の心構えもなく今日から禁煙を始めようとするのは難しいものです。最低1~2週間は禁煙準備期間を設け、実行に移しましょう。
準備1:禁煙開始日を設定しましょう
まずは、いつから禁煙を始めるか、具体的に禁煙開始日を決めましょう。以下の条件を少なくとも一つ満たす日がおすすめです。
禁煙開始日を決めたら、カレンダーに記入したり禁煙宣言書を目につくところに貼ったりすると、禁煙開始への意欲が高まります[3, 4]。
準備2:禁煙する理由を確認しましょう
禁煙したいと思う理由を3つ選んで書き出しましょう。自身や家族の健康のため、節約のためなど、なんでもよいです。自分がなぜ禁煙したいのか理由を明確化し書き出すことで、禁煙開始後に辛くなったときでも初心に戻ることができ、禁煙について考え直すことができます[3, 4]。
準備3:吸いたい気持ちの対処法を練習しましょう
「たばこを吸いたい!」と思ったときにどのように対処するとよいか事前に考えておくことで、禁煙開始後に吸いたい気持ちをコントロールしやすくなります。
これまでの喫煙習慣を思い出し、たばこを吸いたくなる場面を書き出してみてください。そのときにたばこを吸うことに代わる3~5分程度の行動や、たばこの代わりになるものを事前に考えておくと良いでしょう。
たとえば、食後にたばこを吸う代わりに歯を磨く、お酒を飲むときに吸いたくなる人は、飲酒を控える、またはたばこの代わりに水を用意しておく、など自分に合う方法を考えてみましょう。
禁煙開始前7日間は、吸いたい気持ちがでてきたら、ご自分で書き出した対処法を実施し効果を確かめてみてくださいね[4]。
実行:禁煙を実行しましょう
準備が整ったら、ご自身で設定した禁煙開始日から禁煙を始めましょう!
禁煙を始めると、3日後をピークに禁煙の離脱症状(禁断症状)が出ます。これは、ニコチンが切れることで起こる症状で、個人差はありますが、ほとんどの症状は2~3週間で落ち着いてきます。
これらの離脱症状については、深呼吸をする、水やお茶を飲む、軽い運動をする、などの対処法があります。離脱症状はずっと続くものではないので、いつか終わるものと考えて上手に対処していきましょう。吸いたい気持ちになったときは、準備期間に練習しておいた対処法を実施することを忘れないでくださいね。
また、禁煙を始めると、「なんで禁煙を初めてしまったのだろう」「禁煙しても何もよいことがない」などと否定的な考えになることがあります。そんなときは、一旦深呼吸をして、禁煙を始めてよかったことを書き出してみましょう。
実際、禁煙をすると、開始20分後から血圧や脈拍が正常に戻ったり、手足の血のめぐりがよくなったりするなど体に嬉しい変化が現れます。また、食事が美味しく感じたり、運動中の息切れが軽減したりするなどの効果は禁煙して数日後から得られますし、かぜやインフルエンザなどの感染症へかかりにくくなります。さらに長く禁煙を続けることで、喫煙による病気のリスクが非喫煙者並みに低下することもわかっています。
このほかにも、禁煙には日常生活で実感できるさまざまな効果があります。それらを探すことで「禁煙が楽しい!」と思えるようになると、楽に継続できるようになります[3-6]。
最近では、禁煙をサポートしてくれるスマートフォンのアプリがあるので、活用してみるのも良いかもしれません。禁煙の継続時間やたばこ代で節約できたお金などを「見える化」してくれたり、禁煙のアドバイスをもらえたりするなど、さまざまなアプリがあるので、ご自身が楽しく利用できるものを試してみてくださいね。
医療の力を借りてみよう
自身で禁煙にチャレンジしてみたものの、なかなかやめられない、という方は医療の力を借りてみる、という選択肢もあります。
医療機関での禁煙治療や禁煙補助薬を利用すると、自力で行うより比較的楽に、しかも自力に比べて成功しやすいことがわかっています。
検査、カウンセリング、禁煙補助剤の処方などといった禁煙治療は、1日の喫煙本数×喫煙年数の数値が200以上であることなど、いくつかの条件はあるものの、一部の医療機関で保険が適用されています。保険適用の条件にあわない場合は自費診療でも受診ができますので、選択肢の一つとして、検討してみてくださいね。
禁煙治療に保険が使える医療機関については、日本禁煙学会のホームページで検索できるので参考にしてください[2]。
日本禁煙学会のホームページはコチラ (2021年6月29日閲覧) ※外部サイトに遷移します。
禁煙するのに遅すぎることはありません
長年の喫煙習慣がある方は、「今さら禁煙しても」と思いがち。しかし、性別・年齢・喫煙による病気の有無にかかわらず、禁煙は健康改善をもたらすことがわかっています。
また、たばこは吸っている本人に留まらず、吸わない方が煙を吸うことによっても大きな健康被害をもたらします。わが国では、受動喫煙により、脳卒中、虚血性心疾患、肺がんなどで年間約1万5千人が死亡していると推計されています[2]。
ご自身のためだけではなく、ご家族や職場の人など大切な方のためにも禁煙してみませんか?
【参考文献】(すべて2021年6月29日閲覧)
[1]門脇 孝, 津下一代 編: 第三期 特定健診・特定保健指導ガイド, 2018, 南山堂, p.201-207
[2]厚生労働省 健康局: 標準的な健診・保健指導 プログラム 【平成 30 年度版】 ※外部サイトに遷移します
[3]公益財団法人 健康・体力づくり事業財団ホームページ「段階的禁煙指導」 ※外部サイトに遷移します
[4]厚生労働省: e-ヘルスネット「禁煙の準備 – 禁煙7日前から行う、禁煙のコツを教えます!《準備編》」 ※外部サイトに遷移します
[5]厚生労働省: e-ヘルスネット「禁煙開始からまだ間もない方へ《実行期編》」 ※外部サイトに遷移します
[6]厚生労働省: e-ヘルスネット「禁煙の効果」 ※外部サイトに遷移します
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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