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2020.03.13

肩こりは「もんでも治らない」という驚きの真実│ストレッチや筋トレが逆効果になることも


つらい肩こりや腰痛の原因は患部にはありません(写真:xiangtao / PIXTA)

つらい肩こりや腰痛の原因は患部にはありません(写真:xiangtao / PIXTA)

肩が凝る。腰痛がつらい。
そんなとき、どんなケアをしていますか?
「とりあえず肩や腰をストレッチする」「マッサージに行く」「筋力不足が原因と聞いたので、筋トレをしている」という人も多いでしょう。
しかし、コリや痛みの本当の原因を知らずにケアをしても、思うような効果は期待できません。そもそもなぜ肩こりや痛みが発生するのか、どうすればよくなるのか――。『やってはいけないセルフケア 肩こりは肩をもんでも治りません』の著者である理学療法士の財前知典氏が解説します。

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本当の原因は「肩」や「腰」ではない!

肩こりや腰痛の代表的なセルフケアとして「ストレッチ」があります。

ストレッチとは筋肉をゆっくり伸ばすことによって、関節の可動域を広げたりする運動のことです。

例えば、肩こりだから背筋を伸ばすストレッチ、腰痛だから前屈をして腰を伸ばすストレッチなどがあります。

ストレッチをした直後はほぐれたような気がしますが、もし伸ばしてはいけない筋肉をストレッチしてしまうと、時間とともにどんどん筋肉が固くなり、動きが悪くなってしまいます。その結果、かえってコリや痛みを悪化させてしまうこともあるのです。

実はコリや痛みの本当の原因は、肩や腰といった患部にはありません。体に「サボっている場所」と「頑張っている場所」があるからです。

患部に直接アプローチするようなセルフケアで肩こりや腰痛が改善しないのはそのためです。

コリや痛みが発生する本当の原因は、会社を例えに説明するとわかりやすいでしょう。

ある会社に、仕事を頑張っている部署Aと、サボっている部署Bがあるとします。会社全体の業績を上げるために、部署Bの分まで頑張ってきた部署Aでしたが、しだいに無理がたたり、部署Aの人たちがどんどん倒れてしまいました。

一方、部署Bの社員たちは相変わらずサボったまま。そのため会社全体の業績はどんどん悪化していき、気づいたときには甚大な経営不振に陥っていました。

体に頑張っている部分とサボっている部分があると、これと同じことが起こります。ある場所(部署B)の動きや筋肉、関節がサボっているせいで別の場所(部署A)の筋肉や関節が過剰に頑張る必要が生じ、結果として頑張っている場所にコリや痛みが発生します。そして、それらが現れやすいのが肩だったり、腰だったりするわけです。

「サボっている」とは、本来持っていた働きや力が下がっている状態と考えていただくとよいでしょう。

なぜサボっている部分ができるのかというと、人間の体がつねに動きやすいほう、動きやすいやり方を合理的に選択しているからです。

コリや痛みを解消するベストな方法は、サボっている部分をちゃんと働かせるようにするだけでいいのです。

筋トレは疲弊した社員に鞭打つようなもの

床にものが落ちたときの体の動きをイメージしてみましょう。

本来かがむ動作は股関節、ひざなどを連動させて行うのがいちばん自然で体に負担がない動きです。

ですが、股関節やひざがサボっていたら、腰だけで頑張ってかがまなければなりません。そうやって無理を続けた結果、積もり積もって腰痛になったりします。

腰痛の治療で「背筋を鍛えましょう」などと指導されることがあるかもしれません。

しかし、背中や腰の筋肉を鍛えるために背筋運動などの筋力トレーニングを行うことは、ただでさえ過労で社員が倒れそうになっている部署に「もっと頑張って働け!」と言っているのと一緒です。

頑張っている場所とサボっている場所は、姿勢や座り方といった日常的な体の動かし方のクセによって生まれます。

ただし、少しわかりにくいのが「動かしていない=サボっている」わけではないということです。

デスクワークをしているときの姿勢を思い出してください。

座りっぱなしでモニターの画面を覗きこみながら仕事をしているとき、つねに頭には重力によって前方に倒れる力が加わっています。

このとき、首や背中は動いていませんが、僧帽筋などの筋肉は頭がこれ以上前に倒れてしまわないように、ずっと頑張って頭を支えています。

このように「頑張っている=動かしている」わけではないことが、根本的な原因をさらにわかりにくくしています。

頑張っているかどうかは意外と気がつきにくいし、同様にサボっているかどうかも気がつきにくいのです。

「肋骨」回りの筋肉がサボると腰痛やひざ痛に

日常的に、肋骨の動きを意識することはほとんどないかもしれませんが、肋骨には体の胴体部分を支える筋が多く付着していますし、関節が多いので想像以上に私たちの一つひとつの動作に関連しています。

肋骨がサボってしまうことで、体のあちこちに影響が出ます。

例えばものを持ち上げるときには腰が頑張らなければなりません。

重たい頭を支えるために、肩回りの筋肉が頑張り肩こりになりやすくなります。
後ろを向く動作では、首を頑張らせて振り向かなくてはならないので、首を痛めがちになるでしょう。

さらに立ち上がる動作やしゃがむ動作では、ひざが頑張らなければならず、負担が大きくなって痛みが出てくるだけでなく、症状が進行すると変形も生じてきます。

こういった関係性が体にはいくつもあります。また環境によって肋骨部分が動きにくくなることもあります。例えば、ソファのようなふわふわした座面の椅子に座ると骨盤が後方に倒れ、猫背になります。すると、肋骨にロックがかかったような状態になるので、そこから上体を動かそうとすると可動域が狭まります。そしてそれが日常化すると、肋骨部分がサボってしまうのです。

本来「ものを持ち上げる」「振り返る」「立ち上がる」「しゃがむ」といった日常の何気ない動作でも、体全体が連動し、それぞれの部位がそれぞれの役割を果たすことで1カ所に負担をかけることなく、体を動かすことができるのです。

頑張っている部署が頑張らなくてもよくなれば、倒れた社員も元気になってまた職場復帰できます。

同じように私たちの体も、サボっているところを働かせれば、頑張りすぎている部分の緊張が緩み、コリや痛みは減っていきます。

コリや痛みをほぐすために、マッサージに通う人もいるでしょう。マッサージは皮膚をさすったりもんだりすることで血流をよくし、筋肉を緩める働きがあります。

しかし、筋肉をマッサージする方向によっては効果が得られないこともあるのです。
その人にとって緩めてはいけない筋肉をマッサージによって緩めてしまうと、より筋肉を緊張させてしまい、首や肩、腰の痛みがさらに強くなることもあります。

緩めてはいけない筋肉は、家にとって支柱のようなものです。支柱とは文字通り家を支えている柱です。

同じように体の支柱となる筋肉が緩んでいたら、体を支えるバランスが悪くなり、安定感が損なわれます。そこで体を安定させるために、ほかの部分の筋肉が頑張らなくてはならず、またコリや痛みが起こります。

ちなみに、「マッサージは痛ければ痛いほど効いている」というのも誤解です。痛みを感じるほど強い力でマッサージされると、筋肉がよけい緊張したり、筋や筋膜を痛めたりして炎症を起こすこともあります。これがいわゆる「もみ返し」です。

体はもともと歪んでいるし左右差もある

「体の歪みがコリや痛みの原因になる」と考える患者さんも多くいます。

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たしかに体の歪みはコリや痛みの原因になりますが、私は「さほど気にすることではありませんよ」と説明しています。

なぜなら、歪みよりも体の動かし方のクセのほうが、体に与える影響が大きいからです。

そもそも生まれたときから、誰にでも多かれ少なかれ体に歪みが出ています。また、心臓は左側に1つだけ、肝臓は右側に1つだけと、人間の体自体が左右対称ではありません。完全に歪みのない体を目指してもそれは不可能ですし、目指す必要もないのです。

「歪みがある!」と言われると、私たちはなぜか責められているような気がして正しい位置に戻さなければと思ってしまいます。

しかしコリや痛みを改善するなら、歪みそのものを治そうとするよりも、繰り返しになりますがサボっている部分を働かせるようにするほうが早いし確実です。

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提供元:肩こりは「もんでも治らない」という驚きの真実│東洋経済オンライン

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