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2019.01.17

「たばこ休憩」を不公平と思う人に欠けた視点|法律や働き方改革の面から考察してみた


喫煙やたばこ休憩を推奨する意図ではありませんが、「たばこ休憩=仕事をしていない」という社会通念に対し、法的観点や昨今の働き方改革などを踏まえ中立的な立場で考察します(写真:takapon/PIXTA)

喫煙やたばこ休憩を推奨する意図ではありませんが、「たばこ休憩=仕事をしていない」という社会通念に対し、法的観点や昨今の働き方改革などを踏まえ中立的な立場で考察します(写真:takapon/PIXTA)

労務管理の現場において、たばこ休憩をする社員としない社員の不公平感が話題になることは少なくありません。また、下記のように、頻繁にたばこ休憩をする社員が懲戒処分を受けたという事例もあります。

大阪府は喫煙のため勤務時間中に職場を繰り返し抜け出したとして、健康医療部の男性職員(49)を職務専念義務違反で訓告処分としたと明らかにした。2016(平成28)年4月からの2年間で、計約440回、100時間以上に上った。(2018年6月5日付 産経新聞)

職務専念義務は、国家公務員法第101条および地方公務員法第35条に定められた公務員の義務で、公務員は勤務時間には注意力のすべてを職務の遂行のために用いなければならないとされています。

たばこ休憩=仕事していない?

民間企業においては、労働基準法などに職務専念義務は定められていませんが、職務専念義務は雇用契約に付随する社員の義務であると法的には考えられています。

公務員や民間企業社員に職務専念義務があることは大前提として間違いありません。しかし、昼休みなど会社が定めた休み時間以外に「たばこ休憩」をとることは、本当に職務専念義務違反なのでしょうか。そして、そもそも勤務時間中にたばこを吸うことは例外なく「休憩」なのでしょうか?

本稿は、喫煙や、たばこ休憩を推奨する意図ではありませんが、「たばこ休憩=仕事をしていない」という社会通念に対し、法的観点や昨今の働き方改革を踏まえ中立的な立場で考察を加えてみたいと思います。

まず、「職務専念義務」に対する解釈ですが、これを厳密に解釈すると、「業務時間中の私的行為は一切許されない」ということになります。しかし、少なからずの職場で、デスクにコーヒーやジュースを置いてそれを飲みながら仕事をしたり、小腹がすいたときにお菓子を口にしたりすることは許されているのではないかと思います。むしろ福利厚生としてお菓子や飲み物を提供している職場もあります。

パイロットや鉄道運転士など、一瞬の不注意が乗客の命に関わる職務は別に考えなければなりませんが、一般的なオフィスワークの職場においては、コーヒーやお菓子が黙認されるなど、「職務専念義務」は実務上、多少の「ゆとり」を持って運用されているというのが実情です。

このように「ゆとり」という考え方を前提としてあるがゆえ、コーヒーを飲む社員が職務専念義務違反として懲戒処分を受けたという話は聞いたことがありません。しかし、なぜ、たばこを吸う社員だけが目の敵にされ、問題視されるのでしょうか。

デスクにいる=仕事している?

この点、たばこ休憩が目の敵にされる理由は、「自席を離れて喫煙スペースに行く」からではないかと考えられます。コーヒーは自分のデスクで飲むから許され、たばこは喫煙スペースに行くから許せない、というのが多くの人の判断基準になっているのではないかと思います。

ここで冷静に考えていただきたいのは、「自分のデスクにいれば、イコール仕事をしているのか」ということです。自席に座っていてもコーヒーを飲みながら頭の中はボケーっとしているかもしれません。逆に、自席を離れて喫煙スペースに行っていても、たばこを吸いながら企画のアイデアを整理しているならば仕事をしているといえます。

一見、たばこ休憩が多く見えても、与えられた仕事をしっかりこなし、成果を出しているならば、雇用契約上の義務は果たしていると考えられ、職務専念義務違反にはならないのではないでしょうか。

もし、成果以前の問題として、社員に業務時間中は整然とデスクに向かうことを求めるのであれば、就業規則で「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」と定めれば、たばこ休憩であろうが、コーヒーをいれに行くことであろうが、就業規則違反で懲戒処分の対象とすることは可能です。

接客業や製造業など、お客様への対応や、工場全体の生産ラインを効率的に動かさなければならないという合理的な理由がある職種では、「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」という就業規則は意味があります。

しかし、たとえばスマートフォンのゲームを開発する会社において、全員が整然とデスクに向かうことと、良いゲームが開発されることには、合理的な関連性があると考えることは難しいでしょう。コーヒーを飲むのもたばこを吸うのも本人の判断に任せ、休憩の回数で人事評価を決めるのではなく、アウトプットの量や質で評価したほうが、伸び伸びと働くことができ、良い製品が生まれてくるのではないでしょうか。

「残業をたくさんしている人が頑張っている」という考え方が正しくないということはすでに多くの人が気づいていますが、それと同様「机に座っていれば仕事をしている」という考え方もつねに正しいとは限りません。机に座って1通のメールを打つのに何十分も時間をかけている社員よりも、たばこを吸いながらでもスマホ片手にテキパキとメールを返信している社員のほうが、仕事ができる社員であると評価することもできます。

自席でたばこを吸っていた時代

さて、数十年前に時代をさかのぼりますと、当時はオフィスの自席でたばこを吸うことが許容されていた時代でした。社員のデスクには灰皿が置かれ、コーヒーを飲みながら仕事をする感覚で、たばこを吸いながら仕事をすることに何の問題もありませんでした。

それが分煙化や健康志向の流れから、オフィス内での喫煙が禁止され、喫煙所が設置されたり、屋外の喫煙スペースにたばこを吸いに行かなければならない時代になったわけです。もちろん、受動喫煙などは望ましくないことですから、オフィスの分煙化が進んだことは社員の健康管理の観点からも非常に良いことです。

しかし、このように過去の時代からの流れで見ていくと、喫煙者が非喫煙者の健康や環境に配慮して、それまで許されていたオフィス内での喫煙をやめて、喫煙所や屋外で吸うというルールを受け入れたという歴史があるわけですから、自席を離れてたばこを吸いに行くことは、単なるサボりではなく、もう少しおおらかに受け止めても良いのかもしれません。

さらに言えば、現在は、喫煙か非喫煙かという局地戦でなく、働き方全体の多様化が進んでいる時代です。フレックスタイム制、裁量労働制、2019年4月から新たに加わる高度プロフェッショナル制度など、社員側に自由な働き方を認める制度だけでもさまざまなものがあります。

各制度によって特徴に差はありますが、大きくいえば、始業時刻や終業時刻、1日の労働時間を社員本人の判断に委ね、自由な働き方を認めると同時に、労働時間ではなく成果によって社員を評価するという考え方に基づいた制度です。

とするならば、少なくとも上記のような制度が適用されている社員に関しては、1日何時間働くかとか、どのように仕事をするのかが法的に社員に委ねられているにもかかわらず、単にたばこ休憩が多いことで評価を下げたり、ましてや懲戒処分をしたりするということは、適用されている制度の趣旨とも矛盾が生じてしまうということになります。

アウトプットで判断する

ダラダラとたばこ休憩をしていることが成果に結び付いていないのであれば、「たばこばっかり吸ってサボっているから仕事ができてないんだよ!」と頭ごなしに叱責するよりも「裁量労働制だから仕事のやり方は任せているけど、もっと効率的に仕事をしないと、評価はどんどん下がるよ。たとえば、たばこ休憩とかも多すぎるんじゃないかな」と、アウトプットの少なさを指摘し、改善を促すほうが本人も本質的な問題点に気がつくのではないでしょうか。

逆に、一見たばこ休憩が多いように見えても、たとえば、55分間驚異的に集中して、5分間たばこを吸って気分転換し、また55分仕事をするというのが本人にとって最適のリズムで、会社が求める以上の成果を出してくれているならば何の問題もないはずです。

このように、たばこ休憩自体は、必ずしも法的な意味で「休憩」とは言えないことと、たばこ休憩の多さとその人のアウトプットの質が比例するわけでもありません。

一律にたばこ休憩を目の敵にしたり禁止したりするのではなく、業種や職種に応じて合理的な基準を設定したり、アウトプットに注目したりすることで、喫煙者にとっても非喫煙者にとっても働きやすく、公平な職場環境が構築されるはずです。

たばこ休憩に焦点を当てましたが、最後に総括的なことを申し上げれば、必ずしも「机に向かっている=仕事をしている」ではありません。アウトプットで評価をする仕組みや社風を構築し、その人の生活環境や嗜好に合った多様な働き方を認めていくことで、多様な人材を引きつけ、そこから新しいビジネスやイノベーションが生まれることにもつながっていくのではないでしょうか。

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提供元:「たばこ休憩」を不公平と思う人に欠けた視点|東洋経済オンライン

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