2024.01.08
【医師監修】糖尿病と高血圧の関係~メカニズムと対策をわかりやすく解説~
糖尿病と高血圧は合併しやすい病気です。
さらに糖尿病と高血圧はどちらも動脈硬化を進行させる原因なので、合併すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がってしまいます。
とはいえ、なぜ糖尿病と高血圧が合併しやすいのかわからない方が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、糖尿病と高血圧の関係についてお伝えいたします。メカニズムや対策についても説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。
*当記事は、医療法人社団 稲垣内科 院長 稲垣早織先生に監修をいただきました。 ※外部サイトに遷移します
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糖尿病の方が高血圧を合併しやすい理由
糖尿病の方が高血圧を合併しやすい主な理由は、
・循環血しょう量が多いこと
・インスリン抵抗性があること
が挙げられます。
なお循環血しょう量とは、血液中の液体成分のことです。ちなみに赤血球や白血球などは血球と呼ばれ、液体成分とは血球以外のことを指します。
インスリン抵抗性とは、体に対してインスリンの作用が低下する状態です。
では糖尿病の方が高血圧を合併しやすい主な理由を、詳しく説明いたしましょう。
循環血しょう量が多いと血圧は上がる
血圧とは、心臓から全身の各組織に血液を送り出す血管(動脈)の圧のことです。循環血しょう量が多いと、心臓の筋肉が強く収縮する必要があるため血圧が高くなるのです。
循環血しょう量が多くなる原因は、高血糖やインスリン抵抗性、腎機能の低下にあると考えられます。
高血糖とは、血液中に大量のブドウ糖がある状態です。すると、大量のブドウ糖で濃くなった血液を薄めようと、水分が流れ込みます。その結果、循環血しょう量が増えて血圧が上がるのです。
また、インスリンの作用が低下すると血糖値が上がり、血糖値を下げるためさらにインスリンが分泌されます。
血液中のインスリンが増えると高インスリン血症になり、腎臓でのナトリウム(塩分)の再吸収が増加し血液中のナトリウムが増えます。そしてナトリウム濃度の増えた血液を薄めるために、血液中の水分を増やし血圧の上昇につながるのです。
さらに糖尿病の影響で腎機能が低下すると、ナトリウムの排出量が減り血液中のナトリウム濃度が増えます。
つまり糖尿病では循環血しょう量が増加しやすいことが、高血圧を引き起こす一因と考えられます。
インスリン抵抗性の影響
インスリン抵抗性があると交感神経が優位になるため、体が興奮状態に導かれます。そして興奮状態の体は血管が強く収縮し、血圧は上昇します。
そのためインスリン抵抗性は高血圧の原因となるのです。
なお、2型糖尿病の方の中には肥満の方も多くいらっしゃいます。肥満も交感神経を優位にする可能性があるため、高血圧を引き起こす原因の1つといえます。
というのも、肥満の方は食事の摂り過ぎによって血糖値が急上昇することが多いからです。血糖値が急上昇すると血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌され、交感神経が優位になることもあるのです。
糖尿病と高血圧の合併で起こるリスク
糖尿病と高血圧を合併すると、動脈硬化が進行しやすくなります。
というのも糖尿病と高血圧症は、どちらも動脈硬化を進行させる原因だからです。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
動脈硬化とは
動脈硬化とは、心臓から全身へ血液を送る血管(動脈)が傷つき、血管壁が分厚くなることです。動脈硬化が進行すると血管はつまりやすく、破れやすい状態になります。
とくに、心臓や脳の血管に影響が起きやすいです。心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞を、脳の血管を詰まらせると脳梗塞を引き起こします。
動脈硬化の怖いところは、自覚症状がない状態で進行することです。あるとき急に心臓や脳へ流れる血流が途絶え、突然倒れてしまうリスクの高い状態が動脈硬化なのです。
参考記事:糖尿病は心筋梗塞・脳梗塞に要注意〜リスクと予防のポイントをシンプルに解説〜 ※外部サイトに遷移します
糖尿病だと動脈が硬くなるの?
糖尿病の方の動脈の壁は硬くなりやすいといえます。
なぜなら高血糖状態の濃い血液は、血管の壁を傷つけやすいからです。傷ついた血管壁は分厚く硬くなるため、しなやかさを失い弾力が少なくなります。
なぜ高血圧が動脈硬化のリスクとなるのか
高血圧は、血管に強い圧力がかかり血管壁が常にダメージを受けている状態だからです。
ダメージを受けた血管壁は悪玉コレステロールが入り込みやすくなり、プラークというコブができます。プラークができた部分の血管は硬く狭くなり動脈硬化が進行した状態です。
やがて破れたプラークは血栓となり、血管を詰まらせる原因となるのです。
糖尿病と高血圧症の合併を予防するには
糖尿病と高血圧症を合併させないためには、血糖値と合わせて血圧も安定させることが大切です。
そのためには、
といった生活習慣を整えるとよいでしょう。
食事面でのポイント
適切な食事量とは、適切なエネルギー量の食事のことです。適切なエネルギー量は、年齢や性別、身長、体重、活動量によってひとりひとり異なります。
さらに、適正なエネルギー量の中で糖質・脂質・たんぱく質をバランスよく摂ることも大切です。糖尿病だからといって極端に糖質量を減らすのではなく、適量摂るよう意識してくださいね。
また日本では高血圧予防の観点から糖尿病のあるなしにかかわらず、1日の食塩摂取量を男性では7.5g以下、女性では6.5g以下を目標としています。
お酒は医師の許可があれば、適量飲んでも大丈夫です。
なお摂取エネルギー量や飲酒は、あなたの健康状態に合わせて決める必要があります。必ず主治医に相談してくださいね。
参考記事:糖尿病でも塩分制限は必要?~塩分の摂取目安量や控える方法も解説~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:糖尿病とアルコールの付き合い方~適量や飲み過ぎ対策を紹介~ ※外部サイトに遷移します
その他の生活習慣
喫煙は2型糖尿病や高血圧、動脈硬化のリスクを上げるので、禁煙するのがベストです。
また、運動習慣は血糖値や血圧を安定させる効果があります。長期的な運動には、動脈硬化の進行を防ぐ効果も。そこで、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にできるとよいですね。
なおストレスのような気持ちの不安定さも、高血圧にはよくありません。なるべくリラックスして過ごせるよう、ストレスを和らげていきましょう。
そして医師が必要と判断した場合には、血圧を下げるお薬を内服することも大切です。生活習慣を整えることはとても大切ですが、処方された薬を飲むことも大事な習慣といえます。
参考記事:高血圧を予防する生活習慣とは~5つのポイントを各分野の専門家が解説~ ※外部サイトに遷移します
糖尿病の方における血圧の基準値
糖尿病の方は、
になると高血圧症の治療が必要となる場合もあります。
健康な方が高血圧症と判断される基準値は
なので糖尿病の方は、健康な方と比べて血圧を低く保つ必要があるとわかります。家庭でもこまめに血圧を測り、不安を感じることがあれば担当医に相談してくださいね。
まとめ
糖尿病の方は、循環血しょう量が多いことやインスリン抵抗性があることから高血圧になりやすいです。
そして、糖尿病と高血圧を合併すると動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクがとても高い状態となります。
糖尿病の方が高血圧にならないためには、血糖値だけでなく血圧も安定させることが大切です。そのためには、食事をはじめとした生活習慣を整えていく必要があります。
それでは当記事が参考となり、あなたが生活習慣を見直すきっかけになるとうれしいです。
監修医師:医療法人社団 稲垣内科 院長 稲垣早織先生
医療法人社団 稲垣内科 ※外部サイトに遷移します
【ご略歴】 2009年帝京大学医学部卒業。広島大学内分泌・糖尿病内科へ入局後、広島赤十字・原爆病院 内分泌・糖尿病内科などにて勤務後、2022年4月より稲垣内科の院長を務める
【資格】 日本内科学会 認定内科医、日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
参考文献 ※外部サイトに遷移します
中山書店 看護のための最新医学講座第8巻 糖尿病と合併症
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:【医師監修】糖尿病と高血圧の関係~メカニズムと対策をわかりやすく解説~|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】