2023.09.17
【医師監修】隠れ糖尿病ってなに?~診断基準や気になる症状についても解説~
「私ってもしかして隠れ糖尿病なのかな?」
親族に糖尿病の方がいらっしゃる場合や食生活の乱れが原因で、不安に感じたことのある方もいらっしゃるでしょう。
ところが、実際に隠れ糖尿病とはどのような状態なのか、わからない方も多いですよね。
そこで今回は隠れ糖尿病についてわかりやすくお伝えいたします。診断基準や症状についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
*当記事は、中部ろうさい病院 糖尿病・内分泌内科部長 栄養管理部部長兼任の中島英太郎先生に監修をいただきました。中島先生による解説動画はこちらです。
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隠れ糖尿病とは
隠れ糖尿病とは健康診断などの血液検査では診断されず、糖尿病や糖尿病予備群なのに見逃されている状態をいいます(隠れ糖尿病は正式な医学用語ではありません)。
通常の健康診断では、空腹時血糖値を測定することがほとんどです。
しかし空腹時血糖値が正常でも、食後の血糖値だけ大幅に上昇する方も多いのです。これを食後高血糖や血糖値スパイクと呼びます。
食後高血糖は普通に生活していると気付かないことがほとんどです。そのため食後高血糖の状態は、空腹時血糖値が高くなり糖尿病を疑われるまで続き、糖尿病と診断される頃には症状が進行しているケースが多いです。
参考記事:食後に注意!血糖値スパイクとは?原因と予防を初心者でもわかるよう解説 ※外部サイトに遷移します
食後高血糖が体によくない理由
食後高血糖が頻発している人は糖尿病になりやすい方といえます。さらに、血糖値の乱高下を長年繰り返すと血管が傷つき、動脈硬化を進行させます。
誰でも食事をしたあとは血糖値が上昇するものです。そして健康な方であればすぐにインスリンが分泌されるので、緩やかに血糖値が上昇したのち、すみやかに正常値に戻ります。
ところが、隠れ糖尿病の方はインスリンの分泌反応が十分でなかったり働きが悪かったりするため、食後に血糖値が急上昇しなかなか正常値に戻らず、血糖が高い状態が続きます。
血糖値の高い状態が続くと血管にダメージを与え、動脈硬化が進行するので、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めるのです。
糖尿病の診断基準
一般的に糖尿病の診断は、血糖値とHbA1c(※)を用います。
(※)過去1~2ヶ月の血糖値の平均をあらわす値
(※)75gのブドウ糖を含んだサイダーのようなものを飲み、30分・1時間・2時間後に血糖値を測定する試験
※空腹時血糖値・ブドウ糖負荷試験2時間後血糖値・随時血糖値のいずれかが糖尿病型かつ、典型的な糖尿病の症状、もしくは確実な糖尿病網膜症がある場合は1回の検査で糖尿病と診断されます。
参考記事:糖尿病とはどんな病気?症状・原因・治療などをわかりやすく解説 ※外部サイトに遷移します
隠れ糖尿病を見つける方法
食後高血糖の有無が隠れ糖尿病を見つける判断材料の一つとなります。
なお、75g経口ブドウ糖負荷試験の結果、2時間後血糖値が140mg/dl以上であれば食後高血糖です。空腹時血糖値が正常値でも食後の血糖値が高い場合、隠れ糖尿病かもしれない、と判断されます。
隠れ糖尿病に初期症状はあるの?
隠れ糖尿病に限らず、糖尿病は初期症状を感じにくい病気です。糖尿病の発症初期は、食後高血糖のみが検査異常としてあらわれます。つまり、隠れ糖尿病は糖尿病の初期症状といってもよいでしょう。
自覚症状はどうか
よく耳にする
といった糖尿病の自覚症状を感じるころには、糖尿病がかなり進行している可能性が高いです。つまり隠れ糖尿病の場合、自覚症状はないことがほとんどでしょう。
ただし食後高血糖の場合、眠気や反応性の低血糖、頭痛などの症状を感じる可能性があります。
これらのサインを見逃さず早めに医療機関を受診し、食後高血糖だとわかれば生活習慣の見直しで糖尿病の進行を防げるかもしれません。
なお、食後高血糖は日々の食事の食べ方や運動を取り入れることで予防・改善できます。
また、日ごろから自分にとって適量のカロリー・糖質を摂ることも大切ですが、毎日ヘルシーで糖質も控えめなレシピを考えるのは大変です。
そこで、中部ろうさい病院の「糖尿病バイキング教室」で実際に提供したレシピが掲載されている「いつでもおいしく食べたい 健康レシピ」もよかったら参考にしてみてください。
「いつでもおいしく食べたい 健康レシピ」 ※外部サイトに遷移します
参考記事:糖尿病の前兆とは〜サインを把握し早めに対応を〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:糖尿病に運動が良いのはなぜ?~効果や方法を知って血糖値を改善しよう~ ※外部サイトに遷移します
痩せている人でも隠れ糖尿病の可能性あり
糖尿病の方は肥満体型のイメージがあるかもしれませんが、瘦せ型の人でも糖尿病になりえます。とくにアジア人は、体質的に痩せ型の糖尿病患者さんが多いのです。
たしかに、肥満は糖尿病発症リスクを高める原因の1つです。しかし、糖尿病は肥満だけでなく、体質に加えて糖質の摂りすぎや飲酒、喫煙、運動不足、ストレスなども原因となります。
つまり、体型に関係なく誰でも糖尿病や隠れ糖尿病になる可能性をもっているのです。
まとめ
隠れ糖尿病とは、通常の健康診断などでは診断できなかったため糖尿病や糖尿病予備群だと気付いていない状態のこと、とわかりました。
75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、2時間後血糖値が140mg/dl以上であれば食後高血糖といい、隠れ糖尿病の可能性があります(200mg/dl以上なら糖尿病と診断されます)。
糖尿病の方に自覚症状が出るのはかなり進行してから、といわれています。しかし食後高血糖に気付き、早期に予防・改善すれば糖尿病の進行を妨げるかもしれません。
それでは、当記事があなたの健康を手助けできるとうれしいです。
監修医師 独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 ・糖尿病内分泌内科 部長 中島英太郎先生
【ご略歴】 名古屋大学医学部卒業後、ミシガン大学 内分泌・代謝内科 Visiting Scholar、名古屋大学 糖尿病・内分泌内科 准教授を経て、2008年より、中部労災病院 糖尿病センター・糖尿病内分泌内科 部長を務める。2014年からは、中部労災病院 治療就労両立支援センター両立支援部 部長、栄養管理部 部長、名古屋大学 糖尿病・内分泌内科 臨床准教授を兼任。
【資格】 日本内科学会 認定内科医、内科指導医 、日本糖尿病学会 糖尿病研修指導医、 日本動脈硬化学会 指導医、 日本臨床栄養代謝学会 認定医、 日本医師会 認定産業医
独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 ※外部サイトに遷移します
【参考文献】※外部サイトに遷移します
J-STAGE 糖尿病と運動 食後血糖に及ぼす様々な身体活動の影響
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:【医師監修】隠れ糖尿病ってなに?~診断基準や気になる症状についても解説~|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】