2023.08.06
【医師監修】糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介
「うちの家庭は子供中心のメニューだから、糖尿病の食事って言われてもなかなかできないのよ」
糖尿病の治療で取り入れられる「食事療法」。
食事療法は、糖質やたんぱく質などの栄養バランスを調整するものです。血糖値の乱高下を防いで血糖コントロールを良好にし、合併症を予防するため基本の治療として行われます。
しかし「自分はどんなものを食べたら良いのかわからない…」という方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、糖尿病に良い食べ物について紹介いたします。
食材選びから一言アドバイス・レシピまで、料理に役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
*当記事は、中部ろうさい病院 糖尿病・内分泌内科部長 栄養管理部部長兼任の中島英太郎先生に監修をいただきました。 ※外部サイトに遷移します
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糖尿病に良い食べ物とは
糖尿病は、インスリン(※)が充分に働かず血液中のブドウ糖が増え続けることにより、血糖値が高い状態が慢性的に続く病気です。
(※)血糖値を下げるホルモン
高血糖が続くと自覚症状なく糖尿病は進行し、神経障害・網膜症・腎症といった重篤な合併症を招くリスクが上がります。
そのため、糖尿病では血糖値を下げることが重要です。
つまり、糖尿病に良い食べ物とは「血糖値を下げるように働きかける食べ物」といえるでしょう。血糖値の上昇を緩やかにし、血糖値を安定に導く成分を含む食べ物に着目するとよいのです。
参考記事:その痛みは糖尿病性神経障害の可能性 ~治療から予防までわかりやすく解説~ ※外部サイトに遷移します
糖尿病に良い食材
では具体的にどのような食材が糖尿病の方のの食事を応援してくれるのか、見ていきましょう。
お米は玄米や胚芽米を
さまざまなお米の中でおすすめは、玄米や胚芽米です。
玄米や胚芽米は白米と比べて、GI値が低く食物繊維が多いです。GI値は血糖値の上がりやすさを数値化したもので、玄米や胚芽米は白米と比較して血糖値が上がりにくいといわれています。
さらに食物繊維は血糖値の急上昇を防ぐため、玄米や胚芽米は糖尿病の方の食事に向いているとわかります。
なお玄米の炊飯は手間のかかるイメージですが、浸水不要で炊飯器でかんたんに炊ける商品も販売されているようです。毎食でなくてもたまに白米を玄米や胚芽米に置き換えると、糖尿病によい食事になるでしょう。
参考記事:玄米は糖尿病にいい?~血糖値の上がり方をもち麦や雑穀米と比較~ ※外部サイトに遷移します
お肉は豚肉を取り入れよう
糖尿病患者さんには、ビタミンB1が含まれている豚肉の活用をおすすめいたします。ビタミンB1は糖の代謝にかかわる栄養素です。
糖の代謝とは、食事から摂った糖質が分解され、血液中でブドウ糖となってエネルギーとして利用される仕組みのことです。
ビタミンB1をたくさん摂ったからといって、血糖値の上昇が抑制されるわけではありません。しかし、スムーズな糖代謝のためにビタミンB1を過不足なく摂るとよいでしょう。
ちなみにビタミンB1は、ヒレ肉やモモ肉の赤身といった脂身の少ない部分に含まれます。
魚で糖尿病のリスク低減
ある研究によると、男性において魚の摂取が多いほど糖尿病の発症リスクが低下する傾向にありました。ただし、女性においては魚の摂取量と糖尿病の発症リスクに関連はみられなかったため、現時点ではっきりとしたことはいえません。
また、海外ではEPAの摂取で血糖値の改善がみられたという研究結果もあります。EPAはアジやさんま、イワシなどの青魚に多く含まれる脂質です。
大豆製品では高野豆腐を
原料に豆腐が使われている、高野豆腐がおすすめです。
高野豆腐には私たちの腸内では消化できないたんぱく質である、レジスタントプロテインが含まれます。
レジスタントプロテインは食物繊維に似た働きをもつ栄養素です。糖質の吸収を緩やかにし血糖値の急上昇を防ぐため、糖尿病の合併症を発症させるリスクを減らします。
ご飯のような糖質の多い食品を食べる前に高野豆腐を食べると、血糖値の上昇を緩やかにしてくれるでしょう。
参考記事:高野豆腐って健康に良いの?~栄養素をダイエットの視点からも解説します~ ※外部サイトに遷移します
きのこ類も積極的に食べよう
きのこは全般的に食物繊維が豊富です。
くり返しになりますが、食物繊維は食後の血糖上昇を抑える働きがあります。さらに、血中コレステロールの上昇を防ぎ、動脈硬化の進行を抑えます。高血糖は動脈硬化の進行をはやめる要因の1つなので、食物繊維をたくさん摂り少しでも進行を遅くしましょう。
きのこは味噌汁に入れたり、さっと茹でてサラダに加えたり、色々な料理に活用できます。毎日の食事に、ぜひ取り入れてみてください。
参考記事:きのこの栄養成分で健康をサポート~必見のダイエット効果や食べ方も大公開~ ※外部サイトに遷移します
野菜はどうなの?
野菜はきのこと同様、食物繊維が豊富です。緩やかな血糖値の上昇が期待されますので、ぜひ日々の食事に取り入れてくださいね。
調味料などの食品について
調味料には、糖質が多いものと少ないものがあります。
【糖質の多い調味料】
甘みのある調味料や小麦粉が使われているカレールウは糖質が多いので、一度にたくさん使うと当然血糖値は上がります。
とくにトマトケチャップは1回の使用量が多くなりがちな調味料です。使いすぎないように注意が必要です。
【糖質の少ない調味料】
もちろん糖質の少ない調味料もありますので、上手に使いわけましょう。
なお、酢には食後の血糖値上昇を抑える働きが期待されています。糖質が多めの餃子やシュウマイを食べるときは、タレではなくお酢と一緒に食べるとよいですね。
参考記事:お酢にダイエット効果があるってホント?~飲み方やタイミングも解説~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:マヨネーズのカロリーは高いが糖質は低い〜健康に良いかを含めてポイント解説〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:食後に注意!血糖値スパイクとは?原因と予防を初心者でもわかるよう解説 ※外部サイトに遷移します
実際の食事メニューを紹介
それでは、糖尿病に良い食材を使ったメニューをご紹介します。
家庭食の代表格・カレー
家族みんなで楽しめるカレー。今回は材料に高野豆腐やきのこを使用し、ドライカレーにしました。
糖質の多い市販のカレールーの使用量を控え、トマトジュースでまろやかさを出しています。
【ご飯の準備】
白米1合に胚芽米0.5合の割合で、炊飯する。
【作り方】
(1)高野豆腐は柔らかくなるまで熱湯に浸し、冷めたら高野豆腐を手で押すようにして水気を絞り、みじん切りにする
(2)玉ねぎ・にんじん・きのこはみじん切りにする
(3)半量のオリーブオイルを入れた鍋を火にかけ、しょうがと豚ひき肉を色が変わるまで炒めて取り出す
(4)鍋に残りのオリーブオイルを入れて玉ねぎを炒め、透きとおったらにんじん・きのこを加える
(5)豚ひき肉を戻しカレー粉を入れて軽く混ぜたら、カレールー以外の調味料を加え、煮たったら弱火で煮込む
(6)水分が半分ほどになったらカレールーを入れ、全体に味がなじめばできあがり
【一人分の栄養価】
正しい知識をもとにあなたに合う食生活に変えていくためには、さまざまなレシピを参考に実践するのがよいでしょう。
そこでおすすめしたい書籍が、中部ろうさい病院オリジナルの「いつでもおいしく食べたい 健康レシピ」です。
中部ろうさい病院の糖尿病専門医と管理栄養士が糖尿病と食事の関係について解説しながら、バランスよく自分に合った量を食べられる病院レシピを多数紹介しています。
「おいしい!」と評判のレシピばかりですので、ぜひ覗いてみてくださいね。
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まとめ
糖尿病に良い食材とは、血糖値が下がるように働きかけてくれる食べ物ということがわかりましたね。
玄米や胚芽米、豚肉や青魚、まいたけ、緑黄色野菜、高野豆腐には、腸内での糖の吸収を抑えたり、インスリンの働きを応援したりと、糖尿病に良い効果をもたらす効果が期待できます。
血糖値の急上昇を抑えて合併症を予防するために、絶極的に取り入れていただきたい食材です。
なお、調味料には糖質の多いものと少ないものがあります。糖質の多い調味料は使用量を控えるようにしましょう。
以上、「糖尿病に良い食べ物」についてご紹介しました。
食事療法は続けることが大切です。今回の内容を、日々の食事に役立てていただけると幸いです。
監修医師:独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 ・糖尿病内分泌内科 部長 中島英太郎先生
【ご略歴】 名古屋大学医学部卒業後、ミシガン大学 内分泌・代謝内科 Visiting Scholar、名古屋大学 糖尿病・内分泌内科 准教授を経て、2008年より、中部労災病院 糖尿病センター・糖尿病内分泌内科 部長を務める。2014年からは、中部労災病院 治療就労両立支援センター両立支援部 部長、栄養管理部 部長、名古屋大学 糖尿病・内分泌内科 臨床准教授を兼任。
【資格】 日本内科学会 認定内科医、内科指導医 、日本糖尿病学会 糖尿病研修指導医、 日本動脈硬化学会 指導医、 日本臨床栄養代謝学会 認定医、 日本医師会 認定産業医
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女子栄養大学出版部 七訂食品成分表2016 香川芳子監修
国立研究開発法人 国立がん研究センター 魚介類摂取と糖尿病の関連について
J-STAGE
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:【医師監修】糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】