2023.07.31
腸内環境を整えて糖尿病を予防しよう!~腸内細菌が血糖値に与える影響を解説~
当記事を監修した専門家:管理栄養士 松原知香 、編集長 森下りの(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください) ※外部サイトに遷移します
巷では、腸活ブームなどからその重要性が再認識されている「腸内環境」。
「腸は最大の免疫機関」といわれるほど重要な役割を持ち、それは糖尿病の方にも当てはまります。なぜなら、糖尿病の改善や予防に腸内環境が関わっていると、世界各国の研究で明らかになったからです。
そこで今回は、腸内環境の改善が糖尿病とどのように関わっているのか、最新の研究結果から紐解いていきます。
また、腸内環境を整えたいときに役立つ食べものや、気になるおならの話もご紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
腸内環境と糖尿病を結びつけるカギは「短鎖脂肪酸」
腸内環境と糖尿病、一見するとつながりのない2つを結びつけるのは短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は、食物繊維を分解した際に作られる副産物で、分解する時に必要なのが善玉菌です。
そもそも腸内環境が整っているとは、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌の割合が多い状態を指し、短鎖脂肪酸が作りやすい環境だといえます。
短鎖脂肪酸には脂肪の蓄積を抑えたり、満腹中枢を刺激するホルモンの分泌に関わり食欲を抑える働きがあります。つまり、短鎖脂肪酸を作りやすい腸内細菌の人は肥満になりにくいのです。
一方、善玉菌が減少して悪玉菌が増加すると腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が乱れます。短鎖脂肪酸が作られにくい環境となるので、脂肪が蓄積されやすく食欲をコントロールするホルモンの分泌も減り、肥満になりやすいのです。
現在、肥満は糖尿病を引き起こす一因と考えられています。
なぜ肥満は糖尿病になりやすいのか
腸内環境の乱れによって肥満になると、インスリンの効きが悪くなります。そのため血糖値の下がりにくい状態が続き、糖尿病になってしまうのです。
私たちの体は食べ物をたべ、血糖値が上がると、インスリンが分泌されて血糖値が元の値まで下がります。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
ところが、肥満になるとインスリンの効きが悪い「インスリン抵抗性」がうまれるため、インスリンが十分に分泌されず、高血糖状態が続いてしまうのです。
肥満の解消は、インスリン抵抗性の改善につながるため、血糖コントロールも良好になります。つまり、腸内環境を整えて肥満を予防すると、ひいては糖尿病の予防にもつながるのです。
炎症反応が糖尿病の一因になることも
海外では肥満以外にも、腸内環境の悪化による炎症反応が糖尿病に関わっているという研究結果が発表されています。
善玉菌から作られる短鎖脂肪酸には先ほどご紹介した働きの他に、炎症を抑えたり腸管バリアを維持して細菌の侵入を防ぐ役割もあります。
そのため、腸内環境が乱れて善玉菌が減り、短鎖脂肪酸の量も減ると腸管バリアが弱くなって細菌が侵入しやすくなり、体全体に軽い炎症反応がおこるのです。
炎症反応が筋肉や肝臓に及ぶとインスリンの効きが悪く、血糖値も下がりにくくなってしまいます。
このように、肥満かどうかを抜きにしても、腸内環境の改善が糖尿病の予防につながるのです。
糖尿病につながる腸内細菌はあるのか
糖尿病の発症につながる腸内細菌を特定する研究が進んでおり、中国やヨーロッパなど複数の国から発表されています。
それらを比較すると、糖尿病の方の腸内に多く存在する細菌は国によって異なるとわかりました。そのため、人種や年齢によってどの腸内細菌が糖尿病のリスク因子になっているのか、情報を集めて分析することが必要とされています。
日本人の糖尿病に有効な腸内細菌とは
日本においても、糖尿病のリスク要因となる腸内細菌を特定する研究が進められています。しかし、すべてを解明するにはいたっていません。
現時点でわかっていることは、糖尿病や肥満の改善が期待できる腸内細菌(※)と腸内で有効活用できる代謝産物についてです。
(※)報告書には「腸内細菌X」とあり、特定名までは記載がない
もともと、日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が低いため糖尿病になりやすいとわかっています。そのため、この研究の成果は糖尿病に悩む日本人にとって非常に有益なものといえるでしょう。
これまでは、研究機関ごとなど小規模のものが大半でした。現在は国が先頭に立ち糖尿病につながる腸内細菌の特定や、それを活用した新しい治療方法について研究が進められているので、今後の発表に期待が膨らみますね。
ヨーグルトは糖尿病の人にもオススメできるのか
腸内環境を整える食べ物として多くの方が思いつくヨーグルト。もちろん糖尿病の方にもオススメです。
ただし、オススメできるのは砂糖や甘味料の入っていない、無糖ヨーグルトに限ります。なぜなら、食べやすく加工されたヨーグルトには、砂糖や人工甘味料が含まれているからです。
どうしても甘みが欲しい場合は、ラカントなどの天然甘味料を使うとよいですよ。
参考記事:糖尿病の方におすすめなヨーグルトの食べ方~上手に食べれば効果的~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:人工甘味料は血糖値を上げないって本当?~デメリットも解説~ ※外部サイトに遷移します
腸が喜ぶ食べものをご紹介
腸内環境を整えるために役立つ食べものの特徴は、その働きから大きく分けて2つあります。
(1)は乳酸菌などの善玉菌が含まれている食べものです。食品中で生きている善玉菌が、そのまま腸まで生きて届くわけではありませんが、それでも十分効果は期待できますよ。
(2)は腸内に存在する善玉菌のエサとなる食物繊維が豊富に含まれています。とくに、もち麦には水溶性食物繊維のβ-グルカンが含まれており、食後の血糖上昇を緩やかにしてくれます。
1つ注意したいのは、これらの食品を一度食べたからといって、腸内環境がすぐ改善するわけではありません。食べものによる腸内環境の改善は時間がかかるため、これらの食品を日常的に食べ続けることが大切です。
いつもの汁物にわかめやきのこを加えたり、ごはんのおかずにキムチをつけたりするなど、ちょい足しするのがよいですよ。
【おまけ】糖尿病になるとおならが臭くなるってホント?
糖尿病の方に多くみられる腸内細菌によって、おならが臭くなることがあるようです。
おならの正体は腸内細菌が食べものを分解する際に出るガスですが、腸内環境が乱れて悪玉菌が増えていると、臭いおならになります。一方で、善玉菌によって出されるガスはさほどにおいません。
中国の研究では、糖尿病の方に多くみられる腸内細菌として、悪玉菌であるクロストリジウム属の細菌をあげています。
糖尿病になると必ずおならが臭くなるわけではありませんが、臭いと感じた時は腸内環境が乱れているサインと思いましょう。
まとめ
腸内環境の乱れは肥満、さらに血糖コントロール不良が続いて糖尿病につながる可能性があります。
また、海外の研究から腸内環境を整えることで、インスリン抵抗性の改善に役立つとわかりました。
日本でも、国をあげて糖尿病と腸内環境の研究が行われているので、今後さらに新たな発見があるかもしれませんね。
腸内環境を整える食べものについても、普段の食事に無理のない範囲で取り入れてみてはいかがでしょうか。
それでは、当記事の情報があなたの健康に役立つことを願っています。
【参考文献】※外部サイトに遷移します
坊内良太郎,小川佳宏,「肥満・糖尿病と腸内細菌」,日本内科学会誌,2015,104巻,1号,p.57‐65
厚生労働省 糖尿病個別化予防を加速する マイクロバイオーム解析AIの開発
京都大学 腸内細菌による宿主のエネルギー恒常性維持機構の解明-短鎖脂肪酸受容体GPR43活性化は脂肪の蓄積を抑制し肥満を防ぐ
監修:編集長 森下りの
名古屋大学医学部保健学科看護学専攻卒業。在学中はヘルスケア領域の知識や経験ををグローバルな視点で深めるために、リーズ大学(イギリス)への長期留学や、エリザベス病院(タンザニア )でのインターンシップなどを経験。卒業後は、看護師として疾患知識やコニュニケーション力を培う。医療業界のIT化遅れへの危機感や、疾病予防には個人の主体的な行動が不可欠と感じ、H2株式会社に入社し、マーケティングと広報を担当。 看護師、保健師、メンタル心理カウンセラーの資格を保有。
執筆者:管理栄養士 松原知香
宮城学院女子大学食品栄養学科卒業。幼少期、入院中に絶食を経験し食べて健康に過ごす大切さを感じて管理栄養士を目指す。卒業後は食品メーカーにて介護食の営業に従事。病院や老人ホームの管理栄養士をはじめ医師、看護師、薬剤師への商品紹介や研修会を通して、業務上での悩み解決や患者様・利用者様のQOL(生活の質)向上に尽力。情報にあふれた現代で「誤った情報に惑わされずに、日々の食事を楽しめる人を増やしたい」という思いからH2株式会社に入社。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:腸内環境を整えて糖尿病を予防しよう!~腸内細菌が血糖値に与える影響を解説~|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】