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2021.02.12

「実は深く眠れていない人」が日中感じるサイン|深い眠りを実現するために日常的にできること


ぐっすり眠れていないと感じたら、3つのステップでできる「深睡眠ストレッチ」で「眠る力」を取り戻そう(写真:Ushico/PIXTA)

ぐっすり眠れていないと感じたら、3つのステップでできる「深睡眠ストレッチ」で「眠る力」を取り戻そう(写真:Ushico/PIXTA)

うまく寝付けない、夜中に何度も目が覚める、朝起きたときしゃっきりしない……。あなたはそんな眠りの悩みを抱えていないだろうか?

私が編集長を務める雑誌『ハルメク』は、読者層がシニア世代ということもあり、睡眠の悩みをもつ方が多い。一般的に「眠る力」は加齢によって落ちていくと言われているうえに、コロナ禍でのストレスを受けやすい世代だからだ。

そこで『ハルメク』では、日本睡眠学会専門医である白濱龍太郎氏の監修のもと、良質な睡眠を得るための習慣について特集した。カギは「深い眠り=深睡眠」を手に入れるための生活習慣とストレッチ。コロナ禍の今こそ、シニア世代に限らず幅広い方々に試していただきたく、そのポイントを解説する。

ぐっすり眠るために大切なのは「長さ」よりも「深さ」

はじめに、あなたが深く眠れているかどうかチェックしてみよう。以下の中に当てはまる項目が1つでもある人は、ぐっすり眠れていない可能性が高い。

・昼食後に必ず眠くなる

・寝ても取れない疲れを感じる

・電車などの座席に座ると、居眠りしてしまう

・運転中、信号待ちなどで、ふっと眠気に襲われることが多い

・コーヒーを飲んだりガムをかんだりしていないと頭や体をしゃきっと保てない

・日中、よくイライラする

「男女を問わず、年齢とともに睡眠はだんだん不安定になっていきます」と解説するのは、これまで1万人以上を治療してきた睡眠の専門医、白濱龍太郎氏。

「例えば、眠りを深く持続させるホルモン、メラトニンの働きがピークを迎えるのは10代。その後は年齢とともに分泌量が減ってしまい、60代ともなれば、特別な理由がなくても、眠りが浅くなったり、途中で何度も目が覚めたりするようになります」。加齢によって自律神経のバランスが崩れてしまうことや閉経後の女性に多い睡眠時無呼吸症候群などもぐっすり眠れなくなる要因だという。

こうした加齢による影響に加えて、「現代型の生活習慣も、深い眠りを妨げている」と白濱氏。とくにスマホの影響は侮れないと指摘する。

「眠る前にスマホの強い光に触れると、体内時計が乱れて睡眠の質が下がる恐れがあります。また寝る前にスマホで新しい情報を見ることが、自律神経の交感神経を刺激し、眠れないきっかけを作る可能性もあるのです」

ちょっと天気予報を見るつもりでも、スマホを開けばさまざまな情報が目に飛び込んでくるもの。その結果、交感神経が優位になり、脳が緊張モードのままになってしまうのだ。

あなたのスマホとの付き合い方は、ぐっすり眠ることを妨げていないだろうか? 一度、見直してみよう。

そのほか、朝は決まった時間に起きて、日光を浴び、一時間以内に朝食をとることも大切。これによって体内時計が整い、質のよい眠りにつながる。朝食にはメラトニンの分泌を促す栄養素「トリプトファン」が含まれるみそ汁がお勧めだ。

また昼間はなるべく体を動かし、昼寝をするなら13時頃に15分ほどに。人間が昼間、最も眠たくなるのは14時から15時なので、昼寝はそこを避け、座ったまま寝るなどして眠りすぎを防ごう。

深い睡眠を取ることは認知症予防にもなる

そもそも「ぐっすり眠れる」とは、どのような状態を言うのだろうか。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2つがあり、そのうちレム睡眠は浅い睡眠。体は休息しているが脳は覚醒に近い状態にある。一方ノンレム睡眠は深い睡眠。脳と体の両方が休息している状態だ。

「ノンレム睡眠は、眠りの深さによって3つのステージに分かれ、いちばん眠りが深く、脳がリラックスしている状態が、ステージ3の『深睡眠』です。ぐっすり眠れるというのは、この深睡眠がよくとれている状態といえます」と白濱氏。深睡眠の間には、体の機能を修復させたり、免疫力を高めたりする成長ホルモンが最も盛んに分泌されるため、深睡眠をしっかり取ることで、疲れが取れ、病気になりにくい体になるという。

「アルツハイマー病の原因となるアミロイドβタンパク質は、深睡眠の間に最も排泄が進むことがわかっています。アルツハイマー病の予防のためにも、ぐっすり眠ることが大切なのです」。しっかり睡眠を取ることで、高血圧や心疾患、脳卒中などのリスクを減らせる研究結果もあるという。

では、ぐっすり眠るためにどうすればいいのだろうか。白濱氏は「眠りに入って4時間以内に、深睡眠を2回以上取れるかがカギ」と話す。実は、深睡眠が訪れるのは眠りの前半のみ。つまり長く眠るよりも、最初の4時間にいかに深く眠るかが重要なのだ。

「深く眠るには『深部体温』を意識しましょう。深部体温とは内臓など体の内部の体温で、私たちの体には深部体温が下がると眠くなるという性質があります。そのため就寝時刻に向けて、入浴などで意識的に深部体温を上げ、スムーズに下げていくことが大切です。同時に、自律神経のうち交感神経の働きを少しずつ鎮め、リラックスして副交感神経を優位にすることもとても重要です」

眠りの質が上がる!1日3分「深睡眠ストレッチ」

ここまでで解説したように、「ぐっすり眠る=眠りの前半に深睡眠をしっかり取る」ためには、「深部体温」と「自律神経」を整えることが重要。しかし、「加齢によって自律神経の機能は弱まり、深部体温のリズムが乱れがちになります」と白濱氏。

本来、深部体温は夕方にピークを迎えると、徐々に下がり始め、眠りに入ると急激に下がるようになっている。また、自律神経は夕方から夜になるにつれ、だんだん副交感神経が優位になり、自然と眠りやすい状態になる。ところが、年齢とともに深部体温の高低差や自律神経の切り替えができなくなり、深く眠れなくなる人が増えるのだ。

そこで実践してほしいのが、3つのステップでできる「深睡眠ストレッチ」。意識的に深部体温を上げ下げし、副交感神経を働かせることで、深い眠りに入りやすくなる。今日からさっそく実践してみよう。

【入浴時】

「1分間首もみストレッチ」で深部体温を効率よく上げよう

(1)シャワーを首の後ろに当てて、首の筋肉と血管を温める

シャワーを固定して、ほんの少しだけ熱めのお湯を首の後ろに当てる。血管が集まっている首を温めることで、効率的に深部体温が上がる。

(2)首の後ろのくぼみに親指を当て、手を上下にゆっくり動かす

シャワーを当てたまま指を組んで親指を首の後ろのくぼみに当てる。手を上下に動かして首のコリを解消することで、血行が促され、深部体温が上がりやすくなる。

【布団に入る直前】

「1分間腕回しストレッチ」でさらに深部体温を上げよう(1~4を1分間に5〜6回、ゆっくりと行う)

(1)腕を上げ、脇を開いてひじを上げる

手を軽く握って腕を曲げ、脇を開きながら、ゆっくりとひじを肩の高さくらいまで上げる。

(2)腕を後ろに大きくゆっくり回す

腕をそのまま後ろに向かって大きくゆっくりぐるりと回す。左右の肩甲骨を寄せるようなイメージで。

(3)手を組んで、腕を前に伸ばす

(2)で回したひじが体の前に来たら、両手を組み、手のひらを前に向けて腕を前にまっすぐ伸ばす。

(4)組んだ手を頭の上にぐっと伸ばす

腕を頭の上に持っていき、ぐっと伸ばして2秒ぐらいキープし腕を下ろす。肩甲骨や腕の周りに多く存在する褐色脂肪細胞をストレッチで刺激することで深部体温が上がる。

睡眠と呼吸の「深い関係」

【布団の中で】

最後に「1分間足首曲げ深呼吸」で副交感神経を優位にし、深部体温を下げよう(1〜2を1分間続ける)

(1)鼻からゆっくり息を吸い、足首を体側に曲げる

仰向けに寝て、3秒位かけて鼻からゆっくり大きく息を吸い込みながら、足首を手前にぐっと曲げる。足首を手前に曲げると、自然とふくらはぎに力が入り、コリがほぐれて血行がよくなる。

(2)口からゆっくり息を吐き、足の力を抜く

口をすぼめ、3秒から5秒かけて口からゆっくりと息を吐き切り、足首を元の位置まで戻す。ふくらはぎの力を抜くイメージで足をだらんとさせ、元の場所に戻そう。足の血行をよくすることで深部体温が下がりやすくなり、眠気を誘う。

呼吸は睡眠と深く関係している。鼻からしっかりと息を吸って、口からしっかりと息を吐き出す、深くてゆっくりとした腹式呼吸は、副交感神経に強く働きかけ、脳と体をリラックスさせる。

最後に出てきた「1分間足首曲げ深呼吸」は、呼吸をコントロールすることで、副交換神経を働かせリラックスした状態を作る方法。「習慣化することで、心地よい眠りにつきやすくなるはずです」と白濱氏。眠りに悩みのある方は、今夜から実践してみてはいかがだろうか。

【監修】

RESM新横浜
睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長
白濱龍太郎(しらはま りゅうたろう)/2002年、筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院総合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、13年にクリニックを開設。日本睡眠学会専門医。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム刊)をはじめ著書多数。

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提供元:「実は深く眠れていない人」が日中感じるサイン|東洋経済オンライン

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