2020.08.26
ギネス記録、葛西紀明「いい姿勢は、こう作る」|40代も「2つのトレーニング」で改善できる!
スキージャンプのレジェンド・葛西紀明選手による、「疲れない体」を手に入れるための、「姿勢をよくする」メソッドを紹介します(撮影:尾形文繁)
スキージャンプW杯個人最多出場回数(569回)で「ギネス世界記録」を更新した葛西紀明選手。41歳で自己最高の「個人銀メダル」を獲得し、史上最多の計8回の冬季五輪に出場、48歳の今なお現役選手として活躍する葛西選手は「レジェンド」と称され、国内にとどまらず海外でも尊敬を集めている。
その葛西選手が38年間「企業秘密」にしてきた「疲れない体」と「折れない心」のつくり方を余すことなく1冊にまとめた『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』には何が書かれているのか。本書籍の内容を再編集しながら、最新のインタビューも交えて、その極意を紹介していく。
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テレワークは「疲れる姿勢」を招く!?
現在もテレワークを推奨している企業は少なくないようですが、在宅ワークによって姿勢が悪くなり、首や肩、腰の痛みなど、体調不良に悩まされる人が増えていると聞きます。
同僚や上司など他人の目から解放されつい気が緩んでしまうことや、床に座って長時間仕事をせざるをえないといった自宅環境などが原因のようです。
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オリンピック以降、講演会に呼ばれることが増えましたが、「葛西さんは背筋がピンとしていて、姿勢がすごくいいですよね」とよく言われますが、実際にスキージャンプの選手は、ほかのスポーツ選手と比べても姿勢のいい人が多い気がします。
皆さんもご存じのように、スキージャンプはストックを使わずスキー板のみで行う競技です。そのため、助走体勢から着地までの動作を、自分の体だけでバランスをとらなければなりません。
この一連の動作に必要なのが「体幹」です。スキージャンプの選手に姿勢がいい人が多い理由は、この「体幹」が大きく関係しているのではないかと思います。
そこで今回は、「姿勢をよくする」ために私が実践しているメソッドを紹介します。
まず、皆さんに気をつけていただきたいのは、「いまの自分の姿勢をきちんと知る」ことと「姿勢が悪くなる習慣をなくす」ことです。
「正しい姿勢」=「疲れない体」
【1】「ラクな姿勢」は、実は「疲れやすい」
自分にとって「ラク」な姿勢が、実は「悪い姿勢」になっている人は少なくありません。実際に「ラクな姿勢」を聞いてみると、「足を組む」「左右どちらかに体重をかける」「胸を突き出して腰を反らせる」などの答えが返ってきます。
そんな人たちをよくよく見てみると、足を組み直してみたり、体重のかけ方を左右変えてみたり、背中を丸めてみたりと、頻繁に姿勢を変えているケースがとても多いのです。
なぜコロコロ姿勢を変えるのか。それは「同じ姿勢を続けていると疲れてしまう」ために、無意識に体を動かしているのだと思います。
頻繁にコロコロ姿勢を変える人は、実は「正しい姿勢」ができていない可能性が高いと言えます。在宅ワーク中、年中姿勢を変えていませんか? 注意して観察してみてください。
【2】パソコン使用時の「猫背」にも注意!
会社でもそうですが、在宅ワークでも1日中パソコンと向き合っている人は多いと思います。さらに仕事でパソコンを閉じた後は、「スマホ」とにらめっこ、という人も少なくないでしょう。
パソコンやスマホ使用時に注意してほしいのは、「前のめりの姿勢」です。ノートパソコン、モニター、スマホと使用するものによって異なりますが、往々にして首が前に突き出て、曲がりがちです。
前のめりの状態になれば肩や背中が引っ張られるので、背中も丸くなり「猫背」になりかねません。
さらに、この姿勢のままで作業を続けることで、首、肩、背中、腰と上半身は凝り固まってしまいます。これでは、体に歪みが生じて「悪い姿勢」になるのは当然ですよね。
では、どうすれば、姿勢がよくなるのか。私が実践している「おすすめのトレーニング」は、次の2つです。
体幹が弱いと、「体の軸」が安定しないので悪い姿勢になりがちです。逆に、体幹を鍛えると「体の軸」が安定してくるので姿勢がよくなり、体の歪みもなくなります。それはイコール「疲れない体」になるということです。
【3】寝る前の3分間でできる「体幹トレーニング」
私が自宅でやっている「体幹トレーニング」の利点は、ベッドや布団など、横になれるスペースでできて、しかも寝る前の3分間だけでOKということです。
【1】仰向けに寝たら、両膝を立てる。
【2】おへその1センチ下の部分を、1センチくらいへこます程度に力を入れる。
【3】【2】の体勢のまま、上半身をゆっくり起こす。
【4】おへそが見えたら3秒間キープする。
【5】ゆっくり息を吐きながら、1の体勢に戻る。
1~5を5セット繰り返します。
葛西選手が実際にやっている体幹トレーニング。寝る前3分でできる(イラスト:二階堂ちはる)
余裕のある人は、「体幹トレーニング」に加えて「くるぶしタッチ腹筋」も実践してみましょう。より体幹を鍛えることができます。
【4】女性におすすめの「くるぶしタッチ腹筋」
このトレーニングは、上体を上下に動かす一般的な腹筋よりもラクにできるので、とくに女性におすすめです。
【1】仰向けに寝たら、両膝を立てる。
【2】おへその1センチ下の部分を、1センチくらいへこます程度に力を入れる。
【3】【2】の体勢のまま、床から肩甲骨が離れる程度に上半身を起こす。両腕は体側に添わせる。
【4】【3】の体勢から上半身を左右に動かし、右手で右足のくるぶし→左手で左足のくるぶしを交互にタッチする。
【5】【4】を20~30回繰り返す(右タッチ10~15回、左タッチ10~15回)。
在宅ワークの際には、仕事と仕事の合間に行うことをおすすめします。同じ姿勢での長時間の作業を避けることができたり、ちょっとした仕事の息抜きになったりもします。
姿勢がよくなれば「心まで前向き」になる
私は、取材やインタビュー、講演会で1時間以上話すこともありますが、立っている間も、座っている間も、ほとんど姿勢を変えません。なぜなら「疲れない姿勢」ができているからです。
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また、競技以外でも「姿勢」には気をつけているのは、「姿勢をよくする」のは、体にいいだけでなく、不思議と気持ちも「ピシッと」「前向きに」になると感じているからです。
気持ちが沈みがちなコロナ禍だからこそ、より姿勢を正すことで「気持ちを前向きに」したいものですね。
正しいトレーニングによって、「姿勢をよくする」ことで、正しい「疲れない体」と「前向きな心」をいっきに手に入れることができる。私は実体験から確信しているので、皆さんもぜひ、日々の生活に取り入れてみてください。
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提供元:ギネス記録、葛西紀明「いい姿勢は、こう作る」|東洋経済オンライン