2020.06.16
出勤再開で上司に会うのが苦痛な人への処方箋 |「出勤したくないのは上司のせい」という人へ
再び上司と対面し仕事をするのが苦痛な人に、対処法を提案します(写真:PanKR/PIXTA)
新型コロナウイルスの感染拡大により始まったテレワーク生活も終わり、再び出勤する体制に戻った人も多いでしょう。満員電車に乗るのも憂鬱だけど、またあの上司と顔をつき合わせて仕事をするのは、気が重いという人も少なくないかもしれません。
「これを機に上司とのつき合い方を変えてみてはどうでしょうか」と言うのは、精神科医の和田秀樹氏です。上司の存在をストレスに感じないためのつき合い方とは? 和田氏の新刊『会社に行きたくない。さて、どうする?』をもとに解説します。
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上司に好かれなければならない?
もしあなたの上司が、部下の頑張りを評価せず、否定ばかりする人だったら、部下は大変な苦痛を味わうでしょう。会社に行くのがつらくなって当然です。ただ気になることがあります。嫌な上司に対して、普段あなたがどのような気持ちで接しているかです。
気に食わないと思いながらも、「その上司に好かれなければならない」という気持ちで日々接しているのだとしたら注意してください。あなたは自分の気持ちにウソをついているわけですから、次第に上司のことだけでなく、本心を偽っている自分のことも嫌になっていくでしょう。
もちろん、できれば上司に嫌われないほうが、ストレスなく仕事ができます。しかし、嫌われないように上司の顔色をうかがい、自分の意見を押し殺すことが増えれば、ストレスも比例して増えていきます。いずれそのストレスに押し潰されてしまうかもしれません。
仮に、今は相性がバッチリ合う上司にあたっているとしても、ずっとその上司のもとで仕事ができるわけではありません。人事異動で上司が変わるたびに不安や心配を抱えるのは、精神的によくないでしょう。
「上司」という存在に振り回されないためにも、こう考えてみてはどうでしょうか。そもそも仕事ですから、上司に好かれる必要などありません。仕事と割り切って接すれば、多少なりとも気持ちはラクになるはずです。上司とはビジネスライクな関係を心がけることを前提としたうえで、3つの対処法を提案します。
第1は、上司に対する悩みを信頼できる人に相談することです。自分ひとりで抱え込んでも、問題は解決しません。むしろ苦しい思いをすることになります。ガマンが限界を超えないうちに社内の信頼できる人に上司のことを打ち明けて、相談に乗ってもらうべきです。
相談相手は自分よりキャリアを積んでいる先輩がベストだと思います。経験をもとにどう対処したらいいか的確なアドバイスをしてくれるでしょう。もしかしたら同様の思いをしたことがあるかもしません。その場合は、より親身に話を聞いてくれるはずです。
ただし、相談に乗ってもらえるかどうかは、それまでの関係性次第です。関係性が薄ければ、真剣に相談に乗ってもらえる可能性は低くなります。いざ困ってから頼るのではうまくいかないものです。この人は信頼できると思ったら、普段から関係を築いておくことが大切だと思います。
第2、第3のポイントは?
第2は、仲間を探して不満を言い合うことです。自分と同じく、その上司を嫌っている人は社内にいるものです。社内で同じように上司を嫌う仲間を探して、鬱憤を晴らすのがおすすめです。
昼休みにランチを一緒に食べながらでもいいですし、アフター5に一緒に酒を酌み交わしながらでもいいと思います。互いに上司の不満や愚痴を言い合えばストレス解消になるでしょう。そういう相手が職場に1人でもいれば、救われるものです。
第3は、会社を辞めることです。ガマンが限界を超えたらうつ病になりかねません。そうなってからでは遅いので、もう無理だと思ったら、辞める決断を躊躇なくすべきです。
ただ、嫌な上司はどこの職場にもいるものです。転職が解決に結びつかないことも多いので、前述したように、嫌な上司とは割り切ってつき合うようにする一方で、信頼できる相談相手や不満をこぼせる仲間をつくるよう心がけてほしいと思います。
かつてのように家族主義的な会社が多かった時代なら、上司に好かれるようにしたほうがより手厚く面倒を見てもらえたかもしれません。しかし、今は能力主義・成果主義が当たり前です。仕事の成果をよりシビアに問われます。いくら前の晩、飲み屋で遅くまで上司につき合ったとしても、翌日に仕事でミスをすれば、むしろ評価はマイナスでしょう。
最近は、上司の雑談につき合うのがストレスという話をよく聞きます。もちろん、仕事に関連した雑談であればしっかり聞いたほうがいいでしょう。
でも仕事とは関係ない雑談で、話が長くて、つまらなければ、そんな話に誰もつき合いたくないはずです。だからといって、無視するのも難しい。結局、上司のつまらない雑談に相槌を打ち、関心があるように装って聞いてしまう人も少なくないと思います。
本音では、上司のつまらない雑談につき合って時間をムダにしたくないはずです。それをガマンしてつき合うのは、上司と部下が利害関係にあるからでしょう。仕事と関係のない雑談とはいえ、話を聞かなければ自分に不利益が生じるかもしれないと考えてしまうのです。真面目な人ほどそうした思考に陥ります。
けれど現実には、上司の話を聞かなったくらいでペナルティを受けることは考えられません。仕事に支障がないわけですから、雑談につき合いたくなければつき合わなくていいのです。にもかかわらず、上司の機嫌が悪くなるのを恐れるなどの理由でつき合っていたら、損するのは自分だということを自覚すべきでしょう。
というのも、多くの人は上司のつまらない雑談をうまくかわしているわけです。そんな中で嫌な顔をせずにつき合ってくれる相手がいたらどうなりますか? 上司はうれしいですよね。結果、あなたに雑談の聞き役が回ってくるのです。トランプのババ抜きでいえば、ババを引かされる損な役回りを担うハメになるのです。
ですから、もしあなたが雑談の聞き役になっているとすれば、そこから早く抜け出すことです。例えば、上司のつまらない雑談が始まりそうになったら、「すみません、すぐに片づけなければいけない仕事があるので……」と、仕事を理由にその場を外しましょう。「打ち合わせに行ってきます」とか「ちょっとトイレに……」など、言いやすい理由を考えておくといいです。損な役回りを回避しましょう。
周りに合わせることに疲れる
私たち精神科医のもとを訪れる人は、心の苦しさ──不安や不満、抑圧感などに苛まれています。心の苦しさを和らげるために、私は何に苦しみ、何をストレスに感じているのか、患者さんに質問をしながらその原因を探ります。すると、職場や学校、友人や近所のつき合いなどの人間関係において、周りに合わせることに疲れている人がとても多いことに気がつきました。
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その人たちには、共通点があります。自分が周囲に「どう思われるか」「どう見られているか」をとても気にしている点です。つねに人にどう思われるかを気にしているので、心の休まる暇がありません。これでは、疲れてしまうのは当然ですよね。嫌われないために、周囲に合わせる一方で、素の自分を押し殺すので、だんだん窮屈になっていきます。
これが一時的なつき合いで済めば、それほど苦労はしないでしょう。一時、ガマンすればいいわけです。でも、そうはいかないケースのほうが多いと思います。職場の上司との関係がまさにそうです。同じ会社で仕事をするあいだは、嫌われないために表面的なつき合いを続けていかなければなりません。
詳しくは、拙著『会社に行きたくない。さて、どうする?』に書きましたが、職場の人間関係で心が押し潰される前に、適切な対処法を身につけてほしいと思います。
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提供元:出勤再開で上司に会うのが苦痛な人への処方箋|東洋経済オンライン