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2020.03.17

栄養学博士が教える自分の免疫を高める食事法|ウイルスに負けない体づくりの秘訣とは何か


免疫力を高める食事法を栄養学博士の立場から紹介します(左写真:keiphoto/PIXTA)(右写真:jazzman/PIXTA)

免疫力を高める食事法を栄養学博士の立場から紹介します(左写真:keiphoto/PIXTA)(右写真:jazzman/PIXTA)

新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう中で、日本国内でも感染の拡大が続いています。

毎年のように流行するインフルエンザなどのウイルスは、体の中に入れないようにすることが大切とはいえ、日々の生活では多くの人が集まる場所を完全に避けることは難しいです。そのため、1人ひとりが自身の抵抗力を落とさずにウイルスに負けない体づくりを心がけることも大切といえます。

例えば、今からでもできることとして、バランスのよい食事が挙げられるでしょう。ヨーグルトや乳酸菌飲料、緑茶、納豆など免疫効果を高めるために効果があるとされる飲食料品は注目が高まっています。

そこで、本記事では、栄養学博士の立場からヨーグルトと緑茶の効果、バランスよく食べる具体的な方法について紹介したいと思います。

2020年3月11日時点では国内で感染拡大が続いている新型コロナウイルスがどのような特性を持っているウイルスなのか、十分に解明されていません。厚生労働省・国立感染症研究所・東京都感染症情報センターでは最新情報を公開しており、また政府の対応については首相官邸HPでも公開されています。まずは正しい情報を把握することがなによりも大切です。

厚生労働省 ※外部サイトに遷移します

国立感染症研究所 ※外部サイトに遷移します

首相官邸HP ※外部サイトに遷移します

ヨーグルトはなぜ重宝されてきたのか

牛乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルトは、良質なタンパク質や脂質、カルシウム、ビタミン類が豊富に含まれています。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、整腸作用や免疫力を高める効果(免疫賦活作用)があるとされ、風邪などのウイルス対策としてヨーグルトは重宝されてきました。

私たちの腸内には、数百種類もの細菌が生息していると言われています。こうした腸内の細菌の集まりは腸内細菌そうや腸内フローラと呼ばれ、ヒトの健康にさまざまな影響を及ぼしています。そして、腸内フローラの構成は食習慣や年齢などによって1人ひとり異なっています。

腸内の細菌には、大きく分けて乳酸菌やビフィズス菌といった有用菌、大腸菌などの有害菌、どちらにも属さない日和見菌と言われる菌群があり、これらの菌群の割合が健康に影響します。偏った食事、食べすぎ、飲みすぎ、ストレス、過労などによって有用菌が減少し、有害菌の割合が増えすぎると有害物質や毒素が増えて腸管から吸収されることで身体に負担を与えることになります。

腸内フローラを良好な状態に保つためには、乳酸菌やビフィズス菌を増やすように日頃から気を付けることが大切です。

具体的には、既に腸内にいる乳酸菌やビフィズス菌を増やすために必要な難消化性オリゴ糖や食物繊維をしっかりとること(プレバイオティクス)、もうひとつは、乳酸菌やビフィズス菌そのものを摂取すること(プロバイオティクス)です。

プレバイオティクスとプロバイオティクスの両方をあわせて摂取することをシンバイオティクスといい腸内環境を良好に保つために大切な方法です。

プロバイオティクスはWHOにおいて「適切な量を摂取することで宿主に健康上の利益を与える生きた微生物」として定義されており、乳酸菌やビフィズス菌は代表的なプロバイオティクスです。乳酸菌やビフィズス菌には、腸内環境の改善、免疫の向上のほかにも、便通の改善、感染防御、発がんリスクの低減、アレルギーの低減、血圧降下などさまざまな効果が期待されています。

乳酸菌は、菌の外(菌体外)に多糖を産生します。この菌体外多糖のことをEPSといい、ヨーグルトが柔らかく固まって分離を防いだり、種類によっては独特の粘りやなめらかな食感を作り出します。こうした働きをするEPSには、さまざまな効果があることがわかってきています。

ひとつは、腸内でビフィズス菌などの栄養源となるプレバイオティクス効果、もうひとつは、免疫賦活(活性化)効果でさまざまな研究が進められています。

乳酸菌には多くの種類があり、通称R-1という名称で呼ばれている乳酸菌は、EPSを多く産生する菌株で免疫賦活効果があるもののひとつです。

腸内フローラの構成は1人ひとり異なりますから、自分の体に合うと感じるヨーグルトを習慣的に摂取することと、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクス効果が期待できる食品をとることで、ウイルスに負けない体づくりを目指すことも可能と言えるでしょう。

緑茶の効果にはどのようなものがあるのか

続いて緑茶です。緑茶には、抗ウイルス成分である茶カテキンが含まれています。

10年ほど前のデータになりますが静岡県で2008年から2009年にかけて小学生を対象に行われた調査では、1日当たりの緑茶摂取量が1杯(200ml)~5杯だった生徒は1杯未満の緑茶摂取量だった生徒に比べて、インフルエンザに感染する確率が低いことが報告されています(参考文献1)。

緑茶に含まれる茶カテキンには、いくつか種類がありますが、その一部はウイルスの活性を阻害することで増殖を抑制するという研究も発表されています(参考文献2)。

つまり、緑茶を摂取することで体内に入ったウイルスの増殖を防ぐ効果がある可能性が報告されているわけです。1日1杯以上、緑茶を食事や休憩時などに取り入れることもよいでしょう。

では、緑茶の種類は何でもよいのでしょうか。

緑茶と言っても、急須を使って茶葉とお湯でお茶をいれて飲む場合もあれば、ペットボトルなどに入ったお茶を飲む場合もあります。

このようなお茶の種類によって、抗ウイルス効果が期待できるカテキン類の量に違いはあるのでしょうか。茶カテキンには複数の種類がありますが、とくに抗ウイルス効果が期待されるカテキン類は、EGCG(エピガロカテキンガレート)とECG(エピカテキンガレート)です。

この2つの合計含有量は、研究データを見る限り(参考文献3と参考文献4) 、抽出したお茶のほうが一般的なペットボトルなどのお茶よりも多いという結果(1ml当たり。概ね3倍)になっていました。

なお、紅茶やウーロン茶にもカテキンは含まれますが、発酵の過程でカテキンの量が減少してしまいます。抗ウイルス効果という点では、同じ量のお茶を飲むのであれば、急須に茶葉と湯を入れて抽出した緑茶がおすすめです。

バランスのとれた食事が大切

緑茶に抗インフルエンザ成分が含まれているからといって、緑茶ばかり飲んでいては、栄養素が不足して免疫力が落ちてしまいます。免疫賦活作用のある成分は、ヨーグルト以外にもきのこやパン酵母、海藻などに含まれる成分もあります。

また、プレバイオティクスとしてオリゴ糖や食物繊維を摂取することが腸内フローラの状態をよくすることにつながり、免疫力を高めることに貢献します。カテキンの作用も乳酸菌の作用もバランスのよい食事があってこそ生かされるものです。こうしたことを考えるとバランスよく食べることの大切さが見えてくるのではないでしょうか。

日本人が不足しがちな栄養素を摂取することを目的に考えるとバランスよく食べるためのポイントは、4つあげることができます。

緑黄色野菜を意識して食べること

乳製品をとること

肉・魚・卵・豆製品(豆腐など)の中から毎食100グラム程度を食べること

果物を食べること

食品に含まれる栄養素がヒトの体の中で効率的に利用されるには、さまざまなほかの栄養素が必要です。そのため日頃の食事は、エネルギー(炭水化物、脂質)、タンパク質、ビタミン、ミネラルの適切な量(多すぎでも少なすぎでもない量)を摂取することが大切です。この場合、炭水化物の量は、1食あたり軽くご飯1杯(120g程度。成人で1日あたりのエネルギー摂取量が1800kcal程度の場合。)ほどがよいでしょう。

緑黄色野菜には、抗酸化作用が多く含まれていますし食物繊維をとることもできます。乳製品は、日本人に不足しがちなカルシウムを摂取することができます。カルシウムは、骨を構成するだけではなくホルモンの分泌調節や筋肉の収縮などさまざまな生体機能の調節に必要な栄養素です。

ヨーグルトは牛乳を飲むとお腹が緩くなりがちな人でも乳糖が分解されているため症状が出にくく、おすすめの食品です。果物は、ビタミン(とくにビタミンC)、ミネラル、食物繊維を含んでいます。

毎日の食事に乳製品と果物を取り入れることで、自身の免疫力を高め、ウイルスに負けない体づくりを目指しましょう。

参考文献

(1) Park, M.; Yamada, H.; Matsushita, K.; Kaji, S.; Goto, T.; Okada, Y.; Kosuge, K.; Kitagawa, T. Green tea consumption is inversely associated with the incidence of influenza infection among schoolchildren in a tea plantation area of japan. J. Nutr. 2011, 141, 1862–1870.
(2)Song, J.M.; Lee, K.H.; Seong, B.L. Antiviral effect of catechins in green tea on influenza virus. Antivir. Res. 2005, 68, 66–74.
(3) 倉田正治、ほか「ガスクロマトグラフィー/質量分析法による茶飲料中カテキン類8種の一斉分析」分析科学 Vol.61,No1,pp.63-68(2011)
(4)吉川秀樹、ほか「ペットボトル緑茶のカテキン、カフェイン、テアニン含量」京都光華女子大学短期大学部研究紀要,55,67-72 (2017)

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「新型コロナウイルス」は一体どこから来たのか

コロナで我を失う愚か者たちのバカすぎる行動

新型コロナの影響で「外出を控える人」の盲点

提供元:栄養学博士が教える自分の免疫を高める食事法|東洋経済オンライン

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