2019.08.26
【特集/驚くべき血管の役割!】 1分で全身を巡りからだをコントロール
----血液の通路である血管には、37兆個もの細胞に酸素や栄養を届け、老廃物を回収する役割があります。血液の巡りが悪いと隅々まで酸素や栄養がゆき届かないため、からだにさまざまな不調が現れるわけですが、血管にはまだまだ重要な役割があるのをご存知ですか? 解剖学の権威・坂井建雄先生に、まずは血管の働きについて解説していただきます。
からだの部位ごとに血液量を 調整するのも血管の仕事
私たち人間は絶えずエネルギーをつくり、そして使い続けなければ生きていくことができません。どのようにエネルギーを調達しているかというと、おもに体外から酸素や栄養を取り入れ、それを使って燃焼し、不要になった老廃物を捨てるという一見シンプルに見える構造ですが、血管は非常に緻密な働きをしているのです。
全身を流れる血液の総量は、体重の約8%といわれています。体重60kgの人なら5リットル。心臓の右部分は肺へ、左部分は全身に、血液を送り出していますが、その総量は1分間に5リットル(安静時)。わずか1分間で、体内を1周しているのです。この5リットルがどのように分配されているかというと、心臓から出て肺を通り、再び心臓に戻ってきてから全身を巡ることから、心臓の右部分、酸素を取り込む肺には100%、左部分は栄養を取り入れる消化器に28%、老廃物を捨てる腎臓に23%、残りの49%が脳や筋肉など残りの部位。肺、消化器、腎臓の割合が多いのは、酸素や栄養といったエネルギーを確保するためなのです。
体温も血管がコントロール
血管には、状況に応じて血液の量と分配先を変える機能も備わっています。運動をすると筋肉は大量の酸素と栄養を必要とするため、1分間に全身を巡る血液の総量は、5リットルから25リットルまで急増。15〜20%程度だった筋肉に、80〜85%も送られます。筋肉以上に血流量の増減が多いのが、体温調節をする皮膚です。皮膚の血管が開いていると血液が皮膚にたくさん流れ、からだの熱を逃すのですが、寒いときはからだの中の熱を逃さないようにするため、血管が縮み血流量はゼロに近い数値になります。手足を冷やすことで体内の熱は逃さないものの、からだは冷える。
そこで私たちは、からだを冷やさないために保温のバリア、つまり衣類を着て温めているのです。ただし、温めすぎるとからだの中に熱が溜まり、体温調整がうまくいかなくなるので注意しましょう。
----「脳に動脈(心臓から出ている血管)は4本あるのですが、何らかの理由でうち1本が細くなると、ほかの3本が太くなるんです。血液の循環が滞らないように、臨機応変に形を変えることができるのも、血管の特徴です」。血流量と分配先だけでなく、太さも自在に変えることができるハイスペックな血管でも、老化は避けられないのだとか。次回は、血管の種類や老化のスピードを緩める方法をご紹介します。
坂井建雄
順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学 教授。日本医史学会理事長。専門は解剖学と腎臓の細胞生物学。『面白くて眠れなくなる人体』『面白くて眠れなくなる解剖学』(ともにPHP研究所)、『想定外の人体解剖学』(エイ出版社)など著書多数。
先生/坂井建雄(順天堂大学 教授)
取材・文/山崎潤子
イラスト/はまだなぎさ
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