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2018.11.13

「朝型人間は仕事ができる」の怪しすぎる根拠|成果との相関関係をしっかり見極めるべきだ


自主的に早起きすることはなかなかできないものですよね(写真:freeangle / PIXTA)

自主的に早起きすることはなかなかできないものですよね(写真:freeangle / PIXTA)

仕事は朝型にすることで効率化が図れて成果が出る……と言われます。確かにアップル元CEOのスティーブ・ジョブズ氏やスターバックスのCEOであるハワード・ショルツ氏は朝型で有名ですし、日本の経営者、ビジネスパーソンでもそれで成功したと断言する人がたくさんいます。

筆者も早朝(朝8時くらい)の打ち合わせに行ったら、「すでに一仕事が終わった後」と語る朝型の人に何回も会ったことがあります。では、何時から仕事をしているのか? その1人であるコンサルティング会社に勤務しているDさんに訊ねてみると、

「朝5時過ぎから仕事をしている」

との答えが返ってきました。自宅から始発で出勤しているようです。そんなDさんの影響で、社内でも朝型勤務が推奨され、実は周囲が大いに迷惑しているとの声も聞こえてきました。どのようなことが起きているのでしょうか?

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3時半起床のルーティーン

Dさんは、朝活という言葉が広まる前から10年以上も朝5時台の始業を実行してきました。まさに朝活のレジェンドといえる存在。そんなDさんの日常とは

・毎朝3時半に起床
・自宅周辺を軽くランニング
・5時過ぎに出社

通常の社員が出勤してくる9時までにメールチェックから情報収集、提案書の作成などの作業まで終わらせてしまいます。そして、9時以降は通常の会議や打ち合わせ、顧客の訪問などを行い、17時には退社。自宅に帰って21時までに就寝するスケジュールを基本にしています。

最近は「朝活」という言葉の認知度が高まり、生産性の向上につながるとの発想から、早朝出勤をする人が増えています。ただ、Dさんの職場で5時台に出社する人はいません。6時台でも数名の社員が出勤してくるくらい。大半は始業時間の30分前に出勤してきます。朝活で出勤が早まっているといわれていますが、これが実情ではないでしょうか?

朝活 ※外部サイトへ遷移します

Dさんが朝型で仕事をする理由を訊ねると、目覚めた直後のパフォーマンスの高さを挙げてくれました。人間は睡眠によって脳の疲労を取り除かれるので、起きた直後が最も脳の疲労が少なく、集中力が高まる時間帯です。ところが誰もが出勤してくる時刻になると周囲がざわつき、上司や同僚からの「ちょっといいかな」と呼び出しなどで集中力が切れてしまうリスクがたくさんあります。

就業時間を早めることで、仕事効率が上がる

集中力といえば、職場に集中作業室と呼ばれる一人でこもれるような環境の整備をする企業が増えています。プログラマーや分析業務をする社員など、開放的な環境がマイナスに影響する業務があるとの認識からです。集中力問題はたしかに多くの職場にある課題ではあるのです。

また、夕方になるとストレス耐性が下がるといった医学的な見地からの調査もすすんでいます。そこで、会社単位で朝型を勧めようとする動きが生まれつつあります。とても望ましいことのように思えるのですが、Dさんが周囲の迷惑となってしまったのはなぜなのでしょうか。

Dさんの社内での人事評価はかなり高く、同期でもトップクラスの昇進をしてグループリーダーに抜擢されています。朝型という働き方をし、結果も出している優秀な社員として社内でも注目の存在。

すると人事担当役員から「D君のように朝型で仕事をする社員を増やすべき」との意見が出たのです。人事部は役員の意見を受け止め

「了解しました。早速取り組みます」

と朝型の仕事を推奨することを検討。役員会の承認を経て、翌月から社内に告知して実施することになりました。その内容が

・7時半までに出社する社員に対する朝食の提供
・早朝勤務(8時まで)を深夜勤務と同様に割り増し賃金を支払う

など。さらに社内報で早朝出勤している社員を取材する企画で社内にPRをするなど、打ち手を次々と講じていきました。

すると1年後には早朝に出社して仕事をする社員が急増。5時台には1割、6時台には3割近い社員が出社する状態になりました。

人事部は、役員会で朝型社員が増えたことを報告。役員から「よくやった」と褒められる結果となりました。ところが、当初から朝型であったDさんが人事部にクレームをつけました。それは

「早朝に出社する社員が増えて集中できない」

とのこと。同僚のなかには早朝に支給される朝食、割り増し賃金目当て出社する社員もいるようで、オフィスで雑談をしている社員が増えて、雑然とした朝の様子に変貌してしまったようです。Dさんは

「ならば、集中して仕事ができる空間をつくってくれないか」

と要望。当初のモデルとなった社員からのクレームに人事部は戸惑いました。すると人事部の若手社員から意見が出てきました。

「朝型社員と業績との相関性をみてみましょう」

Dさんだからこそ早朝勤務との相性が良かった

朝型に変えた社員は業績が高い傾向が出ているので、会社としては続けたい……と回答したいからとのことでした。この意見には人事部も賛同。朝型に変えた社員の業績を分析することにしました。すると、朝型に変えた人と変えていない人の業績で大きな違いを見出すことができなかったのです。

「データからみれば朝型の推奨は正しいとは言い切れないかもしれない」

Dさんのクレームに回答する術がみつからなくなりました。会社はDさんの仕事ぶりを個別に分析。仕事に対する集中力や時間管理に対する意識の高さが好業績の要因であることがわかりました。単に朝型にすればいいという判断は安直であったかもしれない……と大いに反省することになりました。さらに

「Dさんを含めて、業績の高い社員と勤務時間の相関関係を当初から分析していれば、成果につながる取り組みを講じられたのに」

と後悔が生まれました。結果として朝型の施策は強く打ち出されないようになりました。すると早朝は静寂な時間帯へと戻っていきました。Dさんは集中できる空間を再び得ることができ、クレームを撤回したようです。

さて、朝型で仕事をすることが悪いわけではありません。ただ、1人の社員が朝型で活躍しているから全社員も朝型にすれば同様な成果につながるというのは安直ということなのです。

打ち手を講じる前にデータを分析してエビデンスを導き出すことをすれば、もっと成果につながるのではないでしょうか。

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提供元:「朝型人間は仕事ができる」の怪しすぎる根拠|東洋経済オンライン

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