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2017.07.27

熟睡できない8つの原因と対処法――朝までぐっすり眠るための医師コラム


「熟睡できない」あるいは「夜中に何度も目が覚めてしまう」と、悩んでいませんか? 蒸し暑くて寝苦しい梅雨~夏にだけ、熟睡できないという方は、まだ大丈夫かもしれません。しかし、季節にかかわりなく熟睡できない状態が続くと、睡眠不足が積み重なって、日中のパフォーマンスの低下にもつながりかねません。

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熟睡できない8つの原因

熟睡できない原因はいろいろありますが、主に以下の8つが問題となることが多いようです。

光の調整がうまくいっていない

人間は昼行性の生物なので、日中に活動して夜に眠るのが生活の基本パターンです。朝に目覚めて明るい光を浴びると、夜の間にたくさん分泌されていた睡眠ホルモン「メラトニン」が、急激に減ります。目覚めてから14~16時間たつと、再びメラトニンの分泌が始まり、その1~2時間後に眠くなってきます。ところが、日中に室内にいてあまり光を浴びなかったり、逆に夜に明るい光を浴びたりしていると、メラトニンの分泌パターンが乱れたり分泌量が減って、熟睡できなくなります。

体内時計がうまく働いていない

睡眠は、「体内時計(生体リズム)」と「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」によってコントロールされています。体内時計に影響を与えるもののうち、最も強力なものは「光」です。日中にあまり光を浴びなかったり、夜に明るい光を浴びたりすると、体内時計の調子が悪くなります。2番目に影響を与えるものは、「食事」です。朝食を抜いたり、深夜に消化が悪いものを食べたりすると、体内時計に悪影響を与えます。

身体に睡眠物質がたまっていない

「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」は、起きている間に脳内に睡眠を促す「睡眠物質」がたまると眠くなり、眠っている間に睡眠物質が分解されると目が覚めてくる、というメカニズムです。睡眠物質は、脳や身体をよく使うとたくさんたまります。ところが、起きている間にあまり脳や身体を動かさないと、睡眠物質が十分たまらず熟睡できません。

眠りに悪影響を及ぼす習慣がある(アルコールやタバコ、カフェインなど)

嗜(し)好品との付き合い方には注意が必要です。アルコールは寝つきを良くしてくれますが、睡眠の後半で眠りが浅くなるので、睡眠全体としては好ましいものではありません。眠るときまでにアルコールが分解されるように、量と時間を考えましょう。

タバコには、覚醒効果とリラックス効果の両方があります。一般的には覚醒効果の方が強いので、眠る前には控えましょう。カフェインは眠気覚ましの定番です。眠る直前だけでなく、夜の早い時刻にカフェインを飲んでも、覚醒効果のために熟睡できないことがあります。

痛みやかゆみ、冷え性など身体の症状がある

寝つきが悪い原因で多いものが、身体の痛みやかゆみです。「ストレスよりも、痛みやかゆみが睡眠障害の原因となっていることの方が多い」という調査結果もあります。腰や肩の痛みが強い人は、寝返りのたびに目を覚まします。アトピー性皮膚炎などで身体がかゆい人の中には、「かゆくて眠っているどころではない」という人もいます。睡眠中は体温が下がるから熟睡できるのですが、冷え性の人は手足の血行が悪いため、脳や内臓の熱を放散できません。そのため、手足は冷たいのに、身体の奥に熱がこもって熟睡できません。

眠るときに身体がリラックスできていない(ストレスや悩み事など)

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。交感神経は「昼の神経」ともいわれていて、活動の源になります。一方、副交感神経は「夜の神経」とも呼ばれていて、リラックスしたり眠ったりしているときに、交感神経より優位になります。強いストレスを感じていたり、悩み事で苦しんだりしているときは、交感神経が活発になるため、夜になってもリラックスできず熟睡できないのです。

寝室の環境が適切でない

梅雨から夏には高温多湿に、冬には低温乾燥になりやすい日本列島。寝室の温度や湿度が適当でないと、睡眠の質が悪くなり熟睡できません。また、寝室の照明やテレビ・パソコンをつけっぱなしで眠ると、明るさのため熟睡が妨げられます。音楽を聴きながらリラックスして寝付くのはよいのですが、一晩中大きな音が鳴っていると、眠りの質が悪くなり熟睡感を得られません。

寝具が身体に合っていない

映画などで、フカフカのベッドでぐっすり眠るというシーンを見ることがあります。しかし、実際にこのような柔らかすぎるベッドで眠ると、寝返りがうまくできないため、朝起きたときには身体が痛く熟睡した気になりません。逆に、フローリングに直接寝る、あるいは硬すぎるマットレスで寝ても、体圧が分散できないため身体が痛くなります。また、夏などに寝具が身体にからまると、うまく寝返りができず一層、寝苦しくなります。

これらのほかにも、睡眠障害などの病気のために熟睡できないこともあります。上の項目に思い当たらない人や、以下に挙げる対策をとっても熟睡できないときは、早めに睡眠障害の専門医に相談しましょう。

熟睡できないときの対処法

就寝1時間前には、スマートフォンやパソコンを消す

テレビやパソコン、タブレット、ゲーム機、スマートフォン、携帯電話など電子機器の画面からは、睡眠ホルモン・メラトニンを減らす青い光「ブルーライト」がたくさん出ています。そのため、眠る1時間前、少なくとも30分前には、これらの電源を切りましょう。また、就寝前に仕事のメールとチェックすると、エスプレッソコーヒー2杯分もの覚醒作用があります。電子機器をどうしても使いたいのなら、朝起きてすぐに使いましょう。ブルーライトがメラトニンを減らしてくれるので、眠気が早く引いてスッキリ目覚められます。

朝食は必ずとる

目覚めてから食事をすると、おなかの体内時計「腹時計」が目を覚まします。朝食には、アミノ酸の一種である「トリプトファン」の含まれた食品がおすすめです。トリプトファンは、睡眠ホルモン・メラトニンの原料です。トリプトファンは、牛乳や乳製品、豆類や豆製品、肉類、バナナ、アボカドなどに多く含まれています。

一方、夕食は眠る時刻の3時間前までに済ませましょう。胃腸が消化のために忙しく働いている間は、熟睡できないからです。肉や脂っこいものは消化に時間がかかるので、夕食は炭水化物を中心とした和食ものがお勧めです。夜の食事は、栄養素の吸収の効率が高いので、太らないためにも軽めにしておきましょう。

日中は脳と身体をよく使う

脳に睡眠物質をたくさんためるためには、日中に疲れなければなりません。脳と身体を十分に使って疲れましょう。運動をするなら、夕方から夜のはじめがお勧めです。この時間帯に運動をして体温を上げておくと、眠るころに体温が下がってきて熟睡しやすくなります。遅い時刻あるいは長い時間の仮眠をとっている人は、睡眠物質を減らしてしまうのでやめましょう。仮眠をとるなら、午後3時までに20分以内にしておきましょう。

アルコールやカフェインは夕食までに

寝酒は睡眠薬より危険です。次第にアルコールの量が増えて、アルコール依存症になる危険性が高いからです。夕食の時の晩酌は、まだよいかもしれません。ただし、晩酌するなら、日本酒1合、ビール中瓶1本、ワインはグラス2杯までを、眠る時刻の3時間前までに飲み終えましょう。

カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶などは、夕食以降は控えましょう。夕食後に飲むなら、ノンカフェインの麦茶やハーブティ、白湯に変えましょう。チョコレートやココア、栄養ドリンクの一部にもカフェインが含まれているので、要注意です。タバコも眠る1時間前には、吸わないようにしましょう。

痛みやかゆみはきちんと治療する

病院やクリニックを受診して、痛みやかゆみの治療をするのが大原則です。医師の指導に従って薬を使い、生活習慣を改善していきましょう。暑さや寒さ、湿度の変化で症状が悪くなる時は、エアコンなどで寝室の環境を整えることも大切です。

リラックスする

呼吸を調整して、緊張をほぐしましょう。呼吸の仕方は、腹式呼吸と胸式呼吸のどちらでもかまいません。ゆっくり息を吸ってちょっと息を止め、次にゆっくり息を吐いてまたちょっと止めます。息を吸うときには、胸あるいはお腹の筋肉が緊張することを意識します。また、息を吐くときに、胸あるいはお腹の力を抜くと筋肉の緊張がどのくらい無くなるかも観察してください。

寝室の環境を整える

熟睡できる寝室の温度は16~26度で、湿度は50%前後です。夏はエアコン、冬は暖房器具などを使って、理想的な空調を実現しましょう。真っ暗でも大丈夫な人は、照明をすべて消して眠りましょう。暗闇が不安な人や、夜中に起きてトイレへ行く人は、豆電球のフットライトをつけておくと安心・安全です。

寝具を見直す

朝、目覚めたときに、身体のどこかが痛かったりコリが強かったりしたら、マットレスや敷布団、枕など寝具を見直しましょう。マットレスや敷布団は、使っているうちにお尻の部分がくぼんできます。眠る前にチェックして、くぼんでいるようなら頭と足を逆にしたり、他の人のものと交換したりしましょう。ハンドタオルなどで、くぼみをなくしても良いです。枕は、身体にあまり力を入れなくてもスムーズに寝返りできる高さが、ちょうどよい高さです。

まとめ

熟睡できない人は、まず、原因を突き止めましょう。そして、原因を取り除くための対処法を実行してみてください。それでも熟睡できないときは、何かの病気が潜んでいることがあるので、かかりつけ医や睡眠専門医に相談してください。

photo:Getty Images

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坪田聡

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医師、医学博士。医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック副院長。医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

提供元:熟睡できない8つの原因と対処法――朝までぐっすり眠るための医師コラム|フミナーズ

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