2024.08.07
【医師監修】下の血圧が高い原因とは?〜改善・対策方法をわかりやすく解説〜
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。 ※外部サイトに遷移します
執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。 ※外部サイトに遷移します
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「上の血圧は正常だけど下だけが高いって言われた。何が良くないの?」
血圧を測ると「上の血圧」「下の血圧」と言われますが、一般的に血圧の高い方が気にされるのは上の血圧ではないでしょうか?
しかし、下の血圧のみ高い状態も高血圧であり、心筋梗塞や脳梗塞などにつながるため見過ごせません。
では、「下の血圧が高い」とは一体どのような状況なのか、今回は血圧の基礎知識とあわせてお伝えします。
また、血圧が高い方へ向けた生活習慣の改善方法もご紹介するので、ぜひ最後までお付き合いください。
上の血圧と下の血圧とは
上の血圧は「収縮期血圧」といい、心臓が血液をポンプのように送り出した時に血管壁にかかる圧力を指します。
一方、下の血圧は「拡張期血圧」といい、心臓が血液をポンプのように送り出した後で心臓が拡張した時に血管壁にかかる圧力のことを指します。
心臓が血液を送り出した後なのに血圧が発生している理由には、心臓のすぐ近くにある血管「大動脈」が関係しています。
心臓から血液が流れ出るとき、大動脈は血液が流れやすいように広がります。
その後、大動脈が元の大きさに戻るときに、大動脈内の血液が少しですが送り出されて血管に圧がかかり、下の血圧が発生しているのです。
なお成人の場合、正常血圧の診断基準は以下の通りです。
上記の数値よりも高い場合は、高血圧の可能性があります。
参考記事:【医師監修】血圧の平均を知ろう〜年代別にまとめました〜 ※外部サイトに遷移します
下の血圧だけが高い原因とは?
下の血圧が高い原因は、体の端のほうにある血管「末梢血管」が固くなっていることが挙げられます。
心臓から血液が送り出された後、大動脈が元の大きさに戻るときにも血液が押し出されますが、末梢血管が固いとスムーズに血液が流れません。
そのため、下の血圧だけ高くなってしまうのです。
なりやすい人の特徴
一般的に拡張期高血圧(下の血圧のみ高値)は若中年者で多く、高齢になり大動脈壁硬化が進むと収縮期高血圧(上の血圧が高値)に移行していきます。高齢者で拡張期高血圧のみ認める場合、他の病気が原因の高血圧(二次性高血圧)となっていないか検討する必要があります。
拡張期高血圧を呈する症例としては若・中年のほかに、男性、肥満、喫煙、高コレステロール血症、中性脂肪高値、高血糖、メタボリックシンドローム睡眠時無呼吸などが挙げられています。
年齢、性別を除いてこれらは改善させることが可能であり、生活指導や薬物治療などを行うことにより、拡張期血圧高値も改善することが期待できます。
末梢血管が固くなる原因
血管が固くなることを動脈硬化と言いますが、原因として考えられているのは以下の通りです。
下の血圧が高い方は、これらの原因により手足など体の末端に存在する末梢血管で動脈硬化が起きていると考えられます。
参考記事:脂質異常症と動脈硬化の関係~メカニズムや予防方法についても解説~ ※外部サイトに遷移します
リスクや症状を紹介
下の血圧だけが高い場合のリスクに対する見解は一致していません。心血管イベントリスクが上がるという報告も、正常血圧者とリスクは変わらないという報告もあるためです。
ただ拡張期高血圧(下の血圧のみ高値)を示す方は加齢とともに収縮期高血圧(上の血圧が高値)も合併することが多く、収縮期血圧高値は心血管イベント、脳卒中リスクとなります。
参考記事:【医師監修】高血圧とはどんな状態?~症状や生活習慣での改善ポイントを解説~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:糖尿病は心筋梗塞・脳梗塞に要注意〜リスクと予防のポイントをシンプルに解説〜 ※外部サイトに遷移します
下の血圧を下げるための対策
下の血圧を下げるための方法は、一般的な高血圧の対策と一緒です。
基本的には食事や運動といった生活面を整え、そして必要であれば薬を使って対策していきます。
数日頑張るのではなく、長期間にわたって対策を続けることが大切です。
参考記事:血圧を下げる方法〜食べ物や生活でのポイントを分かりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
減塩のコツ
高血圧における食事の改善ポイントでは、減塩が重要です。
高血圧治療ガイドラインによると、高血圧の治療では1日に摂る塩分を6g未満に抑えるよう推奨しています。
とくに、調味料からの塩分量を意識しましょう。私たち日本人は、1日の摂取塩分量のじつに7割を調味料から摂っています。
うま味や酸味を活かして醤油や味噌などの使う量を減らし、身近な塩分の多い食べ物の摂り過ぎにも注意するとよいですよ。
参考記事:醤油の塩分量はどれくらい?~減塩のコツや他の調味料の塩分量を解説~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:高血圧に悪い食べ物の特徴は?~注意すべき身近な食材と食べ方を紹介~ ※外部サイトに遷移します
摂取カロリーをコントロールして減量
減量は高血圧の改善に効果的なので、摂取カロリーの制限も食事改善のポイントといえます。
前提は主食、主菜、副菜のそろったバランスの良い食事を心がけ、その中で炭水化物を摂り過ぎない、カロリーの高い揚げ物や脂の多い食材を避けるといった工夫が必要です。
さらに、野菜やきのこ、海藻類を積極的に食べる事もオススメです。これらは食物繊維が豊富に含まれているので噛み応えもあり、咀嚼回数の増加により満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぎます。
また、生の野菜は余分な塩分を水分と一緒に体の外へ排出するカリウムが豊富に含まれています。腎臓疾患などによりカリウム制限が必要な方でなければ、1回の食事に1品生野菜を取り入れましょう。
参考記事:血圧を上げる&下げる飲み物・食べ物とは〜身近な食品をランキング形式で紹介〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:高血圧に悪い食べ物はあるの? 〜食事での注意点をまとめました〜 ※外部サイトに遷移します
水分摂取が大切って本当?
水分をとることで血圧が下がることはありません。
ただ、汗をたくさんかいた後に水分を摂らないと血がドロドロになり、脳卒中などの命に関わる病気が起こりやすくなります。
そこで、夏場は1.2L以上の水分を摂るといいでしょう。
しかし心不全を合併している方は、過剰な水分摂取が心不全増悪のリスクとなります。医師から決められた水分量を守るようにしてください。
適度な運動習慣をつける
血圧を下げるために効果的な運動は、有酸素運動が挙げられます。そして、1日30分以上の運動がよいとされています。
また週に一回ものすごく運動を頑張るよりも、毎日少しずつでも運動を続けていくほうが効果的です。
毎日の通勤や家事のすきま時間で、運動できるタイミングを探してみてくださいね。
参考記事:血圧を下げる運動とは〜方法やコツをポイント解説〜 ※外部サイトに遷移します
ストレッチは効果があるのか
ストレッチをすることですぐに高血圧が治るということはありません。
しかしストレッチをすることで体の緊張が取れたり、ストレスが解消でき、それによって徐々に血圧が下がっていくことは期待できます。
大事なポイントは、痛いと感じる手前で止めることです。つい頑張りすぎて痛くても伸ばしてしまいがちですが、逆効果ですので気を付けましょう。
参考記事:【1日2分】血圧を下げるのに役立つストレッチを紹介〜やり方や効果を解説〜 ※外部サイトに遷移します
ストレスをためすぎない
不規則な生活やストレスは、自律神経が乱れて血圧を上昇させてしまいます。
ただ、現代社会のなかで完全に規則正しい生活や、ストレスの全くない生活を送るほうが難しいと思います。
大切なのは、残業続きで睡眠時間が減っている時や家事や育児に追われている時に、自分が疲れていると自覚できることです。
そして疲れていると自覚したら、きちんと休むことです。
ゆっくりと体を休める暇もないときは、大きくゆっくり深呼吸するだけでも体はリラックスできますので、ぜひ試してみてください。
参考記事:ストレスで起こる体や心の異変~生活習慣病への影響も解説~ ※外部サイトに遷移します
血圧を下げるツボってあるの?
「人迎穴」という喉ぼとけを中心としてそこから左右に指2本分離れたところにあるツボを押すと血圧が下がるといわれています。
しかし、医学的な根拠はありません。あくまで、リラックス法の一環として行うとよいでしょう。
禁煙
喫煙習慣は高血圧の原因として知られていますが、改善するためには完全に喫煙習慣を断たなればいけません。喫煙本数を減らすだけでは、その効果は弱いと言われています。
また、個人差はあるものの禁煙を始めて20分後からその効果はあらわれます。継続していき5年後には、脳卒中の発症リスクが非禁煙者と同じレベルになるという報告もあるのです。
「たばこは百害あって一利なし」と言われるほど、私たちの体へ悪影響があるため、とくに高血圧の方は一刻も早く禁煙しましょう。
参考記事:喫煙の影響をわかりやすく解説!~デメリットを理解してたばこをやめよう~ ※外部サイトに遷移します
まとめ
下の血圧が高いのは、体の端のほうにある血管「末梢血管」が固くなり、スムーズに血液が流れないことが原因であることがわかりましたね。
そして下の血圧だけが高い場合でも、今後上の血圧も高くなる可能性が高いです。上の血圧が高くなることは、脳卒中や心血管イベントのリスクとなります。つまり今、下の血圧だけが高いあなたは高血圧を早期発見できたといえるでしょう。
なお早めに対策することで、血圧を下げることは十分に可能です。減塩や減量、有酸素運動などできることから始めてみてください。
将来の健康を損なわないためにも、気づいた時から生活改善していけるといいですね。
参考文献
・高血圧診療ガイド2020 日本高血圧学会 高血圧診療ガイド2020作成委員会 文光堂
・(総説)降圧効果を持つ機能性食品の薬理作用 ~血圧コントロールが期待される食品~ 日薬理誌 2015 環境省 熱中症環境保健マニュアル
・日本高血圧学会 ※外部サイトに遷移します
・日本高血圧協会
・目で見る食品カロリー辞典 [ヘルシー&肥満解消] 株式会社学研パブリッシング
・厚生労働省 e-ヘルスネット 喫煙 ※外部サイトに遷移します
・令和元年国民健康・栄養調査
・週刊日本医事新報 4945号 P58 拡張期高血圧にいかに対応するか?
・週刊日本医事新報 4721号 P63 拡張期高血圧症の発症機序と薬物治療
執筆者:管理栄養士 松原知香
宮城学院女子大学食品栄養学科卒業。卒業後、食品メーカーにて医師や管理栄養士などに向けた流動食・介護食の営業に従事。退職後は管理栄養士ライターとして活動。その中で、医療や栄養に関する情報は正確であるほど難しく、理解しづらい内容で発信されている現状を目の当たりにする。「いつまでも健康でありたい全ての方へ、根拠ある情報をわかりやすく届けたい」という思いから、シンクヘルス株式会社に入社。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:【医師監修】下の血圧が高い原因とは?〜改善・対策方法をわかりやすく解説〜|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】