2024.05.06
【医師監修】高血圧を予防する生活習慣とは~5つのポイントを各分野の専門家が解説~
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。 ※外部サイトに遷移します
執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。 ※外部サイトに遷移します
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日本の七大生活習慣病の一つである「高血圧」。
厚生労働省の発表によると、50歳以上の2人に1人が高血圧だといわれています。
高血圧は自覚症状がほとんどなく「サイレントキラー」ともいわれており、健康診断で初めて気づくというケースも珍しくありません。
さらに、高血圧の状態が続くと動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞などさまざまな疾病につながるため予防や改善が必要です。そこで、高血圧について啓蒙する一環として毎年5月17日は「世界高血圧デー」に定められています。
今回は、高血圧を予防するための5つのポイントについて、食事や運動、心理の専門家が解説します。あなたが高血圧になりやすいかをチェックリストで確認できるので、ぜひ最後までご覧ください。
【セルフチェック】高血圧になりやすい生活習慣
「自分はまだ大丈夫!」と思っている方でも、高血圧になりやすい生活習慣を送っているといずれ高血圧になってしまうかもしれません。
何が問題なのか、早めに気づくことで予防対策ができますよ。
まずは、ご自身の生活習慣で高血圧になりやすいものがあるかチェックしてみましょう。
いかがでしたか?
1つでも当てはまれば高血圧になる可能性がありますし、チェック数が多ければリスクも高くなります。
家庭での血圧測定が大切
【監修医師 古賀萌奈美先生よりコメント】
日本の高血圧患者数は推定約4300万人です。その中で3100万人は管理不良で、内1400万人は高血圧であると気が付いていないといわれています。
さらに日本における高血圧による脳心血管病死亡者は年間10万人とされています。血圧120/80mmHgを超えるほど罹患リスク・死亡リスクは高くなり、脳血管病死の最大の要因です。また、とくに中年期の高血圧は認知症発症リスクを高めることも報告されています。
家庭血圧は診察室血圧よりも各種リスクの予測能に優れていると言われており、40歳を超えたらまずは家庭での血圧測定を習慣にし、ご自身の血圧を把握することが大切です。
高血圧の診断基準
高血圧は収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg以上のときに診断されます。
ちなみに、正常な血圧は収縮期血圧120~130mmHg、拡張期血圧60~89mmHgです。
参考記事:高血圧とは~症状や生活習慣での改善ポイントなど分かりやすく解説~ ※外部サイトに遷移します
高血圧を予防する生活習慣を専門家が解説!
ここからは、喫煙・アルコール・塩分・運動・ストレスの5つのポイントについて、各分野の専門家がわかりやすく解説いたします。
ポイント(1)喫煙について
なぜならタバコに含まれるニコチン(※)の血管収縮作用と血流の低下により、高血圧を引き起こす可能性があるからです。
(※)タバコの葉に含まれる物質で、化学物質としては毒物に指定されている有害物質
また、タバコの煙に含まれる一酸化炭素が赤血球と結びつくことで、体が酸素不足になります。赤血球が増加するといった影響もあり、動脈硬化を促進につながるのです。
実は、タバコを1本吸うと血圧は約10mmHg(人によっては 20〜30mmHg)上昇し、喫煙後15分以上持続するといわれています。
また禁煙を始めた場合の短期的なメリットは、
です。
また喫煙は高血圧を介してだけでなく、直接的に脳血管病の発症リスクを増加させます。そのため長期的にみると心疾患や脳梗塞などのリスク低下など、メリットがたくさんあります。
つまり、禁煙は高血圧予防に欠かせないといえるでしょう。
ただし、禁煙により血圧が上昇したという報告もあります。これは禁煙後の体重増加が関係していると考えられるため、禁煙後の食生活にも注意が必要です。
なお喫煙歴などにより強さはさまざまですが、禁煙を始めるとタバコを吸いたい衝動などの離脱症状が出ることがほとんどです。自己流の対処方法で乗り切れればよいですが、難しいときは禁煙補助薬などを使用する方法もあります。
気になる方は、一度禁煙外来などで相談してみましょう。
参考記事:喫煙の影響をわかりやすく解説!~デメリットを理解してたばこをやめよう~ ※外部サイトに遷移します
ポイント(2)アルコール
「酒は百薬の長」ということわざがありますが、長期にわたり飲酒の習慣がある方は高血圧になるリスクが高いこともわかっています。
高血圧を防ぐためにはアルコールを控えるのが一番ですが、お酒が好きな方にとっては辛いですよね。
どうしてもお酒をやめられない方は、1回あたりの適正量や飲酒回数を覚えるとよいでしょう。というのも、飲酒量が多い人ほど飲酒量を減らすと血圧の減少効果が高いからです。
厚生労働省から発表されている「健康日本21」によると、1日平均純アルコールで約20g程度が適量とされています。
純アルコール20g分の量とは、アルコール度数5%のビールに例えると500ml分です。
ちなみに、他のアルコール飲料の目安量は以下の通りです。
純アルコール量は、商品の成分表に記載されているので、買うときの目安にするとよいですね。
また、飲む頻度としては週に4日程度として、2~3日飲酒しない日をもうけましょう。
参考記事:糖尿病とビールの付き合い方をサクッと解説~気になる選び方もご紹介~ ※外部サイトに遷移します
ポイント(3)塩分
なぜなら、塩分摂取量を減らすと血圧が低下し、脳梗塞や心筋梗塞などの脳心血管病イベントのリスクが抑制できることは多くの研究で証明されているからです。
世界的にみるとWHO(世界保健機構)では、成人の塩分摂取量を1日5g未満と推奨しています。
一方、日本では醤油・みそなどの塩分の多い調味料や漬物などを好む食文化が浸透しており、他国に比べて塩分を多く摂る傾向にあります。令和元年国民健康栄養調査によると成人において1日の平均塩分摂取量は10.1gと、WHOが推奨する量の倍相当です。
そこで、1日に5g未満の塩分摂取量は日本人にとって現実的でない、という観点から成人男性7.5g以下、成人女性6.5g以下と日本独自の目安量を設定しています。
とはいえ、塩分摂取量を減らして損はありません。たとえば、1日の食塩摂取量を2.5g減少させると血圧を下げる効果は得られるといわれています。
それでは塩分摂取量を目安量に近づけるポイントをお伝えします。
参考記事:血圧が上がる原因は塩分?運動不足?~高血圧を防ぐ具体策もご紹介~ ※外部サイトに遷移します
ポイント(4)運動
運動を行うと、血圧を上げようと働く交感神経が優位になり、一時的に血圧が上がります。そして運動を継続することで、自律神経が整い交感神経と副交感神経のバランスが保てるようになります。交感神経と副交感神経のバランスを保てるようになると、血圧が低下しやすくなるのです。運動直後から4-5mmHg程度血圧が低下し、その効果は22時間ほど持続するとされています。
また、長期的に運動を行うことで血管が丈夫になり、動脈硬化の予防にもつながります。実は動脈硬化が進行すると血管の柔軟性が低下し、高血圧を発症しやすくなります。そのため、動脈硬化の予防は高血圧の予防にもつながるのです。
なお運動を長期的に行うと、2型糖尿病の発症抑制や血中脂質の改善にもつながります。高血糖や悪玉コレステロール値が高いと、動脈硬化を進行させます。
では、どんな運動を、どのくらい行えばよいのか見ていきましょう。
高血圧の予防に効く運動は、主に有酸素運動です。上記のやり方を参考に、運動を習慣化していきましょう。
その他にも、筋力トレーニングやストレッチを加えると、さらに高血圧の予防が期待できます。有酸素運動に慣れてきた方は、徐々にストレッチなどを取り入れてみてくださいね。
参考記事:血圧を下げる運動とは〜方法やコツをポイント解説〜 ※外部サイトに遷移します
ポイント(5)ストレス
ストレスには大きく分けると、身体的ストレスと精神的ストレスの2種類あります。実は心理的・社会的ストレスにより高血圧発症が2倍高まることが報告されています。さらに、高血圧患者は正常血圧者の2倍以上のストレスにさらされているとわかっているのです。
そこで原因となるもの、和らげる工夫についてそれぞれご紹介します。
【身体的ストレス】
身体的ストレスは、寒さや痛み、騒音などの外的な刺激が原因です。そのため、これらの刺激を和らげることがストレスを減らす方法となります。
たとえば、急な気温の変化を避けるためにエアコンを控えめにしたり、体温調節のしやすい衣服を選んだりするとよいでしょう。
【精神的ストレス】
精神的ストレスは、仕事・家族の悩みや緊張が原因となります。
心を落ち着かせることが精神的ストレスには効果的なので、腹式呼吸で体の緊張をとるとよいでしょう。気持ちのリラックスとともに、血流がよくなり血圧を下げる効果が期待できます。
ストレスを完全に無くすことはできませんが、予防や早めの対処は可能です。高血圧の予防にストレスケアもぜひ取り入れてみてくださいね。
参考記事:ストレスで起こる体や心の異変~生活習慣病への影響も解説~ ※外部サイトに遷移します
血圧を下げる食べ物や飲み物はあるの?
スーパーやコンビニ、ドラックストアには、消費者庁の許可を得た特定保健用食品など血圧を下げる効果が期待できる食べ物や飲み物が販売されています。
なお、これらはあくまで「高めの血圧を低下させる」効果が期待できるものです。血圧を下げる薬の代わりになるものではありません。
ただし、妊婦さんや腎障害のある方は摂取に注意する必要があります。降圧薬を内服されている方は主治医に相談してくださいね。
参考記事:血圧を上げる&下げる飲み物・食べ物とは〜身近な食品をランキング形式で紹介〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:血圧を下げる方法〜食べ物や生活でのポイントを分かりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:血圧を下げるお茶~選び方やオススメ商品をランキングでご紹介~ ※外部サイトに遷移します
参考記事:高血圧にトマトジュースがよいといわれる理由~デメリットや飲み方も~ ※外部サイトに遷移します
まとめ
高血圧は自覚症状がないため、知らず知らずのうちになっている可能性があります。心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる疾患にもつながるので、高血圧を予防する生活習慣を身に着けることが大切です。
今回は、喫煙・アルコール・塩分・運動・ストレスの5つのポイントについてご紹介しました。ぜひ、ご自身があてはまるポイントに気を付けながら、高血圧を予防する習慣を身につけましょう。
それでは当記事でお伝えしたことが、健康的な毎日を送るヒントとなれば幸いです。
参考文献 ※外部サイトに遷移します
高血圧症有病者の状況,年齢階級別,人数,割合 – 総数・男性・女性
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019, ライフサイエンス出版
飯田 (2020). 循環器心身症の心身医学的アプローチ法 心身医学. 60 ( 5). 417-424.
木村 他 (2017). 労災病院等医学研究報告書 職場高血圧に関する調査研究 : 労働者健康安全機構29労災病院共同研究(第1報)勤労者では月曜午前にダブルプロダクト(収縮期血圧と心拍数の積)が上昇する 日本職業・災害医学会会誌. 65 (5). 252-254
執筆者:管理栄養士 松原知香
宮城学院女子大学食品栄養学科卒業。卒業後、食品メーカーにて医師や管理栄養士などに向けた流動食・介護食の営業に従事。退職後は管理栄養士ライターとして活動。その中で、医療や栄養に関する情報は正確であるほど難しく、理解しづらい内容で発信されている現状を目の当たりにする。「いつまでも健康でありたい全ての方へ、根拠ある情報をわかりやすく届けたい」という思いから、シンクヘルス株式会社に入社。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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提供元:【医師監修】高血圧を予防する生活習慣とは~5つのポイントを各分野の専門家が解説~|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】