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2024.01.16

弱った心臓そのものを元気にする「心臓リハビリ」|「いきいきウォーキング」で死亡率を下げる


心臓リハビリにおいて、歩くことに勝る有酸素運動は存在しません(写真:プラナ/PIXTA)

心臓リハビリにおいて、歩くことに勝る有酸素運動は存在しません(写真:プラナ/PIXTA)

寒い時期には、心臓に大きな負担がかかるといわれています。周囲の温度差によって血圧が急激に変動して、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクが高まるというものです。

適度な運動や充分な睡眠を心がけることが、心臓病の予防につながることはよく知られていますが、「弱った心臓そのものを元気にするメソッドがある」と言うのは、東北大学名誉教授で医師の上月正博氏。上月氏の著書『弱った心臓を元気にする方法』より、長生きに有効な心臓リハビリメソッドを一部抜粋・再構成してお届けします。

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世界基準の医療技術評価で“最高ランク”の信頼

かつて、心臓病といえば「安静第一」が原則でした。心筋梗塞になって内科・外科治療を受けたら安静にしている――これが定説だったのです。ところが、その後の研究によって、この理論は完全に否定されました。心臓病になってじっと安静にしていると、身体の回復やその後の良好な健康維持を妨げてしまうことが判明したのです。むしろ、入院中から適切な負荷をかけた運動を行うことで、身体の回復や予後もよくなり、病気の再発も防ぐことができる。これが今の医学界では揺るぎない事実として推奨されています。

1994年、東北大学病院に全国初の「内部障害リハビリテーション科」が設けられました。そこで内部障害リハビリのひとつとして生まれたプログラムを応用したものが、心臓病からの回復、そして再発防止を目的とした心臓リハビリの運動療法です。ここで「心臓リハビリが効果的だ」という具体的なエビデンスをすべて紹介すると、一冊の本では書ききれなくなってしまうので、代表的なものをいくつかピックアップしましょう。

まず、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の患者さんが心臓リハビリを行うと、行わなかった場合に比べて、その後の心血管病による死亡率は26%低下し、再び入院するリスクが18%低下することがわかっています。そして、あらゆる入院が25%減少し、心不全による入院が39%減少することも証明されています。心臓リハビリを行うことで血管が広がり、体の隅々まで血液が行き届くようになります。血の巡りがスムーズになるので、結果として心臓の負担が軽くなり、失われた活力が戻ってくるのです。

また、医療界では、すべての病気において「どのような治療(医療技術)を行うのがいいか」を、4つの視点からランクづけしています。4つの視点とは「推奨クラス分類」「エビデンスレベル」「Minds推奨グレード」「Mindsエビデンス分類」というものです。それぞれ3〜7段階の指標があり、このうち「I」および「A」が最高ランクに位置づけられています。

心臓リハビリは、急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞)、慢性心不全、心臓手術後、末梢動脈疾患、心臓移植後といった数多くの心臓病において「IAAI」という最高級の評価が与えられているのです。

まずは今の健康状態を知ろう

心臓リハビリを始める前に、注意していただきたいことがあります。それは、自分の健康状態を知ることです。心臓の状態がよくない人は、心臓リハビリメソッドを行ってはいけません。下の項目でセルフチェックしてみましょう。

◆心臓リハビリメソッドに取り組んではいけない人

・不安定狭心症や高度大動脈弁狭窄症、左室流出路狭窄の人
・急性心筋梗塞や急性心内膜炎、急性心筋炎、急性大動脈解離などを発症したばかりの人
・心不全の病状が不安定あるいは足のむくみ(浮腫)が強い人
・重篤あるいは病状が不安定な高血圧症、糖尿病、不整脈などの合併症がある人(空腹時の血糖が250mg/dℓ以上、最大血圧が180mmHg以上あるいは最小血圧が100mmHg以上)
・医師より運動を止められている人

心臓リハビリメソッドは、もともと心不全の患者さんでも安全にできる運動です。ただし、「急性期」にあたる場合は、医師や看護師、理学療法士などの監視下で、病気の回復程度や心臓の状態を随時チェックしながら行われています。早急に治療を行わなければならないほど心臓の状態がよくない人は、取り組んではいけません。さらに、空腹時の血糖が250mg╱dℓ以上の高血糖である人は、まずは血糖を下げる治療に専念してください。

また、最大血圧が180mm以上、あるいは最小血圧が100mm以上ある人も、優先するのは血圧を下げる治療です。その他、かかりつけの医師がいる場合は、どのくらいの運動をしてよいのか、またはどんな治療を優先するべきかなどの指示を仰ぎましょう。

心臓リハビリの運動療法は、他の症状で行うトレーニングのようにきつければきついほど効果を得られるといったものではありません。たとえば「呼吸リハビリ」では、少し強い負荷をかけ、息切れするくらいの運動を指導されます。しかし、心臓リハビリでは、息切れするというのは危険信号となります。運動の負荷は、息切れする手前の段階で止めなければいけません。ここが、他のトレーニングとの大きな違いといえるでしょう。

他には、脈拍にも注意を払う必要があります。呼吸リハビリでは脈拍の制限はありませんが、心臓リハビリに関しては、安静時のプラス30、β遮断薬を使用している場合はプラス20くらいが上限となるように調整して行ってください。脈拍数と心拍数は不整脈がない限り同じ数値になりますので、脈拍を知ることで心拍の状態も知ることができます。

心拍数の正しい測り方

(1)まずは安静時の脈拍数を知る
(2)同じ強さの運動を3分以上した直後に15秒間の脈拍数を測定
(3)(2)の数値を4倍にする
(4)安静時と比較して上限内に収まるよう調整
例:安静時の脈拍数が80ならば、上限は110(β遮断薬服用時100)

ただ単に運動するのではなく、自分で心拍数をモニタリングすることが大切です。

「いきいきウォーキング」で死亡率を下げる

続いて、具体的な心臓リハビリのメソッドを紹介していきます。心臓リハビリでなによりも大切なことは「有酸素運動」です。有酸素運動といっても、いろいろなものがありますが、ベストなのは「ウォーキング」。心臓リハビリにおいて、歩くことに勝る有酸素運動は存在しません。

『医師がすすめる 自力でできる 弱った心臓を元気にする方法 心臓リハビリ メソッド』より

『医師がすすめる 自力でできる 弱った心臓を元気にする方法 心臓リハビリ メソッド』より

「そんなことで寿命が延びるわけがないじゃないか!」。おそらく多くの人が、こう思ったのではないでしょうか。「私は通勤や仕事でたくさん歩いているし、それで充分なのでは?」。こう疑問に思う人もいるでしょう。確かに、歩数はそれなりに稼いでいるかもしれません。しかし、歩数だけでは心臓リハビリに有効なウォーキングとはなっていないのが実情なのです。大切なのは、歩くことを「中程度」の強度で行うことです。毎日30分、あるいは1週間の合計で150〜180分以上の有酸素運動を、「中強度」で行うことが必要だとされています。

日常の歩行の「強度」を引き上げればOK

みなさんは、仕事や家事などを通して、日常的にある程度の歩数を確保しています。しかし、そのほとんどが「低強度」なのです。うつむき加減で歩いたり、誰かとおしゃべりしながら歩いたりするのでは運動強度が低く、心臓リハビリメソッドにおいては有効な有酸素運動とはなり得ません。とはいえ、強度の高いウォーキングを毎日やろうとしても、なかなかやり続けられないのものです。そこで、2つのワザを授けましょう。

まず、毎日30分(あるいは1週間の合計で150〜180分)ウォーキングといいましたが、これは新たに歩く時間を作るのではなく、日常の歩行の強度を中程度に引き上げればいいのです。いままでダラダラ歩いていたところを、次に説明する「いきいきウォーキング」に置き換えればOKです。

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『医師がすすめる 自力でできる 弱った心臓を元気にする方法 心臓リハビリ メソッド』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

そして次のワザは、「ちょこっとウォーキング」です。中強度のウォーキングは、30分連続で続ける必要はありません。「ちょこっとウォーキング」として、5分、10分と小分けにしてもいいので、1日の合計で30分になるようにしていきましょう。

個人差はかなり大きいのですが、30分で歩く歩数は3000歩くらい。一般的に、人は1日に6000歩程度は歩いているので、その半分を「いきいきウォーキング」に置き換えられれば、新たなウォーキングを加えなくても、充分に心臓リハビリに有効な有酸素運動が確保できることになります。

どうです? こうして考えると、けっして無理なメソッドではありませんよね。運動不足の現代人にとっては、運動療法として「いきいきウォーキング」を行うことを心がけるだけでも、弱った心臓を元気にして、寿命を延ばすことにつながっていくのです。

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笑福亭笑瓶さんを襲った「大動脈解離」の正体

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提供元:弱った心臓そのものを元気にする「心臓リハビリ」|東洋経済オンライン

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