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2023.12.01

自律神経を整え体を内側から温める「呼吸」のコツ|冷えた手足がポカポカ、試したい「脈所」温熱法


寒い冬でも温かく過ごすための「温活」をご紹介!(写真:kapinon/PIXTA)

寒い冬でも温かく過ごすための「温活」をご紹介!(写真:kapinon/PIXTA)

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。

今回のテーマは体の不調を和らげて、コンディションを整えるトレーニングの5回目、「冬の寒さに負けないコンディション作り」です。

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今年は11月に入っても暖かい秋でしたが、それももう終わり。いよいよ寒い冬がやってきます。

冬になると体の「冷え」に悩まされる人、意外と多いのではないでしょうか。さて、そこで質問です。夏に比べて冬は代謝(基礎代謝)が下がりやすい季節でしょうか? それとも逆でしょうか?

A 下がりやすい

B 上がりやすい

C 変わらない

冬は実はやせるチャンス?

正解は、Bの「上がりやすい」です。

私たちの体には「ホメオスタシス(恒常性の維持)機能」といって、pH(ピーエイチ=酸性度)、血糖値、体液濃度などの内部環境を一定に保つ能力が備わっています。体温も同様で、周囲の温度変化を脳が感知して、暑ければ代謝を下げ、寒ければ代謝を上げ、というふうに体温を一定に保つように働きます。

ですから、寒い冬は代謝の上がりやすい季節で、やせるチャンスなどとも言われるのです。

恒常性の維持は意識とは無関係に、神経系と内分泌系(ホルモン)の働きによりコントロールされていますが、特に自律神経が大きな役割を果たしています。

皮膚が寒さを感じると、その情報が脳の温度調節中枢である視床下部へと伝わります。視床下部は自律神経のうち、運動時や興奮時に働く交感神経を優位な状態にして、筋肉や肝臓のエネルギー消費を増やして、基礎代謝を上げます。それとともに、手足など末梢と皮下の血管を収縮させて熱の放散を抑えます。

いわば、発熱を促しつつ断熱性を高めることで、生命に直結する深部温度が低下するのを防ぐのです。しかし、体が冷えた状態は健康上、決して望ましい状態ではありません。手足や皮下の血管が縮んで、血行が悪くなるからです。

血液は酸素や栄養だけでなく、熱や免疫細胞(白血球)を運ぶ重要な役割があります。したがって、血行が悪くなれば、体は疲れやすくなるとともに免疫機能が低下して、かぜやインフルエンザなどの感染症に罹患しやすくなってしまいます。

我慢を辞めれば冷えない

問題なのは、この体温調節機能が適切に働かず、暖かい場所にいても手足が温まらず、不快な「冷え」が続くことです。

外気温や室温が高いにもかかわらず、手足などの冷えが続くことを一般的に冷え性(冷え症) といいますが、この根本にあるのは、自律神経が適切に働くことができなくなった状態、よくいわれる自律神経のバランスが乱れた状態です。

現代の私たちの生活では、暖かい部屋で目覚めたあと、寒い外を歩いて暖かい電車に乗り、また冷たい外気にさらされ、オフィスではまた暖気に包まれる……といった具合に、温度変化が頻繁に繰り返されます。

30万年とも40万年ともいわれる人類の長い歴史のなかで、私たちの環境が冬でも暖かい部屋で快適に過ごせるようになったのはつい最近ですから、このように目まぐるしく変わる外気温度の変化に、視床下部や自律神経がうまく適応できないのも無理はないのです。

視床下部、自律神経の負担を減らし、不快な冷えを予防するには、できるだけ“自分が感じる寒暖差を少なくすること”が肝心です。言い換えれば、寒さと暑さを我慢しないことです。

特に過去、「我慢が美徳」とされた世代、体育会系で「NO PAIN NO GAIN」で育てられた方は、我慢が体に染みついていますので、 健康のために頭を切り替えましょう。

外出する際には、マフラーや手袋を身に着ける、カイロをポケットに入れる、コートの下に1枚羽織るなどして、寒さに備えます。

そのまま電車に乗ると今度は汗をかいてしまい、その汗が電車を降りたあとの冷気で体を一気に冷やしてしまいますから、電車に乗る前にそれらを取りましょう。そして、電車を降りたら再度マフラーなどを身に着けて温かい格好をします。

家やオフィスでは、室温を20°程度になるように暖房器具を設定し、寒さを感じるようであれば、衣服やひざ掛けなどで調節しましょう。気温の変化に体が応答するまでにはタイムラグがありますから、暑い、寒いと感じる前に予防的に服装などで調節することが有効です。

自律神経を整える呼吸法

手足が冷えているときにまず考えつくのは、お湯や使い捨てカイロなどで冷たくなった手足を温めることかと思います。ですが、これは無駄ではないものの、あまり効果的ではありません。

冷えは手足に原因があるのではなく、交感神経が優位な状態が続いている結果だからです。手足の血管を拡張させて血行をよくするには、交感神経の働きを鎮め、副交感神経を優位な状態に導くのが最善策です。

冒頭にお伝えしたように、自律神経は私たちの意思や意識とは無関係に、まさに自律的に心臓の拍動、血圧などをコントロールしています。唯一の例外として、呼吸だけは私たちの意思でもコントロールできます。このため、呼吸を調整することで、自律神経の働きを調整することが可能です。

交感神経が優位になっているときには、酸素をたくさん取り入れようとして呼吸が速くなっています。そこで、ゆっくりと呼吸をすることによって交感神経の働きが抑えられ、副交感神経の働きが優位となるのです。

床に寝転がらずとも、イスに座ったままでもできる方法をお伝えしますので、寒い外から家やオフィスに入ったあとなどに、手足の冷えが続くようであれば試してみてください。

寝る前に手足が冷えている場合も同様です。

本来、夜間は副交感神経が優位になって、手足や皮下の血管を拡張させて熱を放散しつつ、深部の温度を下げることで眠りやすい状態になっていきます。赤ちゃんが眠くなると体が温かくなるのはこのためです。寝床に入ったら、肺が広がりやすいように膝を立てて、同様の呼吸法を行ってみてください。

もう1つ、部分的に温めるのであれば、動脈が体表近くを通る「脈所=止血点」を温めるのがいいでしょう。首、脇の下、鼠径部(足の付け根)などに湯たんぽや使い捨てカイロを当てると、温まった血液が全身に熱を運んでくれます。

ただし、40°ぐらいの湯たんぽや使い捨てカイロであっても、長時間皮膚に当て続けると低温やけどを起こすことがあります。湯たんぽはタオルなどでくるみ、使い捨てカイロは直接、肌に当たらないようにします。また、最大でも使用時間は30分とし、使用したまま寝入らないようにご注意ください。

止血点:耳の前・鎖骨の上のくぼみ・わきの下・上腕の中央・肘の内側のくぼみ・指の付け根・鼠径部

より積極的に温活するテクニック

続いて、より積極的に体を温める方法をお伝えします。

比較的手軽にできるのは、食事による温活です。

食事を摂ると副交感神経が優位になるとともに、取り込んだ栄養の一部が分解される際に、熱が生まれるからです。これを「食事誘発性耐熱産生」といい、1日に消費するエネルギー量の10%程度を占めています。

食事は抜かずに、規則正しく摂ることでゆるやかに熱が作られていきます。特に熱産生量が多い栄養素はタンパク質です。あえてプロテインを摂る必要はありませんが、毎食、肉、魚、豆などの主菜を欠かさないようにしましょう。

運動も温活に有益です。

ストレッチをする際は座るか寝るかの楽な姿勢で、一部位ずつゆっくりと時間をかけて伸ばすことで、副交感神経が優位な状態へ導かれます。

ストレッチ中は水の通ったホースを踏むように血行が抑制され、ストレッチ後にはホースが解放されて勢いよく水が流れるように血行も促されます。痛みや寒さを感じると交感神経が働いてしまいますので、暖かい場所で痛みがなく、気持ちよく感じる範囲で行ってください。

有酸素運動を行えば、そのぶんエネルギー消費量が増えて、体温が上がるとともに全身の血液循環量も増えます。汗をかくほど激しく動く必要はありませんし、長時間行う必要もありません。歩行、早歩き程度の運動を10分程度行うだけで、十分に体は温められます。そして運動を終えても熱産生はしばらく続きます。

筋力トレーニングは、間接的、根本的に冷えを改善する方策です。というのも、筋肉は体を動かす運動装置であると同時に、熱を作り出す熱発生装置でもあるからです。基礎代謝量の20%程度を筋肉が担っているので、筋肉が減れば代謝も体温も下がりますが、筋肉を増やせば冷えにくい体質へと改善します。

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なかでも下半身の筋肉は重要です。全身の筋肉のうち、男性では60%、女性では70%程度を下半身の筋肉が占めており、運動不足や加齢で顕著に減少するのも下半身の筋肉です。

次から小さく速く動けば有酸素運動、大きくゆっくり動けば筋力トレーニングになるエクササイズをご紹介しますので、お試しください。

体を温める呼吸法とエクササイズ

■体を温める呼吸法

準備:暖かいと感じる部屋で行います。寒さを感じる場合は厚着をする、膝下に毛布をかける、自宅で裸足で行う場合は足の下にクッションを置く、などして準備します。

(1)安定したイスに深く座って背もたれに寄り掛かり、膝を軽く曲げる。足が床から浮く場合は台の上に乗せる。両手を下腹部に置く。ベルトは緩めておく。
(2)目を閉じるか、下に目線を向けたら、鼻から2~4秒程度かけて息を吸い、両手を押し上げるようにお腹をふくらませていく。
(3)吸いきったら、口をすぼめて4~8秒かけてゆっくり息を吐く。
(2)と(3)繰り返し、1~3分を目安に行う。

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■有酸素運動にも筋力トレーニングにもなるエクササイズ

<有酸素運動バージョン(毎日実施)>
(1)足を前後に50センチ程度開き、脚と同じ方向に腕を振って構える(イラスト左)。
(2)腕を振りながら、20~30センチほど体を沈め(イラスト右)、そこから元に戻る(イラスト左)(1)と(2)を1秒に2回のリズムで1分間繰り返す。
(3)脚と腕を入れ替えて同様に行う。これを交互に2~5セット繰り返す。

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家でできる筋トレでさらに温活

こちらは上記の動きを、より下半身の筋肉に効かせるようにしたエクササイズになります。

<筋力トレーニングバージョン(1~2日おきに実施)>
(1)足を前後に1メートル程度開き、脚と同じ方向に腕を振って構える。
(2)息を吸いながら3秒かけて、腕を振りつつ、うしろの膝が床に触れる手前まで体を沈める。
(3)息を吐きながら2秒かけて元に戻る。これを6~10回行う。
(4)脚と腕を入れ替えて同様に行う。これを交互に1~3セット繰り返す。

イラスト:竹口陸郁

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水を飲んで「体調を崩す人」「健康になる人」の差

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提供元:自律神経を整え体を内側から温める「呼吸」のコツ|東洋経済オンライン

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