2023.09.28
日本人は「脂肪肝放置」の怖さを知らなさすぎる|BMI25以上の肥満男性はほぼ100%脂肪肝だ
意外なことに、ダイエットのしすぎでも脂肪肝になることがあるようです(写真:Luce/PIXTA)
なかなかやせられない……、ダイエットしているのにうまくいかない……。その原因は、肝臓に脂肪がたまった「脂肪肝」かもしれません。やせ体質に変わるためにはまずは肝臓にたまった脂肪を減らして健康な肝臓を手に入れることが重要です。
本稿では医師・栗原毅氏の著書『1週間で勝手に痩せていく体になるすごい方法』より一部抜粋、再構成してお届けします。
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ダイエットのしすぎでも脂肪肝になる!
糖質のとり過ぎで脂肪肝になるなら、全く糖質をとらないほうがよいのでしょうか? 実は、糖質を厳しく制限するような過度なダイエットをすると、逆に脂肪肝を招いてしまうことがわかっています。それが「低栄養性脂肪肝」です。
例えば、ほとんど糖質を摂取しないような食生活を送っていると、エネルギー源として肝臓に蓄えられている中性脂肪が極端に減ってしまいます。私たちは通常、少しくらい食事を抜いても活動できますが、それは体内の中性脂肪がエネルギー不足を補ってくれるから。つまり、中性脂肪は重要な非常用のエネルギーなのです。それが不足すると体が飢餓状態だと勘違いし、体を守ろうとして体中の中性脂肪を肝臓に送るように働きかけます。その結果、肝臓に全身の脂肪が集まり脂肪肝になるのです。
また最近の研究では、たんぱく質が不足するとホルモンバランスが崩れ、栄養素を代謝する機能が低下し、脂肪をため込みやすい体になるということもわかってきました。まだ完全に解明されたわけではありませんが、極端な食事制限が脂肪肝の原因となることは間違いありません。
(画像:『1週間で勝手に痩せていく体になるすごい方法』)
脂肪肝を改善してやせるためにはバランスのとれた食事を適量とることが大切です。むやみに糖質や食事量を減らす行為は、かえって健康を害する恐れがあります。
確率はほぼ100%⁉ BMI25以上なら脂肪肝の可能性大
肝機能の数値を調べる以外にも、脂肪肝の目安となるものがあります。それが、成人の肥満度を表す指標として国際的に用いられる「BMI(ボディマス指数)」です。
BMIは体重と身長から算出する簡単な計算式で、WHO(世界保健機関)の国際的な基準によると、BMI25以上が過体重、30以上が肥満とされています。
しかし、肥満の判定基準は国ごとに異なり、日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が「低体重」、18.5以上25未満が「普通体重」。そして、25以上が「肥満」となり、肥満はその度合いによってさらに「肥満(1度)」から「肥満(4度)」に分類されています。
脂肪肝は中性脂肪が肝臓に多くつき過ぎた状態のこと。つまり、BMI25以上の肥満の人は、脂肪肝の可能性が大。特に男性の場合なら、ほぼ100%が脂肪肝だといっていいでしょう。
このように、BMIは脂肪肝かどうかの指標にもなりますが、BMIから算出される理想体重はBMIが22になるときとされています。ただ、筋肉や脂肪量などに個人差があり、決して正確な値とはいえません。そこで、肝臓内の脂肪はALTが16∪/L以下であれば蓄積されていない状態とされているので、ALT16∪/L以下時点の体重が、その人の理想体重であると考えるのがよいでしょう。
(画像:『1週間で勝手に痩せていく体になるすごい方法』)
脂肪のタイプによって違う!自分に合ったやせスイッチの入れ方
やせるためには体脂肪のもとである中性脂肪を落とさなくてはなりませんが、これにはコツがあります。そのコツさえ押さえれば、意外とラクにやせられるのです。
では、コツとは何か? それが、「やせるプログラム」です。
「やせるプログラム」のポイントは5つ。まず(1)「歯を磨いて口の中をきれいに」歯周病を治すことがやせるための第一歩です。(2)「高カカオチョコレートを食べる」血糖値の上昇を抑え、糖の吸収を緩やかにします。(3)「緑茶を飲む」飲むだけで脂肪を燃やし、また増やさない効果があります。(4)「糖質をちょいオフに」糖質をいつもより一口分減らすだけでもやせ体質に。最後に(5)「軽い運動」簡単な運動で、体の変化を加速させます。
これを行うことによって、体の中でカチッと「やせスイッチ」が入ります。まずは、このやせスイッチをオンにすることから始めましょう。
やせスイッチは、脂肪のタイプによって入るタイミングが異なります。先述しましたが、肥満には内臓脂肪型と皮下脂肪型があります。内臓脂肪型の肥満は男性に多く、BMI25以上の男性ならほとんどの場合、すでに脂肪肝になっていると考えてよいでしょう。けれども、内臓脂肪は「比較的落としやすい」という特徴があります。ですから、やせるプログラムを1週間実践すれば、簡単にやせスイッチを入れることができ、内臓脂肪を減らすだけでなく、脂肪肝の改善にまで繋げることができます。
問題は、女性に多い皮下脂肪型の肥満。こちらは皮膚の下にたまる脂肪なので内臓には影響しませんが、「落としにくい」という特徴があります。つまり、なかなかやせスイッチが入りにくいタイプなのです。やせるプログラムをしっかりと継続していき、8セット以上繰り返した頃には効果を実感できるでしょう。特に難しいことはないので習慣にして、気楽に続けることが大切です。
やせない体になるだけじゃない!脂肪肝を放置すると糖尿病に
もし、脂肪肝を放置するとどうなるのでしょうか。肝炎や肝硬変、肝臓がんといった重篤な病気を引き起こすリスクが高まりますが、なかでも糖尿病と脂肪肝には密接な関係があり、糖尿病の多くが脂肪肝を経て発症するといわれています。厚生労働省の2016年の調査によると、日本の糖尿病有病者数は1000万人以上、糖尿病予備群を含めれば2000万人は下らないと推測されます。
まず、脂肪肝を放っておくと、次第に肝臓の機能が低下します。肝臓は、糖をはじめとする栄養素を代謝する役割を担いますが、代謝機能が鈍ることで糖のコントロールができなくなり、血糖値が不安定な状態に。すると、慢性的に血糖値が高くなって、結果、糖尿病へと発展してしまうのです。
また逆に、糖尿病であることで脂肪肝の状態も悪化します。糖尿病になると、当然、血液中の糖が増加し、血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが分泌されます。インスリンは増え過ぎた糖を肝臓へ送り込み、肝臓はそれを中性脂肪に変えてため込んで、さらに肝臓内の脂肪を増やすことに。
挙げ句の果て、脂肪肝が進むと蓄えきれなくなった中性脂肪が糖として血液中に流れ出し、糖尿病をもっと悪化させてしまいます。つまり、延々と糖が代謝されず、しかも脂肪も増え続ける……という恐ろしい負のスパイラルに陥り、やせにくい体になってしまうのです。
(画像:『1週間で勝手に痩せていく体になるすごい方法』)
肥満、病気、体調不良…命をおびやかす万病のもとになる
脂肪肝を治すことは、あらゆる生活習慣病の予防に繋がります。なぜかというと、生活習慣病のほとんどが「血管病」だといえるからです。
脂肪肝になると、肝臓から中性脂肪が血液中にあふれ出し、血液は脂肪やコレステロールでドロドロになります。さらに血管の壁に中性脂肪がこびりついたり、血液中に増加した糖が血管を内側から傷つけたりして血管が傷んでしまいます。これがいわゆる動脈硬化で、この状態が進むと狭心症や脳梗塞といった重篤な病を引き起こします。
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また、認知症も生活習慣病の1つだといえます。最近の研究では、アルツハイマー型認知症は、脳の血流が悪化することで神経細胞が破壊されて発症するのがわかってきました。脳細胞が健康であるためには、栄養と酸素が含まれた新鮮な血液が必要です。
ところが、血液がドロドロの状態で、ポンプの役割を果たす血管が傷ついてこわばっていたら、体のてっぺんにある脳まで十分な血液を運ぶことができません。脳は血液不足となり、その結果、神経細胞が損傷されて認知症を発症するのです。
ほかにも、糖尿病や高血圧はもちろん、腎臓病、痛風、歯周病なども血管に由来する生活習慣病です。そして脂肪肝は血管病の一因。全て脂肪肝から繋がっているといえるでしょう。
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提供元:日本人は「脂肪肝放置」の怖さを知らなさすぎる|東洋経済オンライン