2023.09.28
知らないうちに低栄養?高齢になると心がけたい食事のポイントを解説します!
中高年世代では、肥満やメタボリックシンドロームを警戒して栄養の摂りすぎに注意する必要があります。しかし、さらに歳を重ねた高齢期は“低栄養”に注意が必要なことをご存知でしょうか?日ごろ健康のことを考えて行動していることが、実は“低栄養”のリスクを高めているかもしれません。
この記事では“低栄養”についての解説と、今すぐに取り組める食生活の改善ポイントをお伝えします。
“低栄養”って何?
低栄養とは、健康的な生活を送るために必要な量の栄養素が足りていない状態のことです。令和元年の「国民健康・栄養調査」の結果によると、65歳以上の高齢者で低栄養の傾向がある人の割合は、男性12.4%、女性20.7%、男女とも85歳以上でその割合が高くなる傾向が見られます。
低栄養となる原因には、独居などの生活状況、うつや認知機能の低下による心の状態、病気により食事が困難になることなど、多くのことが影響します[1-3]。
“低栄養”そのままにしておくとどうなるの?
低栄養の状態が続くと、骨格筋の筋肉量や筋力の低下が起こり、転倒による骨折のリスクが増加します。高齢期の骨折・転倒は、介護を必要とする原因の1つ。栄養素の中では、たんぱく質を摂る量が減ることにより、免疫機能が弱まり、風邪や感染症に罹りやすくなったり、傷や術後の治りが遅くなったりします。その他にも、老化に伴う様々な機能低下や、健康障害に陥りやすく介護を必要とする一歩手前の“フレイル”という状態になりやすいことが研究で明らかになっています[3-6]。
意識したい食事のポイントは?
高齢になると、食事の量が減り、さっぱりした料理を好む傾向にあるため、食事内容が偏り、エネルギーやたんぱく質の不足が起こりやすくなります。十分なエネルギー、栄養素を摂るために、日々の食事に意識を向ける必要があるのです[1]。
(1)合言葉で栄養状態を良好に!
色々な食品をとることで、栄養状態を良好に保つことができます。合言葉は「さあにぎやか(に)いただく」です[7,8]。
◻️「さ」は魚 缶詰なども利用しましょう
◻️「あ」は油 油は大切なエネルギー源
◻️「に」は肉 歯に心配がある場合は、ひき肉がおすすめ
◻️「ぎ」は牛乳 牛乳が苦手な場合は、チーズやヨーグルトの乳製品に置き換えもOK
◻️「や」は野菜 旬のものは、他の時期のものより栄養素が高い
◻️「か」は海藻 小パックのもずくやめかぶ、汁物や和え物に乾燥のカットわかめがおすすめ
◻️「い」はいも類 蒸しておやつとして食べてもOK
◻️「た」は卵 炒め物や煮物、茹でたりと用途は多め
◻️「だ」は大豆製品 納豆や豆腐など、あと1品という時に活躍
◻️「く」は果物 おやつの代わりとしても便利
(2)たんぱく質を摂る
たんぱく質は、肉類、魚類、卵類、乳類、豆類に多く含まれています。これらに該当する様々な食品を朝昼夕の3回の食事で摂ることを意識してみましょう。食事だけでは難しい場合は、間食で補うのも手軽でおすすめです。プロテインバーや魚肉ソーセージ、ゆで卵やチーズ、牛乳、枝豆など、簡単に準備できるものを活用するのも良いでしょう[5,8]。
便利なものを活用しましょう
歳を重ねると、若い頃に比べて食事の準備が大変に感じることはありませんか。そんな時はコンビニやスーパーのお惣菜、缶詰や冷凍食品、宅配のお弁当なども活用しましょう。食事は毎日のことなので、無理せず便利なもの取り入れることも効率的に栄養素を摂ることの近道になります。
“低栄養”を予防して、元気に過ごそう!
低栄養は誰にでも起こることがある身近な問題です。早い時期から普段の食生活を見直し、意識を向けることで高齢期も元気に過ごせます。「さあにぎやかにいただく」を合言葉に様々な種類の食品を取り入れ、日々の食事を楽しみながら、健康づくりをしていきましょう。
【参考文献】(すべて2023年8月2日閲覧)※外部サイトに遷移します
[3]厚生労働省:「日本人の食事摂取基準」(2020年版),高齢者
[4]公益財団法人:長寿科学振興財団,健康長寿ネット/高齢者の低栄養
[5]公益財団法人:長寿科学振興財団,健康長寿ネット/フレイルと栄養
[7]東京都福祉局:介護予防・フレイル予防,食べるフレイル予防
[8]文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
【プロフィール】管理栄養士 橋本牧子
結婚・出産を機に食事の大切さを改めて感じ、食事や栄養について学ぶべく、子育てをしながら大学で学び直し管理栄養士免許を取得。さらに食の学びを深めるべく、専門フードスペシャリスト、フードコーディネーターを取得。主に離乳食講座の講師・乳幼児健康診査での栄養相談や、シニア向けの健康教育、その他にレシピ作成や料理動画の撮影等にも携わる。現在はコラム執筆に活動の場を移して活動中。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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