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2023.02.14

「人を攻撃する人」ほど認知症になりやすいワケ|怒りは表現してしまうとどんどん大きくなる


攻撃的な物言いを辞さない姿勢、知らないうちに「ののしり体質」になってしまっているかもしれません(写真:Graphs/PIXTA)

攻撃的な物言いを辞さない姿勢、知らないうちに「ののしり体質」になってしまっているかもしれません(写真:Graphs/PIXTA)

イライラしているとき、何か不満が溜まっているとき、憂さ晴らしのようについ、他人に対して攻撃的な言葉を投げかけてしまうことは誰にでもあると思います。しかし、他人を攻撃したり否定的な目で見たりすることは、逆に自分にとってマイナスの効果を生んでしまうのだそうです。ここでは、怒りに吞み込まれず穏やかな気持ちで過ごすヒントを、言語学者の堀田秀吾氏の著書『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』より、一部抜粋・再編集してご紹介します。

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他人をののしると自分が損をする

ネット社会と言われるようになって久しいですが、SNS上などで匿名でコメントをできる場がどんどん増えています。

普段は腰が低く見えるけれど、ネットでは攻撃的な物言いを辞さない、いわゆる「ネット弁慶」というような人も少なくありません。

批判する対象が見知らぬ他人であれば、なおさら攻撃的になり、それをストレス解消の手段にしている……という人がいるかもしれませんが、これは止めておくべき行動です。

東フィンランド大学のネウヴォネンらによる研究で、世間や他人に批判的な物言いをする度合いを測る実験が行われました。

この結果、「人を信用できない」と考えて、攻撃的な物言いをしている人は、認知症になるリスクが高くなるという結果が得られたそうです。

脳と身体の関係では、人間は考えてから行動するのではなく、「行動してから考える」性質があるといわれています。つまり、考えたり心で念じたりすることよりも、実際の行動の方が脳に与える影響が強いということです。

日常生活であれ、ネット上であれ、他人をののしるような行動を繰り返していると、自然と「ののしり体質」になっていってしまうのです。

人格は日常の積み重ねです。

表面上をいくら取り繕ったとしても、日頃からの「ののしりグセ」がついていれば、徐々に徐々に、態度や雰囲気にあらわれるようになっていきます。

怒りは表現してしまうとどんどん大きくなる

これに関連して、アイオワ大学のブッシュマンらの研究があります。

実験では、被験者たちに「怒ったときはパンチング・バッグを殴ると、怒りの解消に効果的」という記事を読ませて、そのあと怒らせてみて、どんな行動に出るかを調査したものです(テレビ番組のような実験ですね……)。

その結果、パンチング・バッグを殴った被験者はバッグを叩くことを楽しんだものの、怒りはおさまるどころか、怒りの対象の相手、ひいては関係ない人にまで怒りをぶつけるようになったそうです。

つまり、怒りの行動は、表現してしまうと広がってしまうということです。したがって、イライラしたとき、暴言を吐きたいときは、瞬間的に行動するのではなく、我慢をしてください。具体的には、何か言いたいことがあっても、それを悪い言葉ではなく、良い言葉に言い換えようと考えてみてください。

スワースモア大学のアシュという心理学者による有名な実験ですが、ある人を形容するのに、

(1)知的な、器用な、勤勉な、温かい、決断力がある、実践的な、注意深い

(2)知的な、器用な、勤勉な、冷たい、決断力がある、実践的な、注意深い

と、2つのパターンで紹介したとき、印象にどれくらい違いがあるか調べました。

すると、後者に対する評価は否定的になりました。

しかし、見比べるとわかりますが、先の紹介で違うのはたった一語だけ、「温かい」と「冷たい」だけです。にもかかわらず、後者の評価が否定的なものが多くなったのです。

たとえば、議論などで反対意見があったとして、それが正当な内容だったとしても、ネガティブな表現、人をののしるようなニュアンスを加えてしまうと、相手の感情をむやみに刺激することになり、話し合いになりません。

怒りは、生物としてより原始的な脳である「大脳辺縁系」から起きる働きですが、人間はそれをコントロールする「大脳新皮質」が進化しています。つまり人間だからこそ、怒りは抑えられるのです。

怒りの感情も、大脳新皮質が稼働し始めるまでの少しの時間をおけばおさまります。ですから、何よりも重要なのは瞬間的に怒らないこと。怒らない選択肢もあるんだ、怒るかどうかを選ぶことができるんだ、ということを常に頭に入れて、ふ〜っと、深呼吸などをしてください。

「ネガティビティ・バイアス」の罠

人生には人間関係の悩みがつきものですね。

その典型的な問題の一つが、上司や部下、嫁と姑、先輩と後輩といった上下の人間関係で起きる問題です。

たとえば、「上司のパワハラに、もう耐えられない!」とか「部下がとにかく人の話を聞いてくれない!」とか、立場が違えば見方は変わるもので、ふとしたことがきっかけで相手のことが嫌いになってしまいます。

そして、気づけば嫌いな部分がたくさん見えてきます。「話し方が嫌い」「食べ方が嫌い」「髪型が嫌い」……そうすると最終的には「顔も見たくない!」とか「同じ空気を吸いたくない!」というように関係はどんどん悪化していきます。

そんな事態は、どうにか避けたいものですね。

そこで、まず認識していただきたいのは脳にはネガティブな情報のほうに価値を見出しやすい傾向がある、ということです。

この効果を「ネガティビティ・バイアス」と言います。心理学者のジョナサン・ハイトは自著『しあわせ仮説』でこのように述べています。

「人の心というものは、良い物事に比べて、同程度に悪い物事に対して、よりすばやく、強く、持続的に反応するということが心理学者によって繰り返し見出されている。私たちの心は、脅威や侵害や失敗を発見して反応するように配線されているため、すべての物事を良く見ようとしても、単にできないのである」

要するに、ネガティブな情報が気になるのはあたりまえのことなのです。
カリフォルニア州立大学デイビス校のレジャーウッドらは、実験参加者を2つのグループに分け、「新しい手術法」に対する評価を調査しました。1つ目のグループには「成功率は70%」とポジティブに説明し、もう1つのグループには「失敗率は30%」とネガティブに説明しました。

その結果1つ目のグループはこの新しい手術を良いものであると見なし、2つ目のグループは良くないと考えました。

次に、最初のグループに、「失敗率は30%」と伝えました。すると、彼らはその手術は良くないものだと感じるようになりました。 そして30%の失敗率だと説明を受けていたグループは、「成功率は70%」と伝えても、彼らの意見は変わりませんでした。

つまり、彼らが最初に抱いた手術に対するネガティブな印象は消えなかったのです。

このようなメカニズムで、私たちはついネガティブな情報を注目して見てしまう、ということを忘れてはいけません。

「褒められて伸びる」は本当だった

その上で、解決法を考えてみましょう。

人間関係の解決法は、「人を減点評価で見ない」ということに尽きます。
つまり、私たちは放っておけば人のイヤなところばかり目についてしまうので、意識的にそこには目をつぶる、「悪いところではなく、良いところだけを見よう」と腹をくくることです。

100点の人間などどこにもいないのですから、減点法で嫌いになっていくのではなく、加点法をしていくことが、人付き合いをラクにする秘訣です。

これに関連して、エラスムス・ロッテルダム大学のヴァンディーレンドンクとスタムによるこんな研究結果があります。

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この実験では、答えを間違えると報酬が減る、いわゆる減点法で学習をさせた被験者たちと、最初から報酬のない状況で学習させた被験者たちからデータを取り、睡眠後の記憶定着率を比較しました。

すると、後者の成績(最初から報酬がない組)のほうが良かったというのです。

また、心理学者のエリザベス・B・ハーロックが行った古典的な研究で、小学4年生と6年生の児童を、同じ教室で(1)いつも褒められるグループ、(2)いつも叱られるグループ、(3)褒められも叱られもしないグループに分けて、5日間にわたって計算問題をやってもらいました。

結果、(1)の褒められたグループはだんだん成績が良くなり、(2)は最初だけ少し成績が上がったものの、だんだん下がり、(3)のグループは特に変化が見られなかったということが明らかになりました。

人間には承認欲求がありますから、「○○は褒められて伸びる子」というのは、誰にでも共通する資質のようです。そもそも褒められることがイヤな人なんていないでしょう。ならば、減点法ではなく、良いところを見る、良いところを伸ばす、その方針を徹底することが、教育には必要なのでしょう。

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提供元:「人を攻撃する人」ほど認知症になりやすいワケ|東洋経済オンライン

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