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2021.07.29

日本人が知らない「ビタミンD」不足の怖さとは|適度に日光を浴びて脳の若さと心の健康を保つ


老化の進行速度に影響を及ぼすとされる「ビタミンD」。その効果について紹介します(写真:LumenSt/iStock)

老化の進行速度に影響を及ぼすとされる「ビタミンD」。その効果について紹介します(写真:LumenSt/iStock)

iTunesの健康関連ポッドキャストでナンバーワンとなった番組「The Genius Life」のホストを務めるマックス・ルガヴェア氏が、現代生活に疲れた私たちのために、新しい健康指南書『ジーニアス・ライフ』を上梓した。

食生活のみならず、エクササイズや自然との関わりなど生活全般についてまとめられ、万全の体調で生き抜く力を高めることを意図した本書から、脳や心臓、免疫系、そして老化の進行速度に影響を及ぼすとされるビタミンDの力について見ていこう。

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慌ただしい都会生活は心の健康によくない

私はニューヨーク市で生まれ育った。都会で過ごす少年時代は楽しかった。だが10代になると、都会の慌ただしい生活が心の健康にあまりよくないことを感じていた。

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自然に触れる機会が少ないために、いつも自分が自然と切り離されているように感じ、長い冬には季節性のうつ症状にも悩まされた。

幸い、私の両親は都会を離れて過ごす時間を大切にしてくれ、まだ私が幼い頃に、ロングアイランドの東端に位置するレムセンバーグという小さな町に一軒家を購入した。週末はたいてい家族揃ってその家へ出かけ、松林のなかで遊んだ。

当時はまだぼんやりと感じていただけだったが、現代の科学は、自然との触れ合いが心身の健康に重要であることを証明しはじめている。

ここでは、日光を浴びてビタミンDを合成することが健康にすぐれた効果をもたらし、私たちのあらゆる器官に影響を及ぼすことを述べよう。

◆ビタミンDは老化の進行速度を遅らせる?

充分な量のビタミンDを合成するのは簡単だと思うだろう。ところが実際、アメリカ人の42%はビタミンD不足だという。それには、日焼け止めの使いすぎや、1日の93%の時間を屋内や車内で過ごすといった理由などもある。

老化の具体的な原因は誰にもわからない。だが最近では、過剰な炎症にあるというのが定説となっている。

もちろん炎症のレベルにはさまざまな要素が関係している。たとえば、社会的なきずなを築いている、健康的な食事や活動的な生活を心がけている、生きがいのある人生を送っている、といったことが指摘されている。だがさらに、ビタミンDもそれと密接に関係している可能性が高い。

米英の研究者が、2160人の女性の双子を対象にビタミンD濃度と炎症との関係を調べたところ、同じ双子であっても、ビタミンD濃度が高いほうが炎症レベルは低かったという。言い換えれば、同じDNAを持つ、同じ年齢の成人であっても、ビタミンD濃度が低いと老化が早く進むということだ。

とはいえ人間の老化の研究は明らかに難しく、これだけではなんとも言えないし、決定打ということもない。ビタミンDという変数が寿命に及ぼす影響を確かめるときには、人間と似ているが、もっと寿命の短い生物を対象に選ぶ必要がある。

その理想的な対象とされているのが線虫だ。体調約1ミリメートルで、寿命は2週間ほど。バック老化調査研究所の専門家は、充分に成長した線虫にビタミンDを投与し、驚くような発見をした。平均寿命がなんと33%も延びたというのだ。

ビタミンDはアルツハイマー病に効果あり?

ビタミンDは血液中に入ると、体細胞の受容体と結合する。この受容体は、すべての遺伝子の5%に当たる約1000の遺伝子発現に影響を与える。がんや心臓疾患の予防から免疫系の正常な機能まで、心身の健康と幸せな生活のほとんどに関係がある遺伝子だ。

誰も、エンジンの5%が不具合の飛行機には乗らないだろう。あなたのエンジンを、そんな欠陥状態のままにしておくべきでもない。

脳にもたくさんのビタミンD受容体がある。ビタミンDは脳内で抗酸化レベルを調節し、酸化ストレスを中和して緩和する。アルツハイマー病やALS(筋萎縮性側索硬化症)に伴う、神経細胞の過剰な活動も抑制する。また、免疫細胞を刺激して、アミロイドβを除去する。これは、アルツハイマー病を引き起こすとされているタンパク質だ。

最近のメタ分析のひとつは、アルツハイマー病の最大の環境リスク要因として、ビタミンD不足をあげている。健康で血中ビタミンD濃度が正常な人の場合、歳を重ねても認知能力が高く、その低下速度も2〜3倍遅いという。

さらに詳しい研究が必要だろうが、プラセボを用いた少人数の実験では、血中ビタミンD濃度の低いアルツハイマー病患者に、1日わずか800IU(IUは国際単位)のサプリを12カ月間処方しただけで、症状の進行を妨げたという研究結果もある。

自己免疫疾患とビタミンDの関係

最近、自己免疫と呼ばれる免疫系の異常が増えている。自己免疫とは、免疫系が変調をきたし、あなた自身の細胞や臓器を攻撃するというからだの反応で、世界中で何百万人もの人たちが、多発性硬化症や炎症性腸疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患に苦しんでいる。

これらの原因は、正確にはわかっていない。しかしこのところ注目されている説は、人生の早い時期に土や泥と親しむことが減って、体内の免疫系と土壌のバクテリアとが充分に相互作用しなくなったからだというものだ。

そしてもうひとつは、私たちが充分に日光を浴びていないという指摘である。自己免疫疾患の患者は、たいていビタミンDの濃度が低いという。

ビタミンDと自己免疫との関係については、さらなる研究が待たれるが、一部の自己免疫疾患に対して、ビタミンDは治療手段となるか、少なくとも進行を抑える役には立ちそうだ。

◆ビタミンDは抑うつを防ぐのか

約4000人の成人を対象にしたある大規模な調査では、ビタミンDが不足すると、その後の4年間で抑うつの発症リスクが75%も増加することがわかったという。

相関関係は必ずしも因果関係を意味するものではないが、薬物治療、慢性疾患、身体活動などほかの関連を調整したあとでも、やはりビタミンD不足と抑うつとのあいだには、深い関係が見られた。

ビタミンDは神経伝達物質の生成と調達を助ける。そのうちのひとつがセロトニンだ。この神経伝達物質が不足すると、抑うつ症状が現れる。

薬に頼るのもひとつの方法だが、抗うつ薬はセロトニンの量を増やしてくれるいっぽう、副作用があって服用の中止が難しく、過剰処方されやすい。

気分が落ち込むようなら、適度に太陽の光を浴びることをおすすめしたい。太陽の光は、体内時計を整えてくれると同時に、あなたの皮膚でビタミンDを合成してくれるからだ。

どのくらいビタミンDをとればいいか

1日にどのくらいのビタミンDをとればいいのか。この問いに答える際には、まず適切な血中濃度の範囲を定義する必要があるが、残念ながら広く確立された最適な濃度というものはない。

2014年に32件の研究をメタ分析したところ、次のような発見があった。がんや心臓疾患など、さまざまな原因による早期死亡のリスクが最も低かったのは、ビタミンDの血清25(OH)D濃度が40〜60‌ng/mlの時だった。50‌ng/mlに達すると、認知能力にも効果があったという。

これをビタミンDの摂取量に換算すると、ほとんどの人にとって1日2000〜5000IUが、先の範囲をクリアすることになる(日本では4000IUまでとされる)。

太陽の光を浴びるのは、ビタミンDを増やす理想的な方法だ。日光はビタミンDを生成する自然な経路に働きかけるだけでなく、一酸化窒素を生成して血圧を下げてくれ、体内時計も調整してくれる。

ただし、適切なビタミンD濃度を保つために必要な日光を浴びる時間は、季節や年齢、地域、大気の状態、肌を露出しているかしていないか、また肌の色などによって異なる。またDNAを損傷してしまわないよう、日焼けには十分気をつけて。

サプリで摂取する時には、ビタミンD3を選ぶこと。日光を浴びて皮膚で合成するものと化学的に同じだからだ。もちろん、サプリをとったからといって、偏った食生活や不健康なライフスタイルを解決してくれるわけではないが。

なお、生物学では常に「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」だ。日光の浴びすぎには気をつけよう。また、サプリなどでのビタミンDのとりすぎは高カルシウム血症を招いてしまう。

先にも述べたように、広く確立された最適な濃度というものはない。サプリで摂取するのであれば、定期的に簡単な血液検査を受けて、あなた自身のビタミンDの血中濃度を医師にチェックしてもらおう。

(構成 笹幸恵)

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提供元:日本人が知らない「ビタミンD」不足の怖さとは|東洋経済オンライン

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