2021.01.21
夜中にトイレに行く人が気を付けたい6つの事|ノンレム睡眠は加齢とともに浅くなっていく
ぐっすり寝るためにはいくつかのポイントがあります(写真:8x10 / PIXTA)
肝臓の数値が気になったり、血圧を毎日測る人がいても、脳の健康状態を意識している人は多くはいません。特に脳の健康で気を付けたいのが睡眠です。順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊氏が上梓した『脳寿命を延ばす―― 認知症にならない18の方法』を一部抜粋・再構成し、脳と睡眠の関係を紐解きます。
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(1)最適な睡眠時間は6.5~7時間
睡眠と脳の健康には、非常に深い関係があります。動物実験の結果、睡眠時間を短くしたラットの脳には、老廃物のアミロイドβが溜まってしまうことがわかっています。人間でも、一晩の寝不足でアミロイドβの蓄積が増えるというデータがあります。
アミロイドβは普通、寝ている間に代謝、分解されて、脳の外へ洗い流されます。ところが睡眠時間が短いと、排泄が遅れてしまうのです。寝不足が続けば、アミロイドβはどんどん蓄積されてしまうことになります。
最適な睡眠時間には、個人差があるものです。しかし疫学的なデータからみると、6時間半から7時間眠る人が最も認知症になりづらいことがわかっています。ところが、6時間未満と8時間以上はどちらも2倍、認知症になりやすい。寝不足も寝すぎもいけないというのは、興味深い事実です。
脳に悪影響を及ぼす睡眠障害
脳の健康に悪い影響を及ぼすのは、寝不足、言い換えると睡眠障害です。睡眠障害は、なかなか寝つけない入眠困難、長い時間寝ているはずなのに疲れが取れない熟眠困難、夜中や早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒の3つに分けられます。
精神医学的な面から言うと、神経症の人は入眠困難が多く、うつの人には早朝覚醒が多い傾向があります。
ただし、現在は睡眠時間の短かさや質よりも、眠くて勉強や仕事ができないなど昼間の活動に支障があることを重視して、睡眠障害と定義するようになってきました。
(2)昼間の覚醒と夜間の睡眠のリズムを整える
1日の4分の1から3分の1に当たるわけですから、人間はかなり長い時間寝ています。身体と脳を日ごとにリセットするには、それだけ長い時間が必要なのです。その6~7時間のうちに、レム睡眠とノンレム睡眠という波が交互に訪れることは、よく知られています。
レム(REM)とは「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の略です。レム睡眠の時間帯には身体は休んでいるのですが、その名の通り目がぴくぴく動いています。脳は覚醒状態にあって活発に働き、記憶の整理や定着を行っています。夢を見るのは、レム睡眠の間です。
目が動かないノンレム(non─REM)睡眠は深い眠りで、脳も休んでいると考えられています。ところが、脳の休息に欠かせないノンレム睡眠は、加齢とともに浅くなります。たとえばトイレに起きやすくなるのは、眠りが浅くなるせいです。睡眠障害がなくても、老化によって睡眠は浅く短くなり、質が低下していくのです。
そのため、昼間の覚醒と夜の睡眠のリズムを整えることが、若い頃より意味をもちます。昼間の過ごし方が、質の高い睡眠をもたらすからです。
なるべく太陽光線を浴びたり、運動して身体を疲れさせるなど、夜になったら眠りにつきやすい環境を整えることです。
脳には体内時計があり、習慣のリズムに沿ってセッティングがされるのです。 「何時に寝て、何時に起きればいいか」は個人差があります。早寝早起きが基本ですが、夜9時に寝れば明け方の3時か4時に目覚めてしまい、昼間は眠気と戦わなければいけなくなる場合もあります。規則正しいことは大切ですが、正しいリズムとは言えません。
生活習慣や個人のライフスタイルによりますが、現代社会では、身体にとっては11時ごろに寝て、6〜7時ごろに起きるのが自然でしょう。
(3)寝具や空調などの環境を作る
寝具や空調などの環境作りも、気になる点です。眠気が訪れるのは、身体がいったん温まってから冷めるときだと言われています。寝る前に入浴すれば、湯上がりから冷めてベッドに入るタイミングで眠気がやって来ます。身体のリズムは、うまく利用すべきです。
室温はどのくらいが適当かという医学的なデータはありませんが、冬は暑すぎず、夏は涼しすぎず、身体に風が直接当たらない間接空調のほうが心地いいでしょう。いびきをかく人や副鼻腔炎がある人は、仰向けより横向きの姿勢が寝つきやすいはずです。
「楽しいこと」を思い浮かべることが大事
(4)時間と気持ちの余裕を持つ
時間と気持ちの余裕をもって、睡眠に入ることが大切です。翌日がゴルフで、ワクワクして眠れないのならいいですが、「明日も仕事だから早く寝なくちゃ」とか「あと5時間しかない」と思いながらだと、精神的な圧迫になってしまい、かえって寝付けないものです。
私は患者さんに、なるべく楽しいことを思い浮かべながら眠りにつきましょう、とアドバイスしています。
一定のルーティンを作っておくと、脳がそれを覚えて「これから眠りにつくんだな」と学習してくれます。昼間の活動的な交感神経から、夜の安らぎの副交感神経への切り替えを、身体のリズムにしてしまうことが大切です。
睡眠の質を高めることは、脳の老化防止になり、認知症の2次予防、3次予防にもなるのです。
(5)医師の処方で薬の服用も検討する
生活のリズムを整えても熟睡できなかったり、昼間の睡魔に悩まされる人は、薬の服用を検討してみるのもいいでしょう。睡眠薬と聞くと抵抗があるかもしれませんが、いまは安全な睡眠導入剤がたくさん出ています。
安全と言う意味は、2つあります。1つは、脳内ホルモンに作用して自然な眠り、自然なリズムを作るという意味。もう1つは、副作用が少ないという意味です。
以前の睡眠薬はベンゾジアゼピン系といって筋弛緩作用があり、身体がふらつくなどの副作用がありました。
いまは、非ベンゾジアゼピン系の薬が使われています。ルネスタ、マイスリー、アモバンなどです。筋弛緩作用による副作用が少ないので、特に高齢者に適しています。
そのほか、睡眠や体内時計に深く関わる脳内ホルモンのメラトニンに働きかけるロゼレム、覚醒の脳内ホルモンであるオレキシンをブロックするベルソムラとデエビゴ、といった薬があります。医師の処方に従って、適切に使ってください。
寝酒は睡眠が浅くなる原因
(6)寝酒はお勧めできない
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寝酒はお勧めできません。寝つきをよくするような気がしますが、睡眠は浅くなり、早く目が覚めてしまいます。
旅行に行ったときなど、酒を飲んで寝ると翌朝は早く起きて、家にいるときより朝ご飯をたくさん食べられたりします。あれはアルコールの作用で、睡眠が浅くかつ短くなっただけです。
毎晩の飲酒を脳にセッティングすると、浅くて短い睡眠となり、脳の老化が進んでしまいます。
そして、飲酒の習慣が肝臓と脳を痛めることは、改めて言うまでもないでしょう。
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提供元:夜中にトイレに行く人が気を付けたい6つの事|東洋経済オンライン