2020.03.06
筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 |ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる
NHKの「みんなで筋肉体操」でお馴染みの近畿大学、谷本道哉准教授がすぐにでもできるエクササイズのコツを教えます(写真提供:中央公論新社)
国民総肥満、定年延長が叫ばれる昨今、健康管理と継続的な運動を通じ、70歳まで働けるカラダを維持することはもはや義務とも言えそうな状況にある。一方、人気TV番組出演の谷本道哉・近畿大学准教授の著書『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方-なぜあの人だけが老けないのか?』 によると、ちょっとのコツを取り入れるだけで、普段の「歩く」がエクササイズになるという。
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日常生活の中で最もエネルギー消費の大きい活動は「歩くこと」です。
普段の歩きをキビキビ行う、歩いていける距離ならば車や電車などを使わずになるべく歩く、といったことを心がけるだけでもずいぶん違うものです。
つまり、普段の移動をエクササイズと考えてしっかり歩けば、すべての道があなたにとってのプライベートジムになるともいえますね。
特別な運動以外の1日の身体活動量はおおよそ「歩数」に反映されます。そして1日の歩数は、歩数計をつけることで把握することができます。いまはスマートフォンのアプリなどでも気軽に計測できるようになりました。
そこで皆さんにはぜひ歩数計をつけ、「自分の日常の活動量」を把握していただきたいと思います。
目標は身体活動基準で示す23メッツ・時/週に相当する、「8000歩から10000歩」。自分の活動量がこの目標値に比べてどのくらいなのか、まずは知りましょう。
速く歩くほど、運動効果がぐんと高まる
私たちが歩くとき、自然と「体の振り子」を利用しています。
脚を振り出すときは、振り出す脚をぶら下がった振り子にし、蹴り出すときは、棒が前に倒れるように、体を前に倒す、倒立振り子の揺れを利用しているのです。歩いているときというのは体という振り子の持つ揺れに自然と合わせているため、歩行動作というのは実はとても効率がよい動きなのです。
振り子の揺れ自体はエネルギー消費「ゼロ」であり、その揺れを存分に利用して、自然の速度で歩いているとき、実は私たちはエネルギー消費を抑え、ラクに進んでいるわけです。
しかし図のとおり、普段の歩きよりも速くすればするほど、この振り子の力に頼れなくなるので、ぐんと運動効果が上がるのです。
例えば通常歩行の70m/分を1.5倍のスピードに上げたとします。やや足早にシャキシャキ歩くくらいでしょうか。
この場合、エネルギー効率は1.6倍ほど落ちます。これは、同じ距離歩いた場合のエネルギー消費が1.6倍になるということ。そして歩くスピードが1.5倍ですから、おおよそ1.5×1.6で、なんと約2.4倍の運動の強度ということになるのです。
普段の生活で、階段を積極的に使うこともとてもおすすめです。
2階や3階くらいまでならエレベーターやエスカレーターではなく階段を使いましょう。とはいえ、「階段を積極的に」といわれても、あまり体を動かしていなかったり、エレベーターに慣れすぎた人にとっては簡単ではないかもしれません。
そこで、階段をスイスイ上るのに役立つ、ちょっとした体の動かし方のコツを紹介しましょう。筋肉、腱のバネを利用した「反動動作」を使った階段の上り方です。
私たちの筋肉・腱には、弾性力、つまりバネ作用があります。これを上手に使うと、体を要領よくダイナミックに動かせるようになります。このバネ作用を生み出すのが「反動」を使った動きです。
立ち上がる時の「よいしょ」も効果あり
わかりやすい例として、まず椅子からの立ち上がり動作で説明しましょう。
反動を使った倚子での「よいしょ!」(本文より引用)
椅子から立ち上がるときは、必ず一度お辞儀をするように上体を前にかがめてから立ち上がります。
そして体を起こす前に、自然と私たちはそれと反対の前にかがむ動きをとるのです。これこそが「反動」です。
前にかがめる下向きの力を筋肉、腱のバネ作用で上向きに返すため、スッと体を起こして立ち上がることができます(図)。
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バネを使った反動動作のポイントは、お辞儀をしてから体を起こす動作へと「動きを切りかえす瞬間」にポンと力を出すことです。「よいしょ!」という声が出ることがありますが、切りかえしで強い力を発揮するときに、つい声が出るのです。
ですから、「よいしょ!」は、反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声といえます。年寄りくさいと思わないでください。むしろその声こそ、活動的に体を動かせている証拠。「よいしょ!」をどんどん使っていただきたいと思います。
試しに、この反動動作を少し大げさにして立ち上がってみてください。反動をバネにしてすっと立ち上がるという感覚がよくおわかりになるはずです。
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提供元:筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」|東洋経済オンライン