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2019.05.21

居眠りの原因は? ガマンできない眠気の正体と病気の可能性


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仕事や授業中などに強い眠気を覚えて「居眠り」をしてしまう原因は、体内リズムや睡眠不足、睡眠の質の低下、病気などさまざまです。うっかり寝てしまうほど強い眠気に襲われた時の対処法について、雨晴クリニック副院長の坪田聡医師に伺いました。

目次

-居眠りの原因3つ
-病気による居眠り
-居眠りの対策
-眠気の元を断つ仮眠法
-意識が一瞬飛ぶマイクロスリープに要注意

居眠りの原因3つ

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居眠りとは、「居合わせているが眠っている」という「居る」と「眠り」からなる合成語です。何かに取り組んでいるとき、意図せず睡眠状態に陥ってしまう状態を指します。坪田医師によると、居眠りには「睡眠不足や質の低下」と「体内リズム」が大きく関係しているといいます。

居眠りの原因【1】:睡眠不足や質の低下

居眠りの一番の原因に考えられるのが、睡眠不足や睡眠の質の低下です。

「睡眠は、主に脳の疲労回復を目的に行うものです。睡眠時間が不足すると脳の疲労が解消されずに睡眠物質(アデノシンなど)がたまってします。そのため、頭がぼーっとしやすくなったり、日中に強い眠気に襲われたりします。また、睡眠の質の低下も居眠りの原因の一つです。十分な睡眠時間をとっていても質が悪ければ、睡眠不足と同様に睡眠物質がたまり、日中に眠気に襲われてしまいます」(坪田医師)

睡眠の質の低下を招く生活習慣

睡眠の質を下げないようにするためには、日常生活で何気なく行っている、以下のような習慣を改善する必要があります。

・飲酒

「アルコールには睡眠導入作用があるため、寝酒をするとリラックスして眠れると思っている方もいらっしゃいます。しかし、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドには睡眠を妨げる作用があるため、入眠直前の飲酒は睡眠の質を下げてしまいます」(坪田医師)

・カフェイン

「カフェインには覚醒作用があり、その効果は摂取から4〜5時間続くといわれています。つまり、就寝前にカフェインを大量に摂取すると、眠れたとしても睡眠中の寝返りが増えたり、ちょっとした雑音でも目が覚めやすくなったりして、質の良い睡眠がとれなくなってしまいます」(坪田医師)

・喫煙

「アルコールやカフェイン摂取と同様、就寝直前の喫煙も睡眠を妨げる要因になります。タバコを吸った直後はリラックス効果があるものの、その後は一転して覚醒効果が数時間続くので、寝る直前の喫煙は厳禁です」(坪田医師)

睡眠の質の低下を招く病気

生活習慣以外にも、病気が原因で睡眠の質が低下することがあります。

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)

「SASは、眠っているときに呼吸が停止したり、喉の空気の流れが弱くなったりする病気です。いびきに特徴があり、数秒間、寝息が止まったあとに『グファ!』と大きな音を発する『無呼吸発作』が発生します。無呼吸発作は夜中に何十回と起こることもあり、それによって睡眠の質が低下し、身体と脳が十分に休息できなくなってしまいます」(坪田医師)

・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

「脚に違和感や不快感があり、じっとしていられなくなってしまう病気です。夕方から夜にかけて悪化しやすいため、就寝中に悩まされる人が多いのも特徴です。極度の不快感によって目覚めてしまうため、熟睡できず、睡眠の質に大きな影響を及ぼします」(坪田医師)

居眠りの原因【2】:体内リズム

人間の身体には、睡眠と覚醒のリズムを決める「体内時計」という機能が備わっています。体内時計には、約1日の周期を持つ「概日性リズム(サーカディアンリズム)」、約半日(12時間)周期で睡眠と覚醒のリズムをつくる「半概日性リズム(サーカセミディアンリズム)」、約2時間間隔で眠くなるサイクルをつくる「超日リズム」という3つの体内リズムが存在し、これらのリズムが眠気のサイクルを生み出しています。

「居眠りの原因として考えられるものには、半概日性リズムと超日リズムの影響が挙げられます。特に午後2〜4時は、半概日性リズムのサイクルによる眠気のピークと、超日リズムによる2時間おきの眠気が重なるため、強い睡魔に襲われます。昼食後に眠くなるのも、これらのタイミングが重なるためです」(坪田医師)

居眠りの原因【3】:物事への興味・関心

人は興味がなかったり、退屈を感じたりすると眠くなります。会議や授業中に眠くなってしまうのは、取り組む姿勢や意識も関係していると坪田医師は言います。

「覚醒と眠気はシーソーのようになっていて、脳は覚醒側に重しを乗せたり、乗せるのをやめたりしてバランスをとっています。会議や授業の内容に興味があれば、それが重しとなって覚醒に傾くため眠気は訪れませんが、退屈に感じたり興味がなかったりすると重しを乗せなくなるため、眠気が勝ってきます。さらに、睡眠不足や体内リズムによる眠気の強い時間が重なると眠気は強くなり、耐えられずに居眠りしてしまうのです」(坪田医師)

病気による居眠り

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単なる居眠りだと思っていても、実は病気が原因で居眠りをしてしまうこともあります。眠気を伴う代表的な病気には、次のようなものがあります。

過眠症

過眠症とは、毎日のように日中、過剰な眠気を感じてしまう病気です。

「過眠症には、ナルコレプシー、突発性過眠症、反復性過眠症の3タイプがあります。過眠症は仕事のストレスなどの生活環境だけでなく、遺伝的な面にも原因があると言われています」(坪田医師)

ナルコレプシー

ナルコレプシーは仕事中や食事中、会話中など、通常であれば眠気を感じないタイミングであるにもかかわらず、強い眠気に襲われてしまう睡眠障害です。

「ナルコレプシーを発症すると、脳内の覚醒コントロール機能の異常により、『睡眠を作り出す仕組み』と『覚醒を作り出す仕組み』のバランスが崩れ、脳内に覚醒命令が出ず、眠気を感じるようになります。1回の眠りの長さは20分ほどで、目覚めた後は一時的にスッキリしますが、時間が経つと再び強い眠気を感じます」(坪田医師)

突発性過眠症

突発性過眠症は日中、長時間にわたり眠気に襲われてしまう睡眠障害です。

「ナルコレプシーと同じく、主な症状は日中に突発的な眠気に襲われることです。両者の違いは、日中の居眠りの長さです。突発性過眠症は1~4時間という長時間の睡眠と、起床後も眠い状態が続くという特徴があります」(坪田医師)

反復性過眠症

反復性過眠症とは、眠れない時期と眠れる時期が交互に訪れる症状のことです。

「反複性過眠症には、1日20時間近く眠る『傾眠期』が数日から数カ月続き、その後、症状が現れない『間欠期』が訪れ、傾眠期と間欠期を繰り返すという特徴があります。意識障害の一種とも考えられていますが、症例が少ないため研究があまり進んでいません」(坪田医師)

居眠りの対策

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会議中や授業中など、場所を移動できないときに周りに気づかれずに眠気を覚ます方法を紹介します。

ツボ押し

突然の眠気に対して、すぐに対応したい場合はツボ押しがオススメです。本格的に眠気が訪れてからでは効果が出にくいので、眠気を感じたら早めに行うのがポイントです。肩より上にあるツボや手のツボなら、座ったままこっそり眠気を解消できるので、以下を参考に実践してみましょう。

耳たぶのツボ

耳には100以上のツボがあり、刺激することで眠気覚ましの効果が期待できるツボもあります。

<方法>

(1)両手で左右の耳たぶを持ち、下にゆっくり3秒引っ張ってから放す
(2)上記を4〜5回繰り返す
(3)最後に耳全体を揉む

目頭、首の付根、手のツボ

目頭にある「睛明(せいめい)」は朝に起きてもまぶたが思いと感じた際に目覚めを促進させる効果が、首の付根にある「天柱」は眠気で頭がボーッとしているときに、手にある「労宮」は身体を目覚めさせる効果が期待できます。

筋肉に力を入れる

両手を合わせて内側に思いっきり押し合うなど、関節を動かさず筋肉に力を入れて収縮させると、交感神経が活発になり眠気を抑えられます。

<方法>

(1)親指以外の4本の指を胸の前で引っ掛けるように組む
(2)両手を外側に向かって、思いきり引っぱり合う
(3)背中の肩甲骨をよせるイメージで、10秒ほど続ける
(4)胸の前で両手を合わせる(両指を組んでもOK)
(5)腕が水平になるようにひじを上げ、両手を内側に思いきり押し合う。これを10秒ほど続ける

日光やブルーライトを浴びる

強い光は眠気を覚ますのに効果的です。外に出たり、窓から外を眺めたりと、太陽の光を浴びましょう。また、パソコンやスマホから発せられるブルーライトにも同様の効果が期待できます。

人と話す

話すことは頭を使うので覚醒作用があります。コーヒーブレイクや同僚とのコミュニケーションも眠気覚ましになります。

ガムをかむ

リズミカルな運動をすると脳が覚醒するため、ガムなどをかむこともオススメの眠気覚まし方法です。特にかむという動作は脳の神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促進し、神経細胞を活発にして眠気を解消します。

そのほか、冷水での洗顔やカフェインの摂取も効果的。冷水での洗顔は即効性があり、ホットコーヒーによるカフェイン摂取は20~30分後から効果が現れます。アイスコーヒーなどの冷たい飲み物の場合、カフェインの吸収が遅くなるため、すぐに効果を得たいときは温かい飲み物を選びましょう。

眠気の元を断つ仮眠法

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一時的に眠気をごまかしても、睡眠時間が不足していれば再び眠くなってしまいます。パワーナップと呼ばれる短時間の仮眠をとれば、根本的な原因である寝不足を解消することができます。

パワーナップ(昼寝・仮眠)

パワーナップとは、15〜20分ほどの短時間で行う昼寝(仮眠)のこと。熟睡しない程度の仮眠なので目覚めがよく、脳の疲れが回復してパフォーマンスアップが期待できます。眠気の予防法として取り入れましょう。

<パワーナップを行うときのポイント>

・正午〜午後2時までに行う

午後2時より前に仮眠をとったほうがいいのは、半概日性リズム(サーカセミディアンリズム)による眠気のピークが午後2〜4時の間にくるためです。これよりも前に仮眠をとると目覚めた後も脳がすっきりしやすくなるほか、脳にたまった疲労物質が解消され、集中力がアップして午後の作業パフォーマンスが上がる効果も期待できます。

・寝る時間は15〜20分

仮眠の時間は15〜20分にし、座ったまま寝るようにしましょう。30分以上寝たり、横になったりすると深い眠りに入ってしまうため、頭や身体が重くなるという症状が出やすくなります。

・眠る前にカフェインを用意する

パワーナップをする場合は、寝る直前にコーヒーや紅茶などでカフェインを摂取しておきましょう。ちょうど起きるころにカフェインの覚醒作用が働き、すっきりと目覚めることができます。

意識が一瞬飛ぶマイクロスリープに要注意

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マイクロスリープとは、「眠気で一瞬、意識が飛ぶ」状態のことで、突発的な居眠りの状態を指します。自分の意思とは関係なく脳が数秒動きを止めるために起こる、と考えられています。

「この症状は、慢性的な睡眠不足により、脳の神経細胞が壊れるギリギリの状態で起こります。自らの意思とは関係なく突然起こり、交通事故などの原因になるため注意が必要です。マイクロスリープを防ぐ方法は、夜の睡眠をきちんととること。睡眠が不足していると感じる場合は、計画的に昼の仮眠を取り入れて睡眠を補いましょう」(坪田医師)

重要な会議や授業中に眠気に襲われないよう、普段からきっちりとよい睡眠をとったり、日中の眠気がある場合には仮眠したりと、上手に対処しましょう。

Photo: Getty imagaes

<参照>
『世界が認めたニッポンの居眠り』ブリギッテ・シテーガ(CCCメディアハウス)
『パワーナップ仮眠法』坪田聡(フォレスト出版)
『朝5時起きが習慣になる5時間快眠法』坪田聡(ダイヤモンド社)

※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

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