2019.04.18
【特集/色のチカラできれいに】 盲点だらけ! 自分の「本当の肌色」とは?
自分が思っているよりも、実際の肌の色は「暗い」?!
----「日に焼けないようにしなきゃ」「美白クリーム塗ってから寝よう」「最近くすみが気になる」など、私たちは日常生活のなかで、自分のお肌の色について、四六時中気にして過ごしています。毎日鏡を見ているにもかかわらず、自身の肌の色については、見えていないことがたくさん。そんな肌の色の不思議について、埼玉女子短期大学教授、山田雅子先生に教えていただきます。
みなさんは自分の肌の色について、どのくらい正確に認識しているでしょうか? 実は、自分自身の肌の色を正確にとらえること、特に自分で直接見ることのできない顔の肌の色を認識することは、とても難しいのです。
「鏡は毎朝毎晩じっくり見ているし、スマホで撮る写真もチェックしてるし、自分の肌のトーンは把握してるよ」という方もいらっしゃるでしょう。ただ、鏡で顔を見ているといっても、照明の影響を強く受けていますし、撮った写真を確認するにも、最近では肌を美しく見せる写真技術も発達していますから、そこに映っている肌の色は人が見ているそのままではありません。大抵の場合、鏡や写真に映る自分の肌は明るく映っているのです。
実際に、大学生を対象に実験を行ったところ、自分の顔の肌の色として予想した色と、客観的に実測した色との間に明らかなズレがあることがわかりました。多くの人が、「実際の肌よりも明るい色」だと自分の肌の色を予想していたのです。
なぜこのようなズレが生じてしまうのでしょう? それは「記憶色」にも関係があります。人は、身近な色を記憶するときに、実際の色よりも鮮やかな色を頭のなかでイメージし、また記憶する習性があります。
実際には白色に近いはずの桜の花びらも、記憶のなかでは、淡いピンク色にイメージされていたり、頭のなかで思い出すトウモロコシは、実際の黄色よりもずっと鮮やかな色で記憶されていたりします。同じような現象が、肌の色についても起きていると考えられるのです。
「私はオークル系」って、それ本当?!
さて、ズレているのは、明るさだけではありません。自分の肌が「赤みがかっている」のか、「黄みがかっている」のか、色みの面においても、多くの人の予測と実際との間にズレがあることがわかりました。
先ほどと同じ実験の結果、素肌についても、化粧後の肌についても、実際の肌に比べて「黄み寄り」と予想する人が多い傾向にありました。
その理由には、ファンデーションのトレンドが移り変わったことも考えられます。1990年代までは赤みのあるファンデーションが流行でした。少し前のドラマの再放送を見ると、メイクのスタイルだけでなく、肌の色にも違和感をもたれることがあるのではないでしょうか。いかにも「お化粧してます」といった肌に仕上げられていますから。その時代からずいぶんとメイクの好みや傾向が変わり、最近のトレンドは、「ナチュラル肌」。ファンデーションも黄色系のオークルが主流となっています。
ファンデーションそのものの色は、顔よりも客観的に認識できます。ですから、オークル系を日々使うことによって、自分の肌が、(いつも見ている)塗る前のファンデーションと同じ色だと思い込んでいる可能性も考えられます。
以上のことをまとめると、「ズレ」のパターンとしてもっとも多かったのは、実際よりも「明るく、黄みがかっている」という予測だったということになります。
もしも、自分の肌色をきちんと把握していないままファンデーションを選べば、肌がくすんで見えたり、逆に浮いてしまったりすることもあるでしょう。自分に合ったファンデーションを選び、色の面から美しい肌をつくるためにも、まずはこのズレの存在を認識して、自分の肌の色を的確に把握することが大切です。
ですが、自分の力には限界があります。
実験のなかでは、鏡に向かって化粧をしている時間の長さと、ズレの大小には、関連した法則が見えませんでした。つまり、どれだけ長い時間鏡を見つめてメイクをしても、やはり自分で肌の色を正確に把握するのは難しいのです。対策としては、お友達に見てもらうなど、客観的な目を通して自身の肌の色をつかむのが効果的ではと思います。
----毎日鏡で見ているはずの顔の肌の色。きちんと把握できていないわけない...と思いながら、取材班も実験をしてみると、見事に全員「ズレて」いたことが判明。いかに先入観や思い込みをもって、自分の肌の色を認識しているかを実感しました。さて次回は、色白と色黒の印象について、教えていただきます。
山田雅子
埼玉女子短期大学国際コミュニケーション学科教授、博士(人間科学)。2005年、早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。日本心理学会、日本社会心理学会、日本顔学会に所属。専門は色彩心理。顔や肌の認知が主な研究対象。
先生/山田雅子(埼玉女子短期大学国際コミュニケーション学科教)
取材・文/大庭典子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ
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