2019.04.05
「お菓子習慣」があなたの体を秘かに蝕むワケ| 意外と知らない「超加工食品」の脅威
「お菓子中毒」が引き起こされる背景には、私たちの食卓に浸透している「超加工食品」が深く関わっていました(写真:AntonMatveev/iStock)
スーパーやコンビニでいつでも買えて、仕事の合間や小腹が空いたときに手軽に食べられるお菓子。実は、このお菓子、知らず知らずのうちに中毒症状をもたらすことをご存じでしょうか。
お菓子を我慢できないのは、実はあなたの意志が弱いからではありません。では、控えたいと思っても、ついお菓子を食べてしまうのはなぜなのか。健康面ではどんな危険があるのか。お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長が「お菓子中毒」の危険性と対処法についてポイントをお伝えします。
あなたの「お菓子中毒度」をチェック
まずは、あなたがお菓子中毒に陥っているかどうかを確認するために、以下のチェックを行ってみてください。
□毎日のように食べている(習慣になっている)
□食べる量や回数がどんどん増えている
□イライラしたときにはお菓子に手が伸びる
□ついついお菓子を買い込んでしまう(ストックがつねにある)
□ときどきドカ食いしてしまう
□コーヒーにはお菓子が必須
□飲んだあとのデザートは別腹
□やめよう、控えようと思っても続かない
□お菓子を食べないと仕事がはかどらない
□健康診断で血糖値が高めと指摘されてもお菓子をやめられない
実はこの質問のうちひとつでも当てはまるものがあった場合は、お菓子中毒に陥っている可能性が濃厚です。
はるか昔から人間は、発酵食品や塩漬け、薫製など、食品を加工して保存食を作ってきました。ところが、食品技術の発達に伴い、高度に加工された食品が急増します。例えば、ケーキやクッキー、ドーナツ、チョコレートといったお菓子や甘い清涼飲料水、菓子パン、カップ麺などです。
私たちの普段の食生活によく登場するこれらの食べ物は、いずれも「超加工食品」と呼ばれるものです。
超加工食品とは、常温で長期間保存できるように、砂糖や塩、油脂、保存料などを加えて高度に加工した食品の総称です。安価で日持ちがするため家計にやさしく何かと便利ですが、近年欧米ではこの超加工食品がもたらす健康への弊害が注目され、警鐘が鳴らされています。
超加工食品の中でも、私がとくに危惧しているのがお菓子です。例えば、クッキーやドーナツなどに使われる小麦は、グルテンを含みますが、これはさまざまな体調不良の要因にもなりうる物質です。
「なんだかだるい」は中毒のサイン?
本来の小麦には、グルテンは今ほど含有されていませんでしたが、収穫高を上げるために遺伝子操作された現代の小麦ではグルテンが多く含有されるようになりました。普段から「病気ではないけど、なんだかだるい」と感じている人は、小麦由来のお菓子を控えることで治る可能性があります。
また、甘いお菓子を食べると血糖値が急上昇するため、インスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌されますが、最近の研究では、このインスリンが脂肪の分解を抑制したり、細胞の老化を促すことが明らかになっています。しかもこのインスリンは、過剰に分泌され続けると、認知症のリスクを高める要因になることもわかってきています。
ここまでの話を読んで、では今すぐお菓子をやめればいい、と考えた方も多いと思いますが、我慢が難しいのが「超加工食品」の怖いところです。
「超加工食品」は自然のものを精製して純度を上げることで作られています。例えば、砂糖であればアミノ酸やミネラルなどが、塩であればマグネシウムやカリウムなどが、味のクセをなくすために除かれて「白砂糖」「食塩」ができています。
そして、こうしてできた「白砂糖」「食塩」は、自然のままの状態に比べて味が強まって甘みや塩辛さが増し、脳の報酬回路を強く刺激するようになります。
すると、「脳内麻薬」とも呼ばれるドーパミンやエンドルフィンといった快楽ホルモンが多く分泌され、抑制が利きにくくなり、摂取欲が増してしまうのです。
実験においても、アメリカのスクリプス研究所のポール・ケニー博士の論文で、脂質と糖質が多く、白砂糖や食塩で濃く味付けされたいわゆる「ジャンクフード」を40日間ラットに与えたところ、報酬回路がオーバードライブして、食欲が止まらずに食べ続けてしまう結果になったことが発表されています。
こうしたことからもわかるとおり、精製度が高い「超加工食品」は、純度が増すために中毒性を生むことがあります。私はそういった中毒性のある食べ物を、身近な素材で常習性をもたらすものという意味で、「マイルドドラッグ」と呼んでいます。
体重や血糖値が気になる人は、「カロリーゼロ」「糖質オフ」などと表記されたお菓子に切り替えているので大丈夫、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、「糖質オフ」などの表記のお菓子に使われているのは、超加工食品のひとつである人工甘味料です。
カロリーがないために太らず、血糖値も上げないといわれてきましたが、最近の研究では、人工甘味料で「肥満する」「血糖値が上がる」という研究報告がいくつも挙げられています。
また、ヘルシーな印象があるドリンクにも注意が必要です。例えば、健康のために野菜や果物のスムージーを飲んでいたとしても、その中に異性化糖(自然由来の果糖を精製したもの)が入っていると、その弊害が心配です。
最近の研究では、異性化糖が肥満や高血圧、糖尿病の要因であると指摘する研究者が増えています。果糖ブドウ糖液糖を含む清涼飲料水を1日に1回でも飲む人が太りやすいことも、いくつかの研究論文で明らかになっています。
また、1日1リットル炭酸ジュースを飲んだときに相当する果糖溶液を、ラットに6週間摂取させて記憶力と神経細胞を調べた、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のフェルナンド・ゴメツピニラ博士らの実験によると、果糖を摂取したラットは記憶力が低下して迷路試験を解くのに通常の2倍以上の時間を要し、海馬で200以上、視床下部では700以上の遺伝子が異常なパターンを示したことがわかっています。
健康によいとされる乳酸菌飲料も、原料で最も多いのは果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖だったというケースもあります。健康のために飲んでいるドリンクが、体に悪影響をもたらしてしまっては皮肉な話です。商品を選ぶ際には気をつけてください。
お菓子中毒から脱け出す、今日からできる3つのポイント
■今日からできること【1】 中毒をもたらす“犯人”を知る
まず、お菓子中毒を抜け出すために大切なことは、冒頭のチェックを通して自分がお菓子中毒であることをしっかり自覚することです。
というのも、お菓子中毒のいちばん怖いところは、本人も周囲も中毒に陥っていることを自覚できずに、食べ続けてしまうことだからです。
自覚するだけでも、無意識に食べていたときとは違いが生まれます。そのうえで、何があなたにお菓子中毒をもたらしているのか、その犯人に気づくことが重要です。具体的な犯人は、筆者は次の7つと考えています。
(1). 白砂糖
(2). 果糖
(3). 人工甘味料
(4). 小麦
(5). 食塩
(6). 油
(7). ストレス
ストレス以外の犯人である、白砂糖、果糖、人工甘味料、小麦、食塩、油はすべて精製度が高い、不自然な食品であることが共通しています。
また、ストレスがあると、気をつけていても突発的なヤケ食いのようなことも出てきてしまいます。
各犯人の具体的な弊害と詳しい対処法は長くなりますので、ここでは書ききれませんが、新刊『「お菓子中毒」を抜け出す方法』に記しましたので、ぜひ確認してみてください。
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「異性化糖」には要注意
■今日からできること【2】 成分表示チェックを習慣に!
ここまで、お菓子の弊害をお伝えしてきていますが、お断りをしておきたいのは、世の中のすべてのお菓子が悪者なわけではないということです。
自然の果物・はちみつなどの甘さや素材の味を生かしたお菓子には、超加工食品のような中毒性はありません。甘いお菓子なら、天然由来の砂糖を使っている質のいいものを少しだけ楽しむようにしましょう。
一方、気をつけたいのは、血糖値を急上昇させて食欲を増進させる「異性化糖」が含まれているものです。個人的には、異性化糖は一切、口にしないくらいの気持ちを持っています。
パッケージの成分表示の原料に「高果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」「砂糖混合異性化液糖」と記されているものには、異性化糖が含まれています。
成分表示を見て原料を確認し、なるべく超加工食品を使っていないものを選びましょう。
■今日からできること【3】 “食欲リセット”――プチお菓子断食
お菓子中毒の大きな原因は、先ほども触れましたが、脳の報酬回路のオーバードライブによる食欲の暴走です。中毒状態から抜け出すには、快楽に溺れた脳をリセットする必要があります。
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リセットに最も有効なのは、中毒の原因をいったん絶つこと。お菓子中毒の場合は、期間を決めて「お菓子を食べないこと」です。
ここで大切なのは、期間中はスッパリと絶つこと。ちょっとなら大丈夫と口にしていると、脳はなかなかリセットできません。
まずは1週間、お菓子断ちをしてみましょう。1週間がつらい人は3日間など自分で決めて「お菓子を食べない期間」を設けましょう。次第に我慢できる時間が長くなっていくはずです。
いかがでしたでしょうか。自分の未来や家族の健康のために、ひとりでも多くの方に脱・お菓子生活を実践していただきたいと思っています。
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提供元:「お菓子習慣」があなたの体を秘かに蝕むワケ|東洋経済オンライン