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2019.01.30

若手社員は「仕事手抜き術」を覚えた方がいい |ワークライフバランスの神様に学ぶ働き方


ムダな仕事をいかに”手抜き”するかがこれからの仕事の考え方だ (写真:KY/PIXTA)

ムダな仕事をいかに”手抜き”するかがこれからの仕事の考え方だ (写真:KY/PIXTA)

「若い時の苦労は買ってでもせよ」。そんなことわざを盾に、大量のハードワークを押し付けられていないだろうか?

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確かに「筋トレ」のように、ストレスフルな仕事をこなすことで、それに対処できるスキルや知見を積み上げられる面もある。

だからといって、度を超えた量の仕事を無理して対処した結果、心身を痛めたら本末転倒だろう。メンタルヘルスの不調もまた、ストレスフルな仕事が要因となるからだ。

厚生労働省の「平成29年労働者健康状況調査結果」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスになっていると感じる事柄がある」と答えた労働者は、全体の58.3%。

同じ調査で、強いストレスの内容として最もあげられていたのが「仕事の質・量」(62.6%)だった。

仕事を減らすに「戦略」が必要

では、どうすればいいか? 若手社員に、こっそりと教えたいのが「手抜き」である。

落ち着いてほしい。「仕事なんて、すべてテキトーにしておけばいい」という話ではない。それでは成果をあげられないし、スキルも知見も積み上げられない。

「一言でいうならば『戦略』をもって仕事にあたれ、ということですよ」と教えてくれたのは、元東レ経営研究所所長で、『そうか、君は課長になったのか。』に代表される多くのビジネス書のロングセラーを持つ、佐々木常夫氏だ。

佐々木氏は自閉症の長男とうつ病だった奥さんのため、ほぼ毎日定時退社して家事も育児もすべてをこなした家庭人。

同時に勤務先の東レで、事業改革や関連会社の再建を成功させ、同期トップで取締役になった「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル、いや神様ともいえる存在だ。

「そんな私が考える『戦略』とは『戦いを略す』ことですよ。だって会社の仕事はたいてい玉石混交で、石みたいな雑用が8割くらいある。一方で仕事に使えるあなたの資源は限られる。

無能な上司や先輩から降りてくるムダな仕事にまで全力投球するのは人生のムダ使い。ムダな仕事は、いかに“手抜き”をして最大の成果をあげられるか。戦略的に考えたほうがいい」(佐々木氏)

そこで佐々木氏が実践してきた、ワーク・ライフ・バランス仕事術をもとに、若手社員が実践しておきたい「ポジティブ手抜き術」を探ってみた。

過去に作成した類似の提案書・企画書はたくさんある

手抜き術1 できる限り、仕事はパクる

「お客様に提案する企画書の草案をつくってほしい」「会議で使う資料をまとめてほしい」……上司や先輩から依頼があったら、まず心がけたいことが、そうした書類やアイデアを“イチから作り出そう”としないことだ。なぜか?

「そんな私が考える『戦略』とは『戦いを略す』ことですよ」と語る佐々木常夫氏 (2017年撮影、撮影:今井康一)

「そんな私が考える『戦略』とは『戦いを略す』ことですよ」と語る佐々木常夫氏 (2017年撮影、撮影:今井康一)

「会社の仕事はたいてい似たことの繰り返しです。営業でも企画でも、毎年同じような時期に似たような案件が発生する。つまり会社の書庫や、上司や先輩のパソコンのフォルダの中に、必ず似たような提案書や企画書がある。こうした諸先輩方が残した優れたレガシーを使わない手はないでしょう」(佐々木氏)

だから提案書や企画書などのドキュメントを、まっさらな状態から作ろうとはしない。まずは「似たようなドキュメントはありませんか」「以前、拝見した企画書のデータをお借りしたいのですが」と、先輩たちに尋ねながら、社内にあるレガシーを借用しよう。そのうえで自分のアイデアをちょっとだけプラスしてオリジナリティーを加える。

佐々木氏は東レの企画室にいた頃、当時の社長が国際会議で使う挨拶文の原稿を指示されたことがあった。その内容が非常に好評で、「佐々木は仕事ができる」「私が言いたいことを見事にまとめている」と大いに褒められ、評価を上げたことがあるという。

「当然です。実はその3年前の会議で社長が話した内容と、ほぼ同じものでしたからね(笑)。過去の議事録を引っ張り出して、日付と場所と、少しだけ内容をカスタマイズしただけ。

だから1時間程度で書き終えたし、そもそも先輩たちが頭をひねり出したものをベースにしたから、労少なくして、いいものが出来た。プアなイノベーションより、優れたイミテーションですよ」(佐々木氏)

ポジティブに手を抜くことは、仕事を早めるだけではなく、仕事の質を高めることにもなるというわけだ。

手抜き術2 「メールや電話で済むのでは?」とまず考える

顔の表情やしぐさなど、視覚的な情報が増える対面でのコミュニケーション。営業でも打ち合わせでも、直接会うメリットは多くの人が理解し、実感しているはずだ。

一方で、対面で会う、となれば、アポとりの手間が増えるし、社外の相手なら移動の時間に相当のロスが生まれる。結果、やるべき仕事の時間が奪われ、ストレスにつながることも多々あるわけだ。そこで、対人コミュニケーションにおいては「本当に直接会うべき案件か否か。メールや電話で済むのではないか」を動く前に考えるのが得策だ。

慣習で続けている余分な仕事はないか

「私が東レで漁網の営業課長になった頃、営業パーソンは月1回、得意先である地方のメーカーに出張訪問するという“伝統”がありました。漁網メーカーはたいてい地方の海外沿いにあるから、2泊3日が当たり前で、移動時間ばかりかかる出張になっていた。

しかしよく聞くと、出張で話す内容は『最近どうですか?』『追加注文は?』といった程度。大きな売り上げと利益を占めていたので“誠意を見せる”という狙いもあったのでしょうが、それって電話一本で済む話でしょう」(佐々木氏)

そこで佐々木氏は、営業課に「出張の原則禁止」を明言。そのかわり、毎週月曜日の朝8時30分に電話して「最近どうですか?」「追加注文はありますか?」と出張して対面するときと同じ内容の会話をさせることにした。

「対面じゃないと誠実じゃないととられるのでは……」。現場の営業パーソンは最初そう思ったが、反応はまったく逆だったそうだ。毎週月曜日の朝になると「そろそろあいつから電話がかかってくる頃。アレとコレが足りないから頼もう」と、得意先が準備して待っているようになったのだ。

「月一回の忘れた頃にやってくる出張よりも、ほんの10分で終わる電話のほうが、得意先としても気が楽だし、合理的です。結果、むしろ以前より注文が増えましたよ」(佐々木氏)

今ならば、メールやチャットなどのデジタルツールも当たり前のようにある。こちらの都合で、相手の時間を強引に奪うことなくコミュニケーションできる。

「営業は対面してこそ」とか、「電話で済ますヤツは失礼だ」などと面倒なことをいう古株もいそうだが、今どき、何も考えずに「とにかく会いたい」となるほうが、失礼だということを理解しよう。

とはいえ、人は“自分に似た相手を好む”という特性があることも押さえておきたい。頻繁にメールをしてくる相手にはメールで対応。電話を好む相手は、相手に合わせて電話。直接会うと話が早いというタイプは、なるべく会う……など、相手によってコミュニケーションの方法を変えると、よりスムーズに話が進むことも頭の片隅においておきたい。

手抜き術3 社内のデキる先輩を、存分に利用する

ポジティブな手抜きをしたいなら、ぜひ活用してほしいもう1つのレガシーが「ヒト」。社内の「デキる」先輩や上司を見つけて、彼らを利用することである。

ノウハウをつかむにはデキる人に教わる方が早い

佐々木氏は、それまでいた経営企画部から営業部に異動になったとき、それを実践した。社内の各部署で「あの人はデキる」「めちゃくちゃ優れた営業マンだ」と噂される5人に「営業とは何たるかを、ぜひ教えてもらえませんか?」とメール。うち3人は、まったく面識のない人だったにもかかわらず快諾を得て面談の機会を得たそうだ。

「なにせメールには『あなたは営業の神様と聞きました。神様にぜひ教えを請いたい』と書きましたからね(笑)。なんだかんだいっても人はおだてられたら弱いものです」(佐々木氏)

「面倒くさいと思われないか」などといらぬ心配をする必要はない。「自分のスキルを認めて、わざわざ頼ってくれたのか」と、あなたを歓迎してくれる可能性のほうが高いからだ。佐々木氏も、このメールをきっかけに知り合った5人が、その後も、頼れるメンターのような存在になったという。

「だから、営業課長になってから、営業にまつわるトラブルが発生するたびに、このときの5人に相談できました。場合によっては対応策のアドバイスのみならず手助けもしてもらえた。私にとって大きな力となりましたね」(佐々木氏)

番外 「本気でハードワークする時期」も不可欠

こうしたポジティブ手抜き術。効率的な仕事術の精度を高めるうえで、佐々木氏が大切にしているものが「メモ」だ。

「とくにメモしたのが仕事でミスをしたとき。『なぜミスをしたのか』『どうしたら防げたか』と反省点と改善点を書き込んだ。また、それを事あるごとに読み返します。こうした“内省”を続けることで、記録は記憶へと変わる。同じようなミスを起こさないための知見へと生まれ変わるのです」(佐々木氏)

ハードに働く経験をすることが大事

一方で、佐々木氏は「若手のときはハードに働く時期が絶対に必要」とも説く。必死でもがき、目の前の課題解決に奔走した経験は、必ず血肉になる。自分がどこまでできるのか、体力も気力もある若いうちに、経験を積んでおくことは、やはり大切だからだ。

「まあ、今の時代はちょっと言いづらいんですけどね(笑)。ただ”意味のない長時間労働”や“ムダな仕事“に貴重なリソースを割かないことこそ大事なんですよ」(佐々木氏)

正しく身になるハードワークをするために、ムダでムラあるハードワークを削ぎ落とす。ワーク・ライフ・バランスの神様からの助言、さっそくあなたも、メモって、パクって、略してほしい。

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提供元:若手社員は「仕事手抜き術」を覚えた方がいい|東洋経済オンライン

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