2018.08.14
「団塊ジュニア」がこれから迎える憂鬱とは?|親の介護リスクや自らの年金減額の苦労も
団塊ジュニア世代は、仕事、親の介護、自分の老後と実は悩みが多い。独身だからといって、安心はできない。ではどうすればいいのか(写真:Kazpon / PIXTA)
現在、40代前半~半ばの団塊ジュニアは、激しい受験競争の中で育ち、バブル崩壊後の就職難に直面した世代です。まさに今働き盛りの彼らは、上の世代よりも、仕事だけでなくライフスタイルや生き方も大切にしている人が多いように見受けられます。独身で両親と一緒に暮らしている人や、結婚していても子どもがいない人が多いのもこの世代の特徴です。
そんな彼らも50代を目前に控え、そろそろ定年後の長い人生を意識せざるをえなくなってきています。親世代のように悠々自適に過ごすには、「老後のお金」について真剣に考えるタイミングであることは確かです。「人生100年」といわれ、子どもがいない人ならなおさらしっかり計画を立てなければ、寂しい老後を迎えることになります。
年金受給額が確実に減っていく世代
今から考えておきたいことは、大きく分けて2つあります。1つは両親の老後についてです。厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)によると、認知症高齢者の数はどんどん増えています。2012年で約462万人、2025年には約700万人にまで増え、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されています。認知症は誰もがなりうる身近な病気です。団塊の世代が75歳以上になる2025年を見据えて、認知症の人でも暮らしやすい社会をつくろうと厚生労働省が準備をしていますが、この世代の人数に対して介護する人が足りないと予想されています。
両親が80歳を迎えるとき、あなたは何歳になっていますか。もし、両親が認知症になった場合、誰が介護することになっていますか。仮に同居していれば、軽い症状に気づくことができるかもしれませんが、認知症は徐々に進行していきます。そして、いつか誰かしらのサポートが必要になるでしょう。外出も不安な状態になってくると、介護離職を考えることになるかもしれません。皆さんが老後を迎えるころには、親のときより年金の受給額が減っていることが予想されます。もし仕事を辞めることになると、自分自身の老後が厳しいものになってくるでしょう。
親が認知症になったとき、注意しておきたいことがあります。それは、かかる費用を親のお金で賄おうとしても、親のお金が動かせなくなることです。成年後見制度を考える方がいるかもしれませんが、できることは、本人の生活に必要なものを買うためのお金の引き出しくらいです。だからこそ、判断能力があるうちに一緒に考えなければ、取り返しがつかないことになります。
認知症になるとできなくなることは主に以下の5つです。
(1) 銀行預金の払い出し
(2) 所有している不動産(自宅)の売却・建替
(3) 高級老人ホームへの入居保証金の支払い
(4) 孫の学費の支払い
(5) 110万円枠の暦年贈与
両親が元気なうちに、事前に対策をしなければいけないことはありませんか。たとえば、アパートなどの不動産を所有している場合、認知症になった後に修繕などのメンテナンスができなくなり、不動産価値を下げてしまうこともあります。介護ケアの充実している老人ホームに入れてあげたくても、不動産の売却も銀行預金の引き出しもできなくなります。もし、せっかくお孫さんの大学進学の援助を親から言われていたとしても、いざそのときに認知症になっていたら、願いはかなわないことになります。
親が元気なうちにやっておくべき「民事信託」とは?
認知症になってからの1つの対策としては、「成年後見制度」があります。成年後見制度には不正防止のため、後見人に弁護士が選ばれることが多くなっています。ただ、弁護士が後見人に選ばれると、毎月3万円から5万円ほどの費用がかかることも知っておきましょう。さらに、本人のためにお金を使ってあげたいと考えても、家庭裁判所への報告が必要になり、必要最低限の支出しか認められなくなります。そうならないために、認知症になる前にしておくべき対策として、民事信託(家族信託)が注目されています。これは、本人の意思が反映しやすい制度なのです。
民事信託(家族信託)でできることは主に以下の7つです。
(1)認知症対策
(2)財産承継対策
(3)共有財産の管理運営
(4)相続人の浪費対策
(5)未成年・障害のお子様の福祉型新宅
(6)受益権複層化信託
(7)自社株の信託(上場・未上場)
自由な設計ができる家族信託ですが、すべての銀行で信託口座を開設できるわけではありません。この2年ほどで広がりを見せていますが、開設できるのは一部の銀行、信用金庫だけなので、詳しい専門家に相談するといいでしょう。知識として知っておきたい内容です。
そして、2つ目がご自身の老後についてです。団塊ジュニアの皆さんが本格的な老後を迎える2050年ごろには、日本の人口は1億人を割っています。さらに、年金などの社会保障は、高齢者1人を若者1人が支える時代になります。そんなとき、あなたを介護してくれる人はいるでしょうか。現在、独身でお子さんがいない場合、ご自身が老後をどう暮らしていくかをあらかじめシミュレーションしておく必要があります。
老後の資金計画についてよく話題になりますが、自分自身が介護状態になったときのことを考える人は少ないでしょう。どうしても今が健康だから「自分は大丈夫」と思いがちです。しかし、何が起こるかわかりません。頼れる人がいない、家族に迷惑をかけたくないなら、準備が間に合う今だからこそ、将来の不安を現実のものとして準備を進める必要があるのです。
団塊ジュニアの親世代は、まだまだ元気で活動的な人がたくさんいるので、介護は現実味がないかもしれません。しかし、職場や親類などで介護している人はいませんか。いるはずですよね。少し世代は上ですが、私の友人たちの多く(いま50代)は、親が80歳を迎えるころから介護が必要となり、面倒を見ながら生活をしている人も少なくありません。
要介護3の母親と同居している友人は、今でもフルタイムの仕事をしています。週に5日は母親をデイサービスに通わせています。介護保険が使えない土日に、デイサービスを利用すると1万円ほどの自己負担になります。時には、休日に息抜きするために、全額自己負担も仕方ありませんが、たびたびというわけにはいきません。認知症の人を置いて家を空けると、トイレに1人で行けないだけでなく、誤って洗剤を飲んでしまうなど、危険な行動をとりかねません。配偶者に頼むこともできないでしょう。
80代は、想像以上に思っていることができなくなる
私自身も介護の経験があるので、その大変さはよくわかります。人はいきなり要介護状態になるわけではありません。物忘れから始まり、徐々に進行していきます。厄介なのは、認知症になった本人はしっかりしていると思い込んでいることです。それが、いつの間にか助けが必要な状態になっていくのです。助けてくれる人がいるならいいのですが、1人だと公的支援の手続きもできません。だんだん、外出をしなくなり、座ってテレビを見ているだけになるので、筋力が弱って歩けなくなるという人をたくさん見てきました。
80代になった自分をなかなかイメージできないと思います。ですから、少しでも幸せな老後を迎えるため、少しでも早く準備を始めるべきなのです。
すでに準備ができている方は問題ありませんが、もしまだであれば「何をしたらいいかわからない」「はたして今からでも間に合うのか」と思う方も多いと思います。そこで、団塊ジュニアが今からできる老後の資金づくりをご紹介します。
皆さんが老後の生活で困らないように、国が用意している2つの制度があります。
1つ目は、確定拠出年金です。企業年金として準備している会社に勤務している場合、会社が掛け金を出している場合もあります。これに該当する方は、きちんと分散投資できているかをチェックしてみてください。企業年金で投資信託を活用している人は徐々に増えていますが、それでも約4割といわれています。ほとんどが何の指示もせずに定期預金のままになっているようです。それはとてももったいないことです。まずはこの見直しから始めましょう。
確定拠出年金がない会社や個人事業主、公務員、専業主婦の方は、個人型確定拠出年金(iDeCo)が利用できます。掛金全額が所得税から控除され、運用益も非課税になるほか、受け取りも退職所得控除、または公的年金控除が受けられるなど、国の優遇を受けながら老後の資金づくりができます。60歳までは払い出しできない制度なので、着実に貯めていくことができます。
運用次第で預貯金よりも70%も増える
もう1つがNISA(少額投資非課税制度)です。運用益が非課税になるこの制度は、日本人にも運用によって豊かな生活を築いてほしいという思いから作られています。特に、つみたてNISAは金融庁の厳しい基準をクリアした運用商品だけで構成されています。しかも、利用できるのは積立運用だけとよりリスクが抑えられているので、投資初心者でも始めやすい制度なのです。年間40万円まで20年間非課税の恩恵が受けられます。もし、老後資金として活用する場合、45歳から運用を始めれば、20年後は65歳です。65歳から毎年40万円プラス運用益を20年間受け取ることができます。公的年金のほかにこうした資産があれば、かなり安心できるのではないでしょうか。
団塊ジュニアの皆さんに、かなり先のことを今お話ししているのは、まだ資産をつくる時間が十分にとれるからです。仮に20年間の積み立て運用で考えてみると、非課税と複利を使うことで、次のような結果が期待できます。毎月3万円を20年間、積み立てした場合、金利0.01%の預貯金なら、20年後には720万7000円と7000円増えるだけです。つみたてNISAで資産運用した場合、2%で運用できたとしたら884万4000円、3%で984万9000円、4%で1100万3000円、5%なら1233万1000円になります。
積立・複利シミュレーションは以下のとおりです。
預貯金だけの場合と資産運用した場合で考えてみると、大きな開きが出てきます。
ちなみに、過去20年間の運用実績で見ると、国内、先進国、新興国の債券と株式に分散投資した場合は79.9%、国内の債券と株式に分散投資した場合は38%も元本が増加しています。資産運用のリスクを抑える方法として、長期、分散、積立が効果的といわれています。確定拠出年金とつみたてNISAはリスクを抑えながら、さらに非課税運用できるというメリットがあります。
早く始めれば始めるほどメリットがある
ご自身の目標を明確にし、この2つの制度を使うのがお勧めです。両方とも期限があります。確定拠出年金は60歳まで、つみたてNISAは2037年までです。特に、つみたてNISAは今年始まったばかり、長く非課税を使うためにはなるべく早く始めることです。
確定拠出年金は企業年金がない会社員なら2万3000円、自営業の人なら6万8000円の枠を使うことができます。そしてつみたてNISAは年間40万円まで積み立てできます。
なんとなく不安を感じているよりも、こうした制度を活用して、楽しい未来を描いてみるのもいいのではないでしょうか。
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提供元:「団塊ジュニア」がこれから迎える憂鬱とは?|東洋経済オンライン