2025.02.27

要注意「年金の確定申告をする人」に教えたい盲点|2024年分の「定額減税」はどう処理すべきなのか


2024年分の確定申告の期限は3月17日(月)です(写真:yuu/PIXTA)

2024年分の確定申告の期限は3月17日(月)です(写真:yuu/PIXTA)

日本の公的年金受給者数は7747万人(延べ人数、2023年末時点)にのぼります。一方、長寿化の進展に伴い、年金受給者であっても働く人は増え、収入のあり方も多様化しています。こうした中、確定申告が必要な年金受給者の準備不足や記載ミスが目立つようです。
本稿では確定申告の要・不要の判断や手順、注意点などについて、社会保険労務士・CFPの大柴良史さんが解説します。

公的年金の受給者は原則、確定申告が必要

企業に勤めている間は年末調整により無縁だった人が、定年退職後に公的年金等(厚生年金や国民年金)の受給者になると、原則確定申告をしなければなりません。それは、これらの収入が課税の対象である「雑所得(公的年金等)」に該当するからです。

まず確かめていただきたいのは、毎年1月に日本年金機構から送付される「公的年金等の源泉徴収票」です。現在ははがき、電子データ(登録者が対象)で受け取ることができ、「ねんきんネット」で確認できます。

ここには、支払われた年金の合計額や、年金から源泉徴収された所得税額及び復興特別所得税の合計額、年金から徴収された社会保険料の合計額などが記載されています。ざっと見るだけで、1年間で受け取った年金や納めた税金などを把握することができるわけです。

一方、確定申告とは1年間の収入とその収入を稼ぐためにかかった経費、控除を基に自身の所得額と納税額を計算し、税務署に申告する手続きのこと。その結果、税金を払い過ぎている場合は還付されることもあります。

ただし、すべての年金受給者が確定申告の対象になるわけではありません。「確定申告不要制度」により、以下の2つの条件に該当する人は申告が不要です。

【確定申告不要制度に該当する人】
① 公的年金等の受取額が年間400万円以下
② 公的年金等以外の所得が年間20万円以下

記事画像

出所:政府広報オンライン ※外部サイトへ遷移します。

公的年金の受取額は「公的年金等の源泉徴収票」で確認できるので、問題はないでしょう。注意したいのは公的年金等以外の「所得」です。今は心身の健康維持、やりがいといった理由から、定年後も働き続ける人がたくさんいます。年金以外の収入を得ている場合、公的年金が400万円以下だからといって、確定申告の必要はないと早合点してはいけません。

例えば、年金をもらいながら会社で働いたりパート勤務をしたりしている、副業で収入がある、株式の配当金を受け取っているなど、これらによる所得が20万円を超える場合は確定申告を行います。

【確定申告が必要な所得の種類】

出所:国税庁

出所:国税庁

対象となるのはあくまでも「所得」です。所得とは収入から経費を差し引いた金額のことですから、「収入が25万円あるので申告が必要」と判断するのは間違いです。例えば、給与所得控除は最低でも55万円あるので、給与収入が75万円であれば確定申告不要制度の対象になります。

還付金を受け取れることもある

確定申告不要制度の対象者であっても、所得控除に該当する支出があった場合は、申告することで課税所得が下がり、還付金を受け取ることができます。主な控除は以下のとおりです。

・医療費控除
・セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
・社会保険料控除
・小規模企業共済掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険控除
・寄付金控除
・ふるさと納税
・雑損控除
・住宅ローン控除
・政党等寄附基金特別控除

例えば、1年間に自己負担した医療費が一定額を超えると医療費控除の対象となり、確定申告をすると上限200万円までが課税所得から控除されます。医療保険者から送られてきた「医療費のお知らせ(医療費通知)」の金額を利用しますが、医療費通知に記載のない医療費や医療費通知を紛失した場合は、領収書などをもとに入力を行います。

マイナポータル連携を利用すると、医療費控除に使用できる医療費通知情報を取得することが可能です。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使い、所得税の確定申告書を作成する際は、該当項目の金額を自動で取得することもできます。インターネットに不慣れな人もいるでしょうが非常に便利なので、これを機に使い方を学んでもよいでしょう。

これらの還付は、確定申告をしないと受け取れません。仮に源泉徴収が数千円だったとして、手間をかけてまで申告するのは大変という人もいるでしょう。確定申告不要制度に該当するのであれば、必ずしも申告する必要はなく、労力に見合うかどうかを判断して、手続きを進めてください。

確定申告不要制度の対象であっても、住民税の申告が必要になる場合もあります。詳しくは、お住まいの市町村に尋ねてください。公的年金等の収入が400万円を超えると確定申告が必要です。

ただし、年金全額が課税対象になるのではなく、「公的年金等控除額」を差し引いた額が、雑所得としての課税対象になります。年金受取時の年齢や公的年金等の雑所得以外にどれだけ所得があるかにより公的年金等控除額や雑所得の計算方法は変わります。国税庁ホームページで計算方法・計算式を紹介しているので、参考にしてください。

国税庁 公的年金等の課税関係 ※外部サイトへ遷移します。

具体例を挙げましょう。

年齢:65歳以上
公的年金等の収入:350万円
公的年金等に係る雑所得以外の合計所得額:500万円
雑所得の金額:350万円×75%-27.5万円=235万円

この場合、総所得の735万円に所得控除を勘案し、所得税の計算を行います。

青色申告と白色申告の違い

確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、前者は公的年金収入に加え事業所得などがある人向けで、事業所を管轄する税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出しないといけません。従って特別な手続きをしていないのであれば白色申告を利用するのが一般的です。

申請時期は年ごとに定められており、2024年分は2025年2月17日(月)から3月17日(月)まで。すでに始まっており、まだ済ませていない人は期限に間に合うよう手続きを進めましょう。なお確定申告の結果、追徴額が発生した場合は、納付までを完了させる必要があります。

確定申告に当たっては、確定申告書はもちろん、公的年金等の源泉徴収票、給与所得の源泉徴収票、マイナンバーカード(もしくは通知カード)、各種控除を受ける場合はそのための書類、医療費通知、生命保険・火災保険等の支払証明書、寄附金の受領書、住宅ローン控除の必要書類などを用意のうえ、作成を進めます。

確定申告書を税務署で入手したり、国税庁のホームページからダウンロードしたりして、手書きで作成することもできますが、記載ミスをしがちです。オンラインの「国税庁の確定申告書作成コーナー」を使ったほうがミスを避けやすくなります。

提出に関しても、混雑する税務署に出向くよりは、インターネット経由で提出するe-Taxを使ったほうが手軽です。添付書類の提出が省略でき(保存義務あり)還付金もはやく受け取ることができます。利用の際はマイナンバーカードが必須で、4桁と6~16文字の暗証番号の入力も求められます。

忘れた場合は、市区町村窓口やスマートフォンなどで初期化・再設定が必要となるので、あらかじめチェックしておきましょう。

2024年分の確定申告で注意したいのは「定額減税」の扱いです。同年分の所得税にかかる合計所得金額が1805万円以下の人が対象となり、本人(居住者に限る)3万円、同一生計配偶者及び扶養親族(いずれも居住者)1人につき3万円が所得税から控除されます。

これに伴い、2024年分の確定申告書には「令和6年分特別税額控除」の欄が新設されており、ここに人数と合計金額を入れます。記載しないと現在されないままの納税額が算出され、必要以上に税金を納めないといけません。

なお、夫婦ともに年金受給者の場合、2人の年金収入を合算して確定申告することはできません。年金が夫婦の両方に入金され、源泉徴収票も2通届いた場合は、それぞれの個人で確定申告することになります。たまに勘違いする人がいるので、注意してください。

会社員も確定申告に慣れておいたほうがいい

現役世代でとりわけ会社員にとって、確定申告は身近な手続きではありません。しかしながら、今は副業や投資で給与以外の収入がある人もいると思います。はやくから確定申告に慣れておくと、年金世代になって困ることもありません。税金の知識も付くので、可能な範囲で実践・勉強してはいかがでしょうか。

申告方法でわからないことがあれば、確定申告電話相談センターへ電話で質問することができます(電話番号は国税庁または管轄の税務署ホームページで確認できます)。一般的な質問であれば、国税庁のホームページよりチャットボットで質問ができますので、活用してみてください。

確定申告の時期になると税務署では、税理士による相談窓口が設置され、確定申告作成コーナーでは職員のアドバイスを受けながら、その場で申告書を作成・提出することも可能です。ただし混雑は必至で、相談などは予約制であることが多いので、事前に必ず確かめましょう。

(構成:大正谷成晴)

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「住宅ローン控除」申告で押さえたい9ステップ

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提供元:要注意「年金の確定申告をする人」に教えたい盲点|東洋経済オンライン

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