2018.08.06
「ストレスに弱い人」に教えたい3つの対処法|感じないのも逆にメンタル面で心配だ
ストレスは常にあるもの。上手に付き合うには?(写真:recep-bg/iStock)
ストレスは心に大きな影響を与え、ときには病気を引き起こすことは周知の事実となってきています。また、病気とまで言わなくても、ストレスにより心の健康が保てていない状態は、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。落ち込んだり、イライラしたりといった感情に振り回されて、集中できない、やる気が出ないという経験のある方は多いでしょう。
実際、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者は60.9%にのぼり(2012年「労働者健康状況調査」厚生労働省)、仕事のストレスによる「精神障害の労災認定者」は増加傾向にあります(2011年「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」、2016年「過労死等の労災補償状況」厚生労働省)。
このような背景により、2015年以降、50人以上の労働者がいる企業にはストレスチェックが義務化されています。ビジネスパーソンの心や体の健康を守るためには、ストレス対応が不可欠であると、国も対策に乗り出しているのです。
しかし、こんな現状があっても、心の健康というものは体や脳の健康にくらべて気づきにくく、後回しにされる傾向があります。特に忙しく働いている人ほど、自分の心の健康を過信しがちです。「ストレスを感じない」「自分は大丈夫だ」と思っていても、実はすでに心の健康が侵害されているケースは多いのです。
このように本人が意識していないところにこそ、健康を阻害する要因が潜んでいることは、ままあります。拙著『MBA式 健康防衛』でも触れていますが、ストレスと聞くと、仕事でのトラブルや人間関係など、嫌なことやつらいことを思い浮かべる人が多いかもしれません。
『MBA式 健康防衛』 ※外部サイトに遷移します
しかし、実はうれしいことや楽しいイベントもストレスの原因になります。
そもそもストレスとは「外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態」のことです。
ストレスの原因には、下記のようにさまざまな種類があります。
●物理的、化学的要因(気温、湿度、騒音、薬品など)
●身体的要因(過労、病気、栄養状態、睡眠不足など)
●心理的要因(怒り、不安、喜びなど)
●社会的要因(人間関係、転職、昇格、進学、恋愛、結婚、出産など)
●変化の大きさ(急激な寒暖差、安定した環境から不安定な環境への移動など)
昇格や恋愛、結婚など、一見ポジティブに思われることもストレスに含まれていることがわかります。つまり、日常の中で起こるさまざまな「変化」や「刺激」が、ストレスの原因になるのです。
また、状況やその人の性格、これまでの経験などによって、刺激を喜びや励みにできる場合もあれば、不安や心配を感じてしまう場合もあります。口うるさい上司も、心に悪影響を与えるストレスになる場合もあれば、シャープな気づきを与えてくれるありがたい存在ととらえられることもあるでしょう。
こういったものに無頓着で、自分にとって何がストレスになりうるのかに気づかずにいると、知らず知らずのうちにストレスを溜めこみ、発散するための対策もとらずに放置することになりかねません。
ストレスを味方につけてパフォーマンスアップ
勘違いしてほしくないのは、ストレス自体は「悪」ではないということです。
過剰なストレスは当然、人に悪影響を与えます。一方、仕事などの場では、ストレスがあまりにも低いと「孤立感が強くなる」「意欲が低下する」などの影響が出てくることが知られています。
これを裏付けるのが生理心理学の基本法則である「ヤーキーズ・ドットソンの法則」です。ここでは詳細は割愛しますが、簡単に説明すると、
「過剰なプレッシャーはやる気を低下させるが、逆にまったくストレスがないと意欲は上がらず、最高のパフォーマンスを発揮できるのは、適度なプレッシャーがあるとき」
だということを、ネズミを使って立証した実験です。
ストレスやプレッシャーがない状態を仕事にあてはめて考えてみましょう。たとえ仕事量が多くなくても上司や同僚、あるいは家族に期待されていないような状態は、孤独でつらいものです。
また学生時代を思い出すと、テストは学生にとってストレスの最たるものだったでしょうが、テストがなければ多くの学生は勉強をしませんし、テストの結果から奮起することもないでしょう。
心身の状態を崩すほどのストレスからは身を守るべきではありますが、「仕事での成果もしっかり出していきたい!」と考えるビジネスパーソンが行うべきなのは、ストレスは常にあるものとして、それが過剰にならないように、適切に対応することなのです。
ストレスへの対応策
適切にストレスに対応するためには次の3つの行動が必要です。
1.ストレスを受けたとき、自分がどうなるか(ストレス反応)を知る
2.自分にとって何がストレスになるのかを知る
3.ストレス反応を回避したり、やわらげたりする方法をストックしておく
どんなことでストレスを感じるのか、ストレスにどう反応するのが効果的なのかは人によって異なります。自分自身の特徴を知り、自分に合った方法でストレスによる悪影響を防ぎましょう。
1.ストレスを受けたとき、自分がどうなるか(ストレス反応)を知る
人は過剰なストレスを受けると、心だけではなく、体にも何らかの変化が表れます。わかりやすいのが、血圧や心拍数の変化。緊張すると心臓がドキドキしたり、顔が赤くなったりするように、ストレスがかかると血圧や心拍数は上昇します。
また、私の場合は足の裏で体調の変化をチェックしています。調子の悪い部分があると足の裏が硬くこるのです。「ここのところ、タフな案件が続いて精神的に疲れているのかな」などと早めにチェックすることができるのです。
普段から血圧や心拍数、足の裏などで体の変化をチェックしておくと「自分なりのストレスの指標」を持つことができ、自分にとって何がストレスになるのかを知る大きなヒントになります。
2.自分にとって何がストレスになるのかを知る
上で述べたようにストレスチェックの指標を持っておくと、思わぬところにストレスの原因が潜んでいることに気づくことができます。
たとえば、特に苦手意識を持っていないことでも「自分は初対面の人と会うのがプレッシャーになるのか」「自分は人前で話すのがあまり好きではない」など、自分に負荷がかかっていることをあらためて知ることができます。ストレスの原因が言語化でき、明快になると、それだけでもストレスの軽減につながります。
3.ストレス反応を回避したり、やわらげたりする方法をストックしておく
ストレスを受けても、すぐに発散することを心がければ、ストレスによる悪影響から身を守ることができます。
効果的にストレスを解消させる方法は人それぞれ異なり、またそのときの状況により効果的な方法は異なるものです。自分に最適な方法をたくさん持っていると、どんな状況にも対応しやすくなります。
おすすめするのは気晴らしになりそうな方法を考え、できるだけたくさん紙に書き出すことです。「コーヒーを飲む」「大声で歌う」「紙にグチを書いて、丸めて捨てる」「楽しい妄想をする」など、何でもOKです。
そこから、自分に役立ちそうな方法をピックアップして試してみると、効果的な方法が多数見えてきます。自分に合った方法をたくさん見つけておき、日々のストレスをこまめに解消しましょう。また、こうしてストックした対処法の効果は、永遠ではありません。効果が薄れてきたと感じたら、固執せずに新しい方法を試し、常に「使える」ストックを持っておくことが大切です。
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提供元:「ストレスに弱い人」に教えたい3つの対処法|東洋経済オンライン