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2017.07.14

そのストレッチが実は「筋力低下」を招くワケ|健康科学の「最新常識」知っていますか?


ヨガは、ダイエットにまったく効果がないどころか、かえって太りやすくさせるものだった?(写真:f9photos / PIXTA)

ヨガは、ダイエットにまったく効果がないどころか、かえって太りやすくさせるものだった?(写真:f9photos / PIXTA)

ジャンクフードは健康に悪く、仕事中のネットサーフィンは時間の無駄――。多くの人は、メディアで見たこんな健康情報を鵜呑みにして生きている。が、『ニューヨークマガジン』やロサンゼルス・タイムズなどに寄稿する健康科学ライターのジェフ・ウィルザー氏は、著書『科学でわかった正しい健康法』で、これまで常識とされてきた健康法が、実はエビデンスに基づいていないと指摘する。
ちまたで信じられている情報は本当に正しいのか。そんな疑問に答えるべく、ウィルザー氏は、栄養学や統計学、心理学、ビジネス、フィットネス、そしてヨガから歯学まで、あらゆるジャンルの専門家から話を聞き、イェール大学予防医学研究センターの所長デヴィット・カッツ博士やコクラン共同計画の主幹デヴィット・トヴィ博士などの協力を得て本書を執筆。その中からいくつかの「間違った健康常識」について紹介しよう。

『科学でわかった正しい健康法』

ちまたの常識は、実は時代遅れ

健康に関するニュースは、日々変わる。ある日は「健康に良い」と報じられたかと思うと、翌日には「健康に悪い」と報じられ、私たちはつねに右往左往させられている。結局多数派の意見を信じて、ケールを食べたり、デトックスに励んだりしている。

しかし、最新の研究によれば、ちまたで喧伝されるスーパーフードやフィットネスについての考え方は、大半が時代遅れであり、まったくの間違いであることが多い。ちなみにケールはスーパーフードではなく、栄養価は一般的な緑黄色野菜と同じ。デトックスに至っては、「毒素」なるものの存在は科学的に認められていない。

最近はやりのストレッチも、私たちは長らく「健康に良い」と信じてきた。大半の人は、ランニングやウエートトレーニングの前にはストレッチをしなさいと教わっている。しかし今では、ゆっくりと体の筋を伸ばすような「静的ストレッチ」には効果がないだけではなく、かえって筋力が低下することがわかっている。

テキサス工科大学で運動生理学を教え、『Fundamentals of Biomechanics(生体力学の基礎)』の著者でもあるデュエイン・ヌードソン教授は次にように語っている。「静的ストレッチをすると筋肉は存分に動きにくくなる。その結果、静的ストレッチを行った後の30分から1時間は運動能力が落ちる」。

ヌードソン教授は、もともと運動前の静的ストレッチに早い時期から疑問を投げかけていた研究者の1人であり、1998年に発表した論文が物議をかもしたことで知られている。この論文はあまりにも常識に反していたため、「筆者は誤解しているに違いない」と、多くの読者が編集者に苦情を伝えた。

だが、そうではなかった。

「あれから150本から200本の論文が発表され、おそらくその8割が、静的ストレッチは運動に逆効果になることを明確に示しています。そのうえ、あとの2割は良くも悪くもなんの効果もないことを示しています」と、ヌードソン教授は語っている。

すべてのストレッチが悪いわけではない

同教授の論文が正しかったことを裏付けるその後の研究の中から、いつくかの例を紹介しよう。

2013年、『ジャーナル・オブ・ストレングス・アンド・コンディショニング・リサーチ』に発表された研究によれば、17人の運動選手にバーベルスクワットを行ってもらったところ、事前に静的ストレッチをした場合、最大反復回数は8%落ちたうえ、下半身の安定度が23%落ちた。

また、ザグレブ大学の研究者たちが100本以上の論文に目を通した結果、静的ストレッチは筋力を平均5.5%弱めることを発見した。さらには、「同じ姿勢を90秒間保つストレッチを行なうと、筋力が一層弱まる」こともわかった。

原因についてはまだ研究段階だが、静的ストレッチが筋力を下げるという紛れもない実験結果はある。一説によれば、静的ストレッチは関節可動域を広げるが、同時に関節を緩めてしまう。重い物を持ち上げようとするときに、ひざがしっかりロックされていないと持ち上がらないように、関節の「緩さ」は筋力を使う際には障害となる可能性があるのだ。また、静的ストレッチは筋肉の緊張を取る効果はあるが、その分、脱力してしまい、パフォーマンスにつながりにくいともいわれている。

とはいえ、もちろん、すべてのストレッチが良くないというわけではない。問題なのは、私たちが体育の授業で習ったような静的ストレッチだ。たとえば、立ったまま徐々に腰を曲げ、爪先に触れる前屈のようなものを含んだ、いわゆる準備運動として教えられたストレッチである。

「ごく普通の柔軟性を維持したいのなら、静的ストレッチは有効だ。しかし、運動前にストレッチをするなら、ウォームアップになるようなものが必要となる。温まった筋肉組織は強くなり、より多くのエネルギーを吸収する」と、ヌードソン教授は言う。

こうしたストレッチを「動的ストレッチ」と呼ぶ。ストレッチという言葉に反して、どこかの筋を伸ばすというものではなく、軽く走ったりジャンプしたりするような、心拍数を上げる軽い運動のことをいう。

だからジョギングに出掛けるのなら、最初はゆっくりと走り、徐々にスピードを上げていくといい。「15~20年ほど前から、一部の長距離ランナーの間では『ストレッチをすると脚の調子が悪い』という感想が広がっていた。そのため、彼らは徐々にランニングの強度を上げていくことにした」とヌードソン教授。結果、こちらのほうがパフォーマンスが高まることがわかったという。

ヨガでやせることはない

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『科学でわかった正しい健康法』(クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

もう1つ。近年男性にも人気が出てきたヨガは、ダイエットにまったく効果がないどころか、かえって太りやすくさせることが、最新の科学によってわかった。もちろんヨガの効能は多数ある。ストレスの低下、やる気を上げ、体の柔軟性が増し、より良いセックスができるようにもなる。

しかし、ピューリッツァー賞を受賞したサイエンスライターのウィリアム・ブロードは、「ヨガは体の代謝率の”低下”に極めて効果的なことが判明した。すべての条件が同じならば、ヨガを実践する人は燃焼するカロリーが少ないため、体重が増えやすく、脂肪が蓄積されやすくなる」と論じている。

さらにブロードは、「ヨガで体重管理に成功した人は、科学的なエビデンスによれば、代謝を上げるという影響によって成功したのではなく、代謝を下げるという影響にもかかわらず成功したといえる」と述べている。つまり、ヨガはダイエット目的でやるには不向きのエクササイズだったということが証明されたのだ。

流行とされるものの科学的エビデンスを調べてみると、実は効果がなかったり、逆効果になっていることが少なくない。テレビでは、同じ健康法を2週連続で放送するわけにはいかないし、流行がなければ業界が潤わない。だからこそ、マスコミはつねに新しい情報を紹介して、「部分的に正しいこと」を専門家に語らせる。しかしそれは、総合的な健康にはつながっていないことが多い。

たとえば、禁酒をすると心臓病に罹患しやすくなるうえ、寿命が短くなるというエビデンスもあるし、グルテンフリーの食品は、グルテンの代わりに糖質や脂質を添加してボソボソしないように作られているため、かえって太りやすくさせるというエビデンスもある。ぜひ科学に裏付けられた情報を知って、総合的に健康をアップさせてほしい。

健康のために我慢していたことにも科学的な根拠がなかったと知れば、人生はもっと潤いに満ちたものになる。それこそが健康度を上げることにもなるのだから。

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ジェフ・ウィルザー :作家、ライター

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提供元:そのストレッチが実は「筋力低下」を招くワケ|健康科学の「最新常識」知っていますか?|東洋経済オンライン

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