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2024.06.09

「自炊する高齢者は孤独になりにくい」納得の根拠|医師が指摘「単身者ほど料理をしたほうがいい」


料理を作れば、それ自体が楽しみになり、脳にもいい刺激になります(写真:jessie/PIXTA)

料理を作れば、それ自体が楽しみになり、脳にもいい刺激になります(写真:jessie/PIXTA)

脳神経内科が専門の医学博士で、老人医療・認知症問題にも取り組む米山公啓氏による連載「健康寿命を延ばす『無理しない思考法』」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。

一人で作る料理が面白くない

私の患者さんで奥さんが先に亡くなって、80歳を過ぎて初めて台所に立ったという人がいます。

この方の世代では、料理は奥さんに任せっぱなしで自分は食べるだけ、という人も少なくないようです。

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

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私の10年先輩の医者も似たような感じでしたが、「さすがに最近は皿だけは洗うようになったよ」と漏らしていました。

男性が台所に立って料理を作るのは普通のことになってきましたが、75歳以上の団塊世代では、料理を作ったことがないという人も多いようです。

しかし、いまや長寿の時代。これまで自分では料理をせず、家事のすべてを任せてきた人であっても、台所に立って料理を作らねばいけないときが必ずやってくるでしょう。決して他人ごとではなのです。

とにかく食べられればいいというレベルなら、コンビニがあります。コンビニの冷凍食品を買ってきてレンジでチンするだけで、それなりにおいしく食べられるのです。

やはり、これだけでは料理とは言えないでしょうが、空腹を満たすことだけが目的であれば、それで済んでしまうかもしれません。

しかし、もう少しレベルを上げることもできます。料理を作れば、それ自体が楽しみになり、脳にもいい刺激になるのです。

何事もそうですが、「まあ適当でいい」という発想では楽しくなることもなければ、脳への刺激にもなりません。

「ただ食べられればいい」という考えで毎日の食事をとっていては、食事は空腹を満たすだけの、味気ないものになってしまいます。

作りだす喜びと面白さを

とはいえ、一人で食べるために、わざわざ料理をしても面白くもなんともないと思うかもしれません。

実際のところ確かにその通りなのですが、料理をすること自体に創造性が加わってくれば、料理の時間は意外に楽しい創作の時間になってきます。

私自身、結構料理を作ります。といっても、手の込んだものはよほどでないと作りませんが。

ちなみに、料理を作るようになったきっかけは、ロブションのジャガイモのピュレ。あの有名なフレンチの巨匠ジョエル・ロブションの名を高めた料理です。じつはこの料理、それほど難しくはありません。

材料は、ジャガイモ、バター、塩、牛乳といたってシンプル。

それらをロブションのレシピに従って作っていくと、1時間以上はかかってしまいますが、バター、塩の絶妙な配合により、ただのマッシュポテトが、一流のフレンチの味になるのです。

なお、ロブションもこのレシピを完成させるまでに、非常に苦労したようです。

簡単な素材だけでここまでの味を出せるのかと思うと驚くばかりですが、ここに料理の原点があるように感じます。

つまり、素材は素朴であっても、創作の努力によってまったく違う世界が見えてくるというわけです。それこそが、料理の面白さであり、醍醐味です。

一人でなく食べてくれる人を探す

一人でいくらおいしいものを作っても、食べるのが自分だけなら、面白いわけがありません。

料理は人に食べてもらってこそ、本当の評価がわかりますし、一緒に食べる楽しさがあります。

配偶者の死によって、男性であれ女性であれ、一人住まいは決して珍しいことではありません。65歳以上では3割くらいが一人住まいです。

だから一人で料理を作って一人で食べるというのは、高齢者では普通のことになっています。

しかし、それではどうしても、お腹を満たすだけの食事になりがちです。

料理を作ったら、一人だけで食べるのではなく、なんとかしてだれかに一緒に食べてもらう。

一緒に食べてくれる人を見つけるというのはなかなか難しいですが、非常に大切なことだと私は考えています。

例えば、だれかに「おいしい」と言われることは、じつは脳にとっても非常に大切です。

褒められることで脳のドーパミンが分泌されますから、快感や達成感になり、また料理を作ってみようと感じるわけです。

カーネルサンダースは子どものときに、自分の作った料理を母親に褒められた記憶が鮮明に残っていて、それがフライドチキンを作る原動力にもなったと言います。

一緒に食べてくれる知り合いを作っておく。このことは、料理することを楽しむという意味でも必要なのです。

アートには結局、才能・感性が大きく影響しますが、時にアートにも例えられる料理もその人の才能・感性が影響します。

他人に食べてもらうとなると、そこには「その作った人そのもの」が反映されるというわけです。

とはいえ、それほど難しく考える必要はありません。

おいしい料理を作るには、努力も多少必要ですが、「人を楽しませることが楽しい」と感じられるのであれば、それで十分才能があると言えます。

前述のロブションのジャガイモのピュレは、自宅にある材料ででき、レシピ通りに作るだけで、驚くほどおいしい料理になります。

レシピ通りに作れば、それなりにおいしくできることが、料理の面白さだと思います。

料理をすることで意外な自分の才能を発見できるかもしれません。

料理を楽しみにする

料理を作ることに楽しみを見いだせれば、趣味として成り立ちますし、人を驚かせる面白さがくせになるかもしれません。

めんどくさいなあと思いながらも料理をする、そんなレベルから、料理で人に喜んでもらうというふうに、考えを前向きに変える。

そうした考え方の転換をすることが重要です。そうなれば、料理をする時間は、創意工夫の時間になり、楽しくなるはずです。

一人で作って一人で食べるのはみじめだなと思うのではなく、一人で食べるときでも、いずれだれかに振る舞うために、いろいろな料理に挑戦できるチャンスと思うのです。

与えられた環境がネガティブなものであっても、捉え方によっては前向きに変えることもできます。

そうした捉え方の転換が、孤独や高齢を乗り切る方法なのです。

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提供元:「自炊する高齢者は孤独になりにくい」納得の根拠|東洋経済オンライン

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